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第六話
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ペルシクム男爵令嬢との接触からおよそ二週間。学院ではおかしな噂が流れています。曰く「ルーチェ皇女がペルクシム男爵令嬢を呼び出し、罵声を浴びせた」と言うもの。はてさて、どうしてあれが罵声となるのか、わけが分かりませんね。まあ、大方クリム様にバレたくないとペルクシム男爵令嬢が嘘を言い泣きついたのでしょう。男性を手玉に取るために容易に涙を流す。淑女としても、一人の人間としても、そうはなりたくないですね。
「……第二皇女殿下、まさかとは思いますが 」
「売られた喧嘩は、買えと、言われましたので」
しかし、どうしましょうか。視線が集まるのはいつものことですが、それに陰口が含まれてくると面倒です。あちらがボロを出してくれるのが一番ですが、あちらもそこまで間抜けではないようで、上手く隠れられています。確かな証拠さえ得られればいいんですがね。
オルコス卿と歩いていると、皆道を開け、こちらを見てヒソヒソと話をします。気にしなければ良いと分かってはいるのですが、気分が悪くなりますね。中には悪意むき出しの方もいます。そのほとんどが上級生、特に二年生の方々なので、お二人が言いふらしているようですね。
「第一皇女殿下」
「この方は」
オルコス卿が訂正しようとするのを手で止め、用を聞きます。どうやら、話をしたいことがあるからオルコス卿を連れずに中庭に来て欲しいそうです。話したいこと、ですか。相手は五人。私は一人。陰湿な嫌がらせでもするつもりでしょうか。証拠になるかもしれませんし、行きますかね。
「オルコス卿、戻っていてください」
「しかし……」
「命令です」
何かあった時のために魔道具も持っていますから、大丈夫ですよ。彼女たちに着いていけば、人目につかない場所まで移動され、彼女たちは下卑た笑みを浮かべます。バレなきゃ犯罪じゃないとでも思っているのでしょうか。彼女たちの中では、皇族であろうと女性は自分たちより低い身分なのですかね? 今度お兄様に教えて差し上げますか。妃候補の選定にもなるでしょう。
「いい加減、身の程を弁えたらどうですの?」
「ヴェルメリオ様がお可哀想だわ」
「権力でヴェルメリオ様を縛るなんて、とんだお方ですわね」
毎度思うのですが、呼び出すのなら必要最低条件としてルーチェと私を見分けてくれませんかね? 来たのは私ですが、何故私が非難されなければならないのか。ルーチェも呼び出されたことが何度かあるようです。
彼女たちに案内されたのは人気のないガゼボで、私が大声をあげても誰かが駆けつけることはないでしょう。大声
「お聞きしますが、話したい、お相手は、私で、よろしいのですか?」
「貴女以外誰がいると?」
あら、見下されてますね。顔に全部書いてありますよ。自分たちに劣る婚約者に捨てられた無様な皇女なんて怖くない、と。貴女たちの相手している者は婚約者に捨てられてなどいませんけどね。確認もできましたし、お話を聞きましょうか。
「それで、話とは?」
「今すぐヴェルメリオ様と婚約を解消してください。このままではヴェルメリオ様が可哀想だわ」
「何故私が?」
「ッ! 貴女が皇族だからとヴェルメリオ様を縛り付け、本当に愛し合っている二人を引き離そうとしているからでしょう!? 愛されてもいないクセに惨めに縋りついて、恥を知りなさい!」
あらあら、そんなに大声を出しては、綺麗な顔が台無しですね。「話はそれだけですか?」と扇子で口元を隠して微笑めば、バカにしているのかと騒ぎ立て始める。
「剣など淑女に必要のないものしか能がない出来損ないが偉そうに!」
「ペルシクム男爵令嬢から聞いたわよ! この前呼び出されてヴェルメリオ様から頂いた物を壊されたって!」
私はいつ彼女に会ったのでしょうね。それに、皇族相手に出来損ないとは、大きく出ましたね。私が何も準備をせずにノコノコと付いてきたと思ったら大間違いですよ。
「皆様の、ルーチェへの、意見、よく、分かりました」
「…………は? 何言って。第一皇女はあんたでしょ」
扇子を閉じ、前髪を上げて左目を見せる。とても久しぶりですし、見たことがある人は少ないので、光栄に思ってくださいね?
「あらためて。私、ファルべ帝国第二皇女、ルシア・アークトゥルス・シュバルツと申します」
丁寧にお辞儀をし、覚悟してくださいませと言えば、全員顔を青に染め、「これは違うのです!」「その、冗談でして」と言い訳を並べ立てます。そんなこと意味がないと分からないのですかね。彼女たちの証言と私の証言と証拠。どちらを信じるかなど結果を見なくとも明らかであると言うのに。彼女たちが「忘れてくださいませ」と懇願してきたのでにこりと微笑みます。そうすると安堵の表情を浮かべ、去っていきますが、さて、誰が帰っていいと許したのでしょうか。私は微笑んだだけ。許すとも、忘れるとも言っていないと言うのに。人間、自分に都合の良いことだけを見ようとするからこうなるのですよ。
「……さて、お兄様の、ところへ、行かないと、ですね」
今頃オルコス卿が説明しているでしょう。今日あったことを報告して、今後のことについて考えて頂かなければなりませんね。
「……第二皇女殿下、まさかとは思いますが 」
「売られた喧嘩は、買えと、言われましたので」
しかし、どうしましょうか。視線が集まるのはいつものことですが、それに陰口が含まれてくると面倒です。あちらがボロを出してくれるのが一番ですが、あちらもそこまで間抜けではないようで、上手く隠れられています。確かな証拠さえ得られればいいんですがね。
オルコス卿と歩いていると、皆道を開け、こちらを見てヒソヒソと話をします。気にしなければ良いと分かってはいるのですが、気分が悪くなりますね。中には悪意むき出しの方もいます。そのほとんどが上級生、特に二年生の方々なので、お二人が言いふらしているようですね。
「第一皇女殿下」
「この方は」
オルコス卿が訂正しようとするのを手で止め、用を聞きます。どうやら、話をしたいことがあるからオルコス卿を連れずに中庭に来て欲しいそうです。話したいこと、ですか。相手は五人。私は一人。陰湿な嫌がらせでもするつもりでしょうか。証拠になるかもしれませんし、行きますかね。
「オルコス卿、戻っていてください」
「しかし……」
「命令です」
何かあった時のために魔道具も持っていますから、大丈夫ですよ。彼女たちに着いていけば、人目につかない場所まで移動され、彼女たちは下卑た笑みを浮かべます。バレなきゃ犯罪じゃないとでも思っているのでしょうか。彼女たちの中では、皇族であろうと女性は自分たちより低い身分なのですかね? 今度お兄様に教えて差し上げますか。妃候補の選定にもなるでしょう。
「いい加減、身の程を弁えたらどうですの?」
「ヴェルメリオ様がお可哀想だわ」
「権力でヴェルメリオ様を縛るなんて、とんだお方ですわね」
毎度思うのですが、呼び出すのなら必要最低条件としてルーチェと私を見分けてくれませんかね? 来たのは私ですが、何故私が非難されなければならないのか。ルーチェも呼び出されたことが何度かあるようです。
彼女たちに案内されたのは人気のないガゼボで、私が大声をあげても誰かが駆けつけることはないでしょう。大声
「お聞きしますが、話したい、お相手は、私で、よろしいのですか?」
「貴女以外誰がいると?」
あら、見下されてますね。顔に全部書いてありますよ。自分たちに劣る婚約者に捨てられた無様な皇女なんて怖くない、と。貴女たちの相手している者は婚約者に捨てられてなどいませんけどね。確認もできましたし、お話を聞きましょうか。
「それで、話とは?」
「今すぐヴェルメリオ様と婚約を解消してください。このままではヴェルメリオ様が可哀想だわ」
「何故私が?」
「ッ! 貴女が皇族だからとヴェルメリオ様を縛り付け、本当に愛し合っている二人を引き離そうとしているからでしょう!? 愛されてもいないクセに惨めに縋りついて、恥を知りなさい!」
あらあら、そんなに大声を出しては、綺麗な顔が台無しですね。「話はそれだけですか?」と扇子で口元を隠して微笑めば、バカにしているのかと騒ぎ立て始める。
「剣など淑女に必要のないものしか能がない出来損ないが偉そうに!」
「ペルシクム男爵令嬢から聞いたわよ! この前呼び出されてヴェルメリオ様から頂いた物を壊されたって!」
私はいつ彼女に会ったのでしょうね。それに、皇族相手に出来損ないとは、大きく出ましたね。私が何も準備をせずにノコノコと付いてきたと思ったら大間違いですよ。
「皆様の、ルーチェへの、意見、よく、分かりました」
「…………は? 何言って。第一皇女はあんたでしょ」
扇子を閉じ、前髪を上げて左目を見せる。とても久しぶりですし、見たことがある人は少ないので、光栄に思ってくださいね?
「あらためて。私、ファルべ帝国第二皇女、ルシア・アークトゥルス・シュバルツと申します」
丁寧にお辞儀をし、覚悟してくださいませと言えば、全員顔を青に染め、「これは違うのです!」「その、冗談でして」と言い訳を並べ立てます。そんなこと意味がないと分からないのですかね。彼女たちの証言と私の証言と証拠。どちらを信じるかなど結果を見なくとも明らかであると言うのに。彼女たちが「忘れてくださいませ」と懇願してきたのでにこりと微笑みます。そうすると安堵の表情を浮かべ、去っていきますが、さて、誰が帰っていいと許したのでしょうか。私は微笑んだだけ。許すとも、忘れるとも言っていないと言うのに。人間、自分に都合の良いことだけを見ようとするからこうなるのですよ。
「……さて、お兄様の、ところへ、行かないと、ですね」
今頃オルコス卿が説明しているでしょう。今日あったことを報告して、今後のことについて考えて頂かなければなりませんね。
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