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第二十七話
しおりを挟む四人で片付けをして三時間ほど経った。ようやく終わりが見えてきた。机の上のものはしっかりと整理され、浮いていた本もひとまず回収して端に置いておくことになった。これを果たして片付けたと言っていいのかは分からないけれど、場所がないから仕方がない。
「ようやく仕事が始まるわね……」
片付けは前座みたいなものですからね。本題はここからの論文の手伝いだ。確か、写しをすればいいんだよね。途中で少しだけ見たけど、あれ私たちが手伝えるものなのかな。
「えっと、こっちにアズの本が……」
……第二皇女殿下、それじゃあ片付けた意味がないじゃないですか。大切なものならあらかじめ抜いておいてください。見つかるのに時間がかかるでしょ……。三人でまた片付けからなのかなと第二皇女殿下を見ていると、案外あっさりと見つかった。
「アズ、出てきていいですよ。お昼寝終わりです」
第二皇女殿下が本のページをペラペラとめくる。その本はたぶん、普通のものじゃない。禍々しい魔力を帯びている。
第二皇女殿下の声に反応してか、本が浮いて中から何かが出てくる。その瞬間、本能が警鐘をならした。これは、人間の世界にいていい存在じゃない。
「この子はアズ。私と契約している子なんです」
……第二皇女殿下は、気づいていないのか、慣れているのか。第一皇女殿下も息を呑んでいて分かりやすいけれど、セフィド公子はまったくと言っていいほど表情が変わらない。
けど、これはダメだ。明らかに人間が触れていい存在じゃない。契約って言っていたけど、この雰囲気。精霊じゃない。もっと別の、上の存在。第二皇女殿下の肩に乗っている小さな手のひらサイズのドラゴン。漆黒の鱗が光を反射して夜空に星が輝いているように見える。けど、感じられる魔力がそんな優しいものじゃない。
暗くて、底が見えない不気味な魔力は、第二皇女殿下を守るかのように纏わりついている。けれどそれは、見方を変えればまるで第二皇女殿下を奪われまいと、周囲を威嚇しているようにも感じる。
「ドラゴンって、絶滅したはずですよね?」
「アズはドラゴンではないですよ」
ドラゴンじゃないって、見た目がまんまドラゴンなんですが。じっとこちらを見てくるけど、何かをしてくるワケでもなく、第二皇女殿下の指示を待ってる。契約しているって言っていたし、危険はない……。ない、よね?
「この子が手伝ってくれるの?」
「アズはとっても賢い子だから」
第二皇女殿下、それは説明になってません。自分の子だから頭がいいに決まってると自信満々に言う親バカと同じですよ。いやまあ、頭はいいのかもしれないけど……。
「ということで、私は論文書きます」
え、あ、説明終わり!? 詳しい説明とかはないんですか!? 聞こうとしたけれど、第二皇女殿下は既に論文を書き始めたし、さすがに集中を切らすワケにはいかないな。
「……とりあえず、やってみる?」
第二皇女殿下に頼まれていた写しはここにあるけど、地味に量があるんだよね。ご丁寧に三つに分かれている紙の束。見てみると、星座が一枚一枚に丁寧に書かれていて、星座を構成している星の名前、それぞれの距離、色など、事細かに星についての情報が記載されている。その横にはどんな風に書けばいいかの説明書と、大量の紙束。
「……いくつあるのよ」
「やるしかないね」
これがどう論文に使われるのかは分からないけど、やるしかないか。やることは案外単純だし、大変だけど時間をかければしっかり終わる。問題は集中力がどれだけ続くかと、第二皇女殿下のドラゴン(?)が私たちから視線を外さないことかな……。
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