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第二章〜ブラウン王国〜

なんであなた達まで?!

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 後ろの扉が閉じたのを確認して、溜息を吐いた。

「はぁー緊張した」
「それにしては堂々としていたな」
「はは、まぁね」

 そりゃ見た目は5歳児だけど中身は会社にこき使われたアラサーだからね。
 営業スマイルはお手の物よ!

「あっ、そういえば身分証作ったから今日から宿に泊まるね」
「今日くらい泊まっていったらどうだ?」
「うーん、なんにもお礼出来てないけど長居すると迷惑だと思うから……」
 
 こんなに騎士団の寮を出たいのには理由がある。
 それはアーサーくんと一緒に寝るためだ。
 この前一緒に寝たけどオリバーさんにバレるかもということでめっちゃ早起きした。
 でも宿に泊まるって言っておけばオリバーさんが来てもバレないはず。
 というわけで寮から出たいのだ。

「そうか、あの部屋は空いているからいつでも泊まりに来ていいからな」
「うん、ありがとう!」

 よし、外泊のお許しがでたぞ!
 それからお別れの挨拶をするために騎士団の寮へ戻ることになった。
 
 そしてオリバーさんと一緒に歩き始めたのだが、後ろから声をかけられた。

「ねぇ、少しお話する時間はあるかしら?」

 振り返るとすっごい美人な女性とお付きの人が立っていた。
 するとオリバーさんが礼をしたため私も礼をする。

 おそらくというか確実にこの人が王妃様だろう。
 私に何の用だ?

「あら、こんなに小さいのにすごいのね。楽にしていいのよ」

 その声を聞いて姿勢を直す。
 
「夫が迷惑かけたわね。あの人、気になるとすぐに行動する人だから」
「それはグレース様も同じじゃないですか。実際今も話しかけてますし」
「う、うるさいわね! 別にいいでしょ、気になったんだから」

 従者とのやり取りを見ていて、やっぱりミアさんのお母さんなんだなって思った。

「それでどうかしら」
「恐悦至極に存じます」
「では早速移動しましょ! オリバーは寮に戻っていいわ」
「かしこまりました」

 そしてオリバーさんと別れて王妃様と一緒に部屋に移動する。
 よく見るティーセットがあるテーブルに案内されて、向かいあわせで座った。
 従者は会話が聞こえないようにか、部屋の壁際に移動して立っている。

「カナちゃんだっけ? 私はグレース・ブラウンというの。気軽にグレースって呼んでね」
「えっと、カナです。グレース様は「グレース」」
「……グレースさんでいいですか?」
「敬語をやめるならいいわ」

 注文が多いなあ、まぁ堅苦しいのは嫌いだし、いいって言ってるんだから普通に話していいか。

「お話って何?」

 敬語をやめて話したらグレースさんはうんうんと頷いて、一口紅茶を飲んでから話し始めた。

「えっと……、ミアは何か言っていたかしら?」
「多分グレースさんが思っている通りだと思うよ」
「そう、やっぱり。いつも夫と話しているのだけどどうしていいかわからなくて」

 なんでこんなに問題点が浮かび上がっているのに解決しないんだろう。

 するとグレースさんが手招きをした。
 こっちに来いってことかな。
 私の身長には少し高い椅子からおりてグレースさんの元へ向かう。
 するとグレースさんは私を持ち上げて膝の上に乗せ、頭を撫で始めた。

「昔はよくこうしていたのよ。でもいつからだったかしら、あの子が上の子達と比較されるのを嫌って1人で魔法の練習をし始めたのは……」
「ミアさんはすごいよね。努力してその実力はちゃんと認められている」
「そうね」
「頑張っていることをわかっているなら褒めてあげてもいいんじゃない?」
「でも1度褒めるとこれ以上上達しなくなってしまうかもしれないわ」

 あ……、それはダメだわ。

「子供って褒められるとすっごく嬉しいの! だからね、ミアさんのこともいっぱい褒めてあげて! ミアさんは努力家だから絶対怠けたりしないし」

 いつまでも褒められない子供はたしかに優秀かもしれない。
 でもそれは突然プツンと糸が切れるように途切れ、いつの間にか怠けてしまう。
 頑張ることに疲れて、自分は何をしても無駄という敗北感にのまれる。
 子供の頃から褒めすぎるのも良くないけど、今の場合は関係ない。

「でも……」

 すると扉が開き、誰かが入ってきた。

「お邪魔するよ」
「失礼しますわ」

 見るからに王子様と王女様。

「息子のジェイダンと娘のシエナよ」
「カナです」

 普通は礼をしなきゃいけないはずなのにグレースさんが離してくれない。

「ちょっとグレースさん?」
「別に公の場じゃないんだから礼なんてしなくていいのよ」
「でも、」

 言い返そうと思ったらジェイダンさんとシエナさんが笑っているのに気づいた。
 こっちは必死だったのに笑うなんて!

「いやぁごめんごめん。ミアがお世話になったね」

 2人は座りながら話す。

「いえ、昨日と今日の2日だけですし、むしろ私が迷惑かけたんじゃ……」
「あの子は魔法ばっかりだったから友達がいないのよ。でも久しぶりに楽しそうな顔を見れて良かったわ」

 ん? お城でお話でもしたのかな。
 でもミアさんって家族と話さないんじゃ……。

「ミアさんとはよくお話するんですか?」
「いいえ、話そうと思っても何故か逃げられるから」
「今日はこっそり後ろから追いかけていたんだよ。君のことも見てみたかったからね」

 うわっストーカーだ。
 全然気づかなかったな。

「まぁ、部外者が口を出すのはどうかと思いますけど、とりあえず1度家族みんなで集まったらどうですか?」
「そうね……1度ちゃんと話し合いましょ!」

 するとシエナさんは立ち上がり、壁際に立っている従者に何かを話していた。

「カナと話しているとなんか大人と話している気がするよ」

 ギクッ、コイツなかなか鋭いな。
 
「ああ、それと私達と話す時も敬語じゃなくていい。母がこんなだから堅苦しいのは嫌いでね」
「ちょっとそれはどういうことよ!」

 仲良いんだな……。
 ミアさんが勘違いしたのは家族の愛情表現の下手さもあるけど、ミアさん自身の性格もあるんじゃないかって思う。
 若干ツンデレ属性だからね。
 それならしっかり話し合えば解決するだろう。

 そんなことを考えながらグレースさん達が言い合っているのを眺めていた。



 ふいに、グレースさんが私を力強く抱きしめてきた。

「どうしたの?」
「カナ、あなたも無理しちゃダメよ」
「無理してな「嘘、だって」」
 
「あなた泣いているじゃない」

 グレースさんに言われるまでは気づかなかった。
 なんなんだろう、別に悲しいことなんてないのに、勝手に涙が出てくる。

「辛かったのね、大人に甘えていいのよ」

 抱きしめながら頭を撫でてくれるグレースさん。
 こういうことはミアさんにやってあげるべきでしょ!

 ダメだ、これ以上迷惑をかける訳にはいかない。
 涙を拭って元気いっぱいに笑って見せた。

「大丈夫です! ごめんなさいせっかくのお茶が不味くなっちゃいますね。私今日から宿に泊まる予定で早いうちに取らないといけないので失礼します!」

 王族相手にすっごい失礼な行動ばかりとっている気がする。
 でも子供だから許してよね。

「そ、そう。また来てね、たまにお話しましょう?」
「はい、ぜひ!」

 そう言って従者の人に寮まで送ってもらい、騎士団の人達にお別れをする。

 リオさんには何故か泣かれたし、ライリーさんにはめっちゃ心配された。
 他の人達もみんな心配してくれて、いつでも来いよ! とか本当に大丈夫? とか色んなことを言ってくれた。
 さっき泣いて腫れた目は魔法で治して笑顔で答える。

 そしてお礼を言って別れ、街に出てきた。

 

 いつの間にか夜になっていて、街は昼間と違った賑やかさがある。
 すぐに鳥に変身してアーサーくんのところに行きたかったが、誰かの視線を感じたため、1度死角になるように隠れて急いで変身した。
 
 そして今日もアーサーくんのところでぐっすり眠る。

『今日は疲れたみたいだね』
『うん、なんか色々考えちゃって』
『そっか、ゆっくりおやすみ』

 その言葉を聞いて私は眠りについた。







──────────
また弱々しくなっちゃった。

ちょっと書きすぎました。それなのになんかわかりにくくて……
セリフ誰のか分からない! とか、誤字脱字等あれば教えてください!



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