異世界転生した私は今日も大空を羽ばたきます!〜チートスキルで自由気ままな異世界ライフ〜

青いウーパーと山椒魚

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第三章〜ローゼ王国〜

その魔法の正体は

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「カナ!」

 戻ってきた時に苦しそうにしていた私を見た使用人は、急いでイリスを呼びに行ってくれた。
 声を掛けて介抱してくれて本当にありがたい。
 少し落ち着いてくるとイリスが走ってきた。

「苦しそうって聞いたけどどうしたの?」
「王太子を探して王城の中を歩いてたんだけど、とある一室の前を通った時に変な魔法を感じて」
「変な魔法?」
「うん、なんか気持ち悪い魔力が渦巻いていて近づくだけで息が出来なくなった」
「使用人は気づかないの?」
「多分誰も気づいてなかったと思う。それほど精密に発動された魔法だった」
「そう……そんなものが王城にあるなんて知らなかったわ。どこの部屋だったか覚えてる?」
「確か……」

 入口からの道順は完璧に覚えていた。
 その順番通りに話すと、ついこの間まで王城に出入りしていたイリスはなんの部屋かわかったようだ。
 イリスは目を見開き、驚きの声をあげる。

「ここって、国王の部屋だわ」
「えっ、それってやばくない?」
「私も行ってくるわ!」

 イリスはそう言ってすぐに駆け出そうとしてしまう。
 しかしあの魔法の正体が分からない今、無闇に近づくのは危ない。
 私は急いでイリスを止めた。

「ダメ! それは危ないって」
「でも王様が大変なことになってるかもしれないのに」
「イリス!」

 名前を大声で呼ぶ。
 すると焦っていたイリスも冷静さを取り戻したようだ。

「落ち着いて、対策を考えよう。むやみやたらに行動しても被害が増えるだけだよ」
「そうね、ごめんなさい。とりあえずお父様とお母様に相談しましょう。二人は最強の魔術士って言われてるし」

 最強の魔術士って言葉には驚いたが、イリスの家族なら当たり前かと、なぜか納得してしまった。
 それは兎も角、今はそんな呑気なことを考えている暇はない。
 サロンでお茶を飲んでいると聞いた私たちは急いでそこに向かった。



「国王の部屋に魔法が?」
「はい、カナでも息苦しくなるほどのものだったそうです」

 サロンには仲睦まじくお茶を飲んでいる二人の姿があった。
 私とイリスが焦ってきたこともあり、人払いをして話を聞いてくれた。

「どんな魔法だったんだ?」
「分かりません。でも、思い出すだけでも寒気がするような、そんな魔法でした」

 思い出すと、ついあの渦巻いていた闇に飲み込まれそうになる。
 そう錯覚を起こすほどに邪悪なもの。
 話しているとつい体が震えてしまう。
 すると隣に座っていたイリスが抱きしめてくれた。
 それまで黙って聞いていたエルザさんが口を開く。

「カナちゃん、あなたの魔法でその正体を突き止められないの?」
「そういえばカナって創造魔法を使えるのよね」
「あっ」

 あの時はとにかく焦って忘れてたけど、なんなら浄化したりもできたんじゃないか。
 冷静になった今、初めてその考えが浮かんできた。

「もしかして忘れていたの?」
「……うん」
「ま、まあそれは置いといて、早速やってみてくれない?」
「わかった」

 庭にでてみんなから少し離れると、目を閉じた。
 魔力をのせて想像するのは王城のあの部屋。
 するとステータス画面が出てきて状況を詳しく説明してくれた。

国王の部屋
状態   呪い(レベル8)
・レベル10になると呪いが掛かっている対象は死亡する
・対象以外への影響は魔力量が多いほど大きくなる
・呪いは浄化の魔法で祓うことができる

「えっとね、結構やばいかも」
「やばいってどういうこと?」
「この部屋、てか国王様が呪われてる。んで呪いのレベルが10になると死ぬらしいんだけど、今レベル8なんだよね」

 そのレベル2がどれ程のスピードで上がるかわからないけど、かなり危険な位置にいるように思える。

「あと魔力量が多い人ほど影響を受けるらしい」
「魔力量が多い人ほど? カナはどれくらいなの?」

 それをイリスの両親が見ているここで言ってしまってもいいのだろうか。
 そう思い、イリスに耳打ちした。

「……無限、だって」
「……無限?! それはチートすぎないか?!」

 私の言ったことを大声で叫ぶイリス。

「ちょっと! せっかく小さい声で話したのに!」

 私の行動は意味の無いものとなりイリスの両親、また周りにいた使用人達にも聞こえてしまった。

「そんな人が本当に実在するのね」
「ああ、驚いたな」

 てか、今そんなことを考えている暇はなくない!?
 と思考を切り替える。
 さっき呪いを調べることができたなら、浄化の魔法もここから届くんじゃないか。
 そう思って魔法を発動する。
 しかしその魔法は届かなかった。 

「やっぱり部屋に近づかないとだめか」
「いったい誰の仕業なのかしら。そんなに精密な魔法なら王城で、しかも国王に近づける人の可能性が高いはずよね」
「王妃様、メイド、王太子、あとは婚約者であるアイナスさんくらいですかね」
「犯人が近くにいる時に近づくのは危険だな」
 
 呪いは殺すためのもの。
 しかもこんなに入念に行ってきた犯行が無駄になるなんて嫌なはずだ。
 どこかで監視していると考えるのが妥当だろう。
 どうすればいいのか悩んでいると使用人の一人が走ってこちらに近づいてくる。

「王都で革命が起こりました!」

 それは待ち望んでいた報告だった。

「思ったより早かったな」
「そうね、このどさくさに紛れて行ってきなさい。私達は様子を見て、必要があると判断した時は援護します」
「ありがとうございます、父様、母様。カナ行くよ!」
「おっけー!」

 あの時みたいにならないよう普段の倍以上に結界を張り呪いに備える。
 そして私とイリスは王都にテレポートした。









──────────
イリスは家族と話す時は令嬢言葉になります。
カナと話す時はタメ口ですが、偶に癖で令嬢言葉になってる時もあります。

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