異世界転生した私は今日も大空を羽ばたきます!〜チートスキルで自由気ままな異世界ライフ〜

青いウーパーと山椒魚

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第四章〜オレンジ王国〜

魔力持ちは珍しいらしい

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「どうしたの!?」

 急いで駆け寄ると女の子は泣きながら話してくれた。
 さっき感じた気配はこの二人だったのか。

「お兄ちゃんが苦しそうで死にそうなの!」

 確かに、残っているもう一つの気配は今にも消えてしまいそうなほど弱々しくなっている。
 病気か何かわからないが、私にもできることがあるかもしれない。

「案内して!」

 

 走ってついていくと、地面に倒れて苦しそうにしている男の子がいた。

「オリヴィア、だれも、連れて来るなって、言ったのに……」
「お兄ちゃん!」

 とりあえずステータスで調べてみる。

ノア(12)
状態   魔力暴走
すぐに魔力を放出しないと命の危険がある

(すぐに魔力を!? でもこんなに家があるところでやったら被害が……。はっ、だからこんなに魔力を出さないように頑張っていたんだ)

 魔力暴走の時はその名の通り暴走するはずなのに、この少年からは一切魔力が漏れていなかった。
 被害を出さないように自分の中に溜め込んだ結果、今度は魔力が多すぎて死にそうになっている。

「そこ避けて!」

 女の子に避けてもらい、少年に話しかけた。

「魔力を私に流して!」
「は? なんで……」
「いいから! 早くしないと妹を残して死ぬことになるよ!」

 手を握って、脅迫まがいなことを言う。
 こういう時はとにかく魔力を外に出した方がいい。
 被害を出さないようにするには人から人へ流すのが一番だと思った。
 それに、魔力が∞の私ならどんなに魔力が流れてきても耐え切れるはず。
 そう思って少年を見つめると、渋々といった表情で魔力を流し始めた。

 しばらくして落ち着いたのか、少年は呼吸が安定してきて寝てしまった。
 ステータスを見るが状態に書かれていた魔力暴走の表示はなくなっていて、緊急事態は免れたことがわかる。

「よかった、大丈夫そうだね……」
「ほんと?」
「うん! しばらくゆっくりしたら元気になるよ」
「ありがとう」

 一度泣き止んでいた女の子は再び泣き始めたが、今度は笑顔でお礼を言ってくれた。

 私も落ち着いてきて、あることが気になった。
 それは二人が酷く汚れていること。
 居ても立っても居られず、魔法で綺麗にする。
 
「すごい、綺麗になった……」
「オリヴィアちゃんだっけ? ここに住んでいるの?」
「うん、お兄ちゃんがたまたま魔力を持ってることがバレてみんなから相手にされなくなったの。家からも追い出されちゃって、私はお兄ちゃんと離れたくなくてついてきたの」
「魔力を持っているとだめなの?」

 するとイリスが説明してくれた。

「獣人は魔力がない代わりに、他の種族よりも身体能力が高く生まれてくるんだよ」
「へぇ、すごいね」
「だから魔力持ちは差別の対象になっているみたい」

 そっか、だからオリヴィアちゃんが助けてって言っても誰も耳を傾けなかったんだ。
 同じ種族の中でもこんなことがあるなんて、現実の厳しさを突きつけられた気がした。
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