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第五章〜ディフォン〜
盗賊
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「近くの村に盗賊が現れたみたいです。そのことで少しおかしなことがあって……」
「おかしなこと?」
「戦った村人全員が気絶させられたみたいなんですけど、目が覚めるとそれまで負っていた傷がなくなっていたみたいなんです」
すると全員の視線が私に向けられた。
「いやいや、私じゃないよ! 盗賊の話は初めて聞いたし」
「じゃあカナちゃんみたいに魔法が使える人がいるってこと?」
この世界の人達の反応を見る限り、魔法を使える人は存在しないのであろう。
となると考えられることは一つ。
──異世界人がいる。
魔法が使えるようになったとも考えられるが、その場合同じように使える人が何人も出てくるものである。
だから今回は当てはまらないだろう。
「とりあえず盗賊を捕まえないといけないな」
「そうですね。まだ近くに潜んでいると思いますし」
「カナも手伝ってくれるな」
「もちろん。私も気になることが……っ……」
話していると突然、体に異変を感じた。
息が苦しくなり、軽い過呼吸のようになる。
「カナちゃん?! どうしたの?」
「だ、大丈夫。ちょっと、お手洗いに行ってきます」
「私も行くよ!」
「ゆいさんはお話してて、すぐに戻るから……」
そう言って少し早足で部屋を出た。
(ステータス)
部屋から離れ、ステータスを開く。
カナ (6)
状態
魔力枯渇
(魔力が足りなくなっていたんだ……)
魔法が使えなくなっているのは、魔力が足りないから。
異世界ということもあり、色々と異変が生じているのだろう。
今の症状はおそらく、魔力が足りなくて本来の鳥の姿に戻ろうとしているのだ。
人間の姿を維持するために必要な魔力は想像以上に多い。
(自分の本来の姿をばらす訳にはいかないし、我慢すれば大丈夫なはず)
深呼吸して、一度落ち着く。
何回か繰り返すと先程の息苦しさも無くなった。
「大丈夫?」
部屋に戻るとゆいさんが声をかけてきた。
「うん、ちょっとむせちゃっただけ」
「それならよかった」
「盗賊のことだが、明日村周辺の森を探す。できるだけ早い方がいいからな」
そして次の日、早速盗賊を探しに出たのだが……思ったより早く見つかった。
村の近くには洞窟が多くあるらしく、そこを一つずつ探していたらすぐに見つかったのだ。
盗賊はかなり人数がいる。
私たちは臨戦態勢で向かい合った。
すると突然、間に女の子が飛び込んできた。
「まって! この人達を捕まえないで!」
その女の子は探していた、
「オリ姉?」
「えっ?」
オリヴィアだった。
「やっぱりオリ姉だ!」
「カナちゃん!」
一直線に走っていき、抱きつく。
周りの人から見たらよく分からない光景だろうが、感動の再会ということで納得して欲しい。
「オリ姉はこの人達と一緒にいたの?」
「そう。気絶していた私を助けてくれて、家族みたいに接してくれた。だから悪い人達じゃないの!」
信玄さんをまっすぐ見て説得するオリ姉。
「だが、村を襲い、領民を傷つけた罪は重いぞ」
「……でも、人を殺してない。それに傷だって「オリヴィア」」
何とか説得しようとするオリ姉の言葉を、盗賊の頭のような男が遮った。
「庇ってくれてありがとな。でも、お前と会うまでは普通に人を傷つけてた。だから、これは当たり前のことなんだ」
「でも……」
「自分が犯した罪はちゃんと償わなきゃいけないんだ」
この盗賊はいい人たちの集まりらしい。
いや、もしかしたらオリ姉の純粋さを目の当たりにして改心したのかも。
盗賊達は武器を捨て、手を上にあげた。
一緒に来ていた武士がすぐに拘束する。
盗賊の頭は最後にオリ姉の頭を撫で、連れて行かれた。
そしてオリ姉は武田軍に保護されることとなった。
ノア兄に全員見つけたことを報告する手紙を送る。
すると悲しそうな目をしているオリ姉が目に入った。
「オリ姉……」
「あの人達は生活のために仕方なくああいうことをしてたの。私も果物とか集めたけど足りなくて……」
後で信玄さんに聞いたことだが、オリ姉の説得もあって少し罪を軽くしたそうだ。
それに盗賊達は本当に素直でいい人たちらしい。
生きていくために、他人を傷つけなければならないこの世界。
現実は厳しいと改めて実感した。
「おかしなこと?」
「戦った村人全員が気絶させられたみたいなんですけど、目が覚めるとそれまで負っていた傷がなくなっていたみたいなんです」
すると全員の視線が私に向けられた。
「いやいや、私じゃないよ! 盗賊の話は初めて聞いたし」
「じゃあカナちゃんみたいに魔法が使える人がいるってこと?」
この世界の人達の反応を見る限り、魔法を使える人は存在しないのであろう。
となると考えられることは一つ。
──異世界人がいる。
魔法が使えるようになったとも考えられるが、その場合同じように使える人が何人も出てくるものである。
だから今回は当てはまらないだろう。
「とりあえず盗賊を捕まえないといけないな」
「そうですね。まだ近くに潜んでいると思いますし」
「カナも手伝ってくれるな」
「もちろん。私も気になることが……っ……」
話していると突然、体に異変を感じた。
息が苦しくなり、軽い過呼吸のようになる。
「カナちゃん?! どうしたの?」
「だ、大丈夫。ちょっと、お手洗いに行ってきます」
「私も行くよ!」
「ゆいさんはお話してて、すぐに戻るから……」
そう言って少し早足で部屋を出た。
(ステータス)
部屋から離れ、ステータスを開く。
カナ (6)
状態
魔力枯渇
(魔力が足りなくなっていたんだ……)
魔法が使えなくなっているのは、魔力が足りないから。
異世界ということもあり、色々と異変が生じているのだろう。
今の症状はおそらく、魔力が足りなくて本来の鳥の姿に戻ろうとしているのだ。
人間の姿を維持するために必要な魔力は想像以上に多い。
(自分の本来の姿をばらす訳にはいかないし、我慢すれば大丈夫なはず)
深呼吸して、一度落ち着く。
何回か繰り返すと先程の息苦しさも無くなった。
「大丈夫?」
部屋に戻るとゆいさんが声をかけてきた。
「うん、ちょっとむせちゃっただけ」
「それならよかった」
「盗賊のことだが、明日村周辺の森を探す。できるだけ早い方がいいからな」
そして次の日、早速盗賊を探しに出たのだが……思ったより早く見つかった。
村の近くには洞窟が多くあるらしく、そこを一つずつ探していたらすぐに見つかったのだ。
盗賊はかなり人数がいる。
私たちは臨戦態勢で向かい合った。
すると突然、間に女の子が飛び込んできた。
「まって! この人達を捕まえないで!」
その女の子は探していた、
「オリ姉?」
「えっ?」
オリヴィアだった。
「やっぱりオリ姉だ!」
「カナちゃん!」
一直線に走っていき、抱きつく。
周りの人から見たらよく分からない光景だろうが、感動の再会ということで納得して欲しい。
「オリ姉はこの人達と一緒にいたの?」
「そう。気絶していた私を助けてくれて、家族みたいに接してくれた。だから悪い人達じゃないの!」
信玄さんをまっすぐ見て説得するオリ姉。
「だが、村を襲い、領民を傷つけた罪は重いぞ」
「……でも、人を殺してない。それに傷だって「オリヴィア」」
何とか説得しようとするオリ姉の言葉を、盗賊の頭のような男が遮った。
「庇ってくれてありがとな。でも、お前と会うまでは普通に人を傷つけてた。だから、これは当たり前のことなんだ」
「でも……」
「自分が犯した罪はちゃんと償わなきゃいけないんだ」
この盗賊はいい人たちの集まりらしい。
いや、もしかしたらオリ姉の純粋さを目の当たりにして改心したのかも。
盗賊達は武器を捨て、手を上にあげた。
一緒に来ていた武士がすぐに拘束する。
盗賊の頭は最後にオリ姉の頭を撫で、連れて行かれた。
そしてオリ姉は武田軍に保護されることとなった。
ノア兄に全員見つけたことを報告する手紙を送る。
すると悲しそうな目をしているオリ姉が目に入った。
「オリ姉……」
「あの人達は生活のために仕方なくああいうことをしてたの。私も果物とか集めたけど足りなくて……」
後で信玄さんに聞いたことだが、オリ姉の説得もあって少し罪を軽くしたそうだ。
それに盗賊達は本当に素直でいい人たちらしい。
生きていくために、他人を傷つけなければならないこの世界。
現実は厳しいと改めて実感した。
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