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第五章〜ディフォン〜

稽古

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 武田の城に帰ってきた私たちは早速信玄さんに報告した。

「しばらくはラウス討伐に力を入れるみたい」
「そうか。助かった」
「ううん、私も収穫あったし、むしろ行けてよかったよ」

 ついでに旅をしていた仲間と再開したことも話す。

「はぐれた仲間を探しているんだったな。それで全員なのか?」
「いや、あと一人……」

 オリ姉が見つからない。
 てっきりノア兄と一緒にいるものだと思っていたが、現実はそうではなかった。
 イリスやノア兄のように、どこかの軍に保護されていれば安心だが、今のところそのような連絡はない。
 ちなみに連絡して欲しいと頼んだのは色々な軍をまわっているゆいさんだ。

「そうか。俺達も何か情報を手に入れたらすぐに伝える」
「ありがとう」

 すると信玄さんが突然こんなことを言い出した。

「そういえば五日後にゆいが来るな」
「えっ?」






 剣と剣が合わさり、カキンッという金属音が響く。

「ほんとにその力はどこからくんだよ!」
「秘密だよー」

 昌景さんの剣を受け止めながら適当に返事をしていると、後ろから気配を感じた。
 急いで剣を押し返し、すぐさま左に避ける。

「いつも思うが、カナは後ろにも目が着いているのか?」
「いやいや、何となく気配を感じるだけです」

 今は昌景さんと信春さんに稽古をつけてもらっているところである。
 というよりかは私が相手をしているという感じか。
 
 信春、馬場信春さんは私が唯一敬語で話してしまう相手だ。
 年上の貫禄というものが滲み出ていて、やめろと言われてもどうしても敬語になってしまう。

 私が魔法を使えることを話してから稽古の相手を頼まれることが多くなった。
 最初は一対一だったのだが、一人では倒せないと思ったのか最近は二人で攻撃してくる。
 魔法は身体強化だけにしようと思っていたが、二人の連携がすごくて違う魔法を使わなければいけない場面も増えてきた。

「お前本気じゃないだろ」
「まあね」

 もう一度構え、次の攻撃に備える。
 すると横から声がかかった。

「そろそろ休憩したらどうだ」

 視線を横に移すと信玄さんの隣にゆいさんが立っているのが見える。

「カナちゃん、久しぶり」
「ゆいさん!」

 私は剣をしまってゆいさんに飛びついた。

「元気そうだね」
「うん、もちろん。豊臣の城からきたの?」
「そうだよ」
「イリス、虹花は?」
「……相変わらず、でもすっごく元気でラウス討伐にもついていってた」
「えっ、それは危険なんじゃ」
「秀吉さん達が守ってるから大丈夫」

 そう言われても心配なのは変わらない。

「そうだ、至急伝えたいことがあるんです」

 ゆいさんが真剣な顔で信玄さんを見る。

「ではみんな集めて軍議を開こう」

 なぜか大切な会議に私も参加することとなった。




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