悪役令嬢の中身が私になった。

iBuKi

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第十四話 想像より凄かった。

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『…リティシア、我は本当にこのような格好で出掛けねばならないのか? 道化のようではないか?』
『あー、ユキが言いたい事も分からないでもない。僕は少し気に入ってるから安心してね。ただリティシアの瞳と同じ色の宝石がついてなかったら、絶対付けなかったかな、こんなの。』

(二匹とも凄く嫌そうなんですけど…)
 顔立ちが小さな狼なのでどんな表情はわかりづらいが、声で判断しやすい。
 スノウなんて尻尾が床をタシタシ叩いている。
 私の瞳の色の宝石がついてようが、やっぱり不機嫌ですよね?


 王宮に聖獣様たちと共に招待されたのはつい先日の事。
 王城に行くという事は、それなりの恰好が必要だと、準備期間を貰ったのは有難いのだけれど…。

 日頃冷静なお父様も「聖獣様に首輪など用意すればわざわざ災厄を呼ぶようなものだ! 不敬極まりない!」と大騒ぎし始めちゃって。
 女神信仰が篤い国という事もあって、例外なくお父様も信心深き当主様なのである。

 首輪は駄目だとからといって、何もないシンプルな素の状態で登城させるも良くない。
 公爵家お抱えの服飾デザイナーと様々な図案を提出させ、熟考した結果。

 何ていうんでしょうね…ミニマント? 的な?

 首元を宝石が付いたブローチで留め、艶のある紺色で、素材はシルクを使用している為、とても軽い仕様になっている。それが背中を背中の中程までを覆っていた。
 四足で立ってもマントが地面に付いてしまわぬよう計算された長さと型なのだそうで…。
 マントにも小粒の宝石が夜空の星のように散りばめられていまして…
 大変お高そうなマントになっております。
 宝石は私とお父様の瞳の色、イエローダイヤモンドを使用しております。

 私はプリンセスラインの白のシフォン素材を幾重にも重ねたフワフワなドレス。
 レースやフリルなどの装飾を無くし、シフォン素材を花びらのように重ねる事で、花の妖精風ドレス。
 お父様は私のドレス姿に「……ああっ! 私の天使…っ!」と嬉しそうに呟いて、私を抱っこすると、くるくると楽しそうにその場で回った。

 ―――お父様…?
(私、赤ちゃんじゃないんですけど…?)
 カーッと頬が赤くなるのが分かった。

「旦那様、天使では無くて妖精風ドレスなのですけれど…ウフフ、天使なのは間違いないからどちらでもいいですわね。」
 と突っ込みなのか同意なのかよく分からない言葉を呟き、くるくる回る私達を微笑んで見守っている。

(お母様、そこで笑って見守らず助けて下さい…っ!)

「め、めが…」
「ああ! 可愛くてやり過ぎてしまった! 大丈夫か? シア」

 ああ世界が回るぅぅ…

「だ、だいじょうぶではありませんが…だいじょうぶてす。」

 目が回って視界はぐちゃぐちゃだが、気持ちの面ではちょっぴり嬉しい。

(恥ずかしいけど、嬉しい)

 出掛ける前に色々あったけれど、礼装姿の聖獣様と、お父様とお母様と私を乗せた馬車は王城へと向かいました。





 ◇◆◇◆◇◆◇

 王城は白亜の宮殿でした。
 アラビアの宮殿に良く似ていて、タージ・マハルとアルハンブラ宮殿を足して融合させたような、華美さと城塞の良いとこどり的な不思議な雰囲気のお城。

(うわー…豪華絢爛! 凄い……公爵家だって凄い大きいし、どちらかというと屋敷っていうよりも城っぽい巨大さだったけど、本家は桁が違うんだなぁ。)

 観光に来た旅行者のように口を丸くポカンと開けて、お父様に手を引かれながら王宮の中を歩く。
 お父様の前には、場所までの案内役と警護を兼ねてるのか騎士様が歩いている。
 私達の後ろにも数名の騎士様。

(結構厳重だね?)

 お父様はお仕事で王城に行く事が多いけれど、ここまで厳重に警護されながら移動しているのだろうか。
 王宮は魑魅魍魎の巣窟とか訊くし、物騒なのかもなぁ。

 そんなことを考えてる間にも、どんどん目的地へと進む。

 そして騎士様が足を止めて「こちらに陛下がお待ちです。」と言われたの扉の前。

 扉の両隣に立っている騎士様が「聖獣様、ファルメール公爵様、ファルメール公爵夫人、ファルメール公爵令嬢がいらっしゃいました。入室の許可を願います。」と発言すると、中から「入れ」と声がした。

 あの低い声は意外に近くから感じた気がしつつ、開かれた扉から入室すると…

 ――――あれ? ここは謁見室ではない感じ? 謁見室の様な公的な場所へ呼ばれると思っていた私はキョトンとした。


(もしかしてここは陛下の私室…?)

 視界に広がるシックな色合いの重厚なテーブルや椅子を見る。
 プライベートな交流を持つ時に呼ぶ応接室的なところなのかな? お父様は陛下の弟だから?

 気になる事も見る所もいっぱい! と好奇心がムクムクとする中、
 ユキが突然『我らはリティシアを守護するものであり、国を守る気はない』と、不敬な発言を放り込んできました。

 ―――…ユ、ユキさん!? 

 飼い主である私が血の気が引く瞬間であった。
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