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第四十七話 奴隷商館へ①
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レグルスさんの知人が経営しているという事で訪れた奴隷商館。
高貴なお貴族様が住んで居ると言われても納得してしまうような、瀟洒な佇まいの御屋敷だった。
それも商売するならば賑やかな街の中心の方が有利である筈なのに、そこから随分と外れてるし、木々や花々を計画的に植えて景観を整えてあるような金持ち向けのエリア―――そう、金持ちの別荘がひっそりとあるような雰囲気の場所である。
「本当にココがレグルスさんのお友達の?」
「そうですよ。ただココは商館の本館というより、別館だと言ってましたが…お気に召しませんか?」
シュンと落ち込んだようなレグルスさんに、リティシアは壊れた玩具のように高速で首を振って否定する。
「いやいやいや! とんでもない! とっても素敵なお屋敷だったので、奴隷商館っぽくないなって、いやどんなイメージ持ってるんだって話なんですけど!」
言い訳のようなそうじゃないような、何を捲し立ててるのか分からないまま、とりあえずマシンガントークで話すリティシア。
穏やかで優しいレグルスさんには、こちらもとても優しく接したくなる。
落ち込ませるなどとんでもない! とリティシアは思っているのだ。
「もう少しお待ちくださいね。ここの呼び鈴が魔道具になっているらしくて――――」
大きな扉前の右横に小さな箱型の魔道具が…前世でいうインターフォンみたいな位置に設置されていた。
箱にレグルスさんが触れると、上蓋のような物がバカリと開き、中にはボタンサイズの丸い宝石が。
(魔道具っていう事は、魔石かもな…やけに綺麗な色してるけど)
私とユキとスノウも目がそのボタン型の輝く石に目が釘付けである。
世の中には不思議な魔道具がいっぱいあるんだなー。
そのキラキラした丸い石にレグルスさんが触れると、ぶわりと輝きが増した。
「よし、これで向こうに私達が来た事が通達されたでしょうから、このまま待ちましょうね」
待つこと数分、内側からガチャリと扉が開かれた。
現れたのは、執事のような服装をした男性。
名前はセバスチャンと呼ばれてそうな―――
「お待ち致しておりました。こちらへどうぞ」
扉を大きく開かれ中へと誘導される。
「久しぶりだね、スティーブ」
レグルスさんが親しげに執事さんに声をかけた。
「お久しぶりでございます。レグルス様のお元気なお姿を拝見して、私もホッとしました。噂は噂に過ぎないと」
「はは、噂ではなかったんだけどね? 今はお陰さまで完治したんだよ。心配かけたようですまない、手紙も書けない状態だったものだから、知らせるのが遅くなってしまったね」
会話の内容を訊く限り、レグルスさんは知人と言ってたけど、この家の執事から心配される程には、その知人と交流を深めてるって事だ。
ますます奴隷商館を経営しているレグルスさんの知人に興味がわきつつ、案内されるままに執事の人に着いて行った。
案内された部屋は貴賓室だそう。
「凄い豪華なお部屋……」
と思わず呟いてしまった。
室内の装飾全て一目で高価だと分かるような物ばかりだ。
主が華美過ぎるのを好まないのか、目にキラキラ突き刺さる黄金系の物は置いていない。
色調を似たような色味で統一しているからか、目に色んな情報が入ってごちゃごちゃ騒がしくなく居心地がいい。
思わず呟いた私の言葉を拾ってくれた執事っぽい人に、お得意様の中でもかなりの優良顧客が案内される部屋だと説明された。
まだ初回だけれど、きっとレグルスさんが居るからだなと思った。
「それでは、旦那様をお呼びしてきますので、もうしばらくお待ちくださいね」
美味しそうなお菓子とお茶を用意してくれた後、執事っぽい人(っぽいっていうのも何だけども)は、優雅に一礼して退室していった。
焦げ茶色の髪と瞳の執事っぽい人は四十代くらいかな…
落ち着いたイケオジの雰囲気であった。
そういえば…ちゃんと自己紹介出来てなかった事に気付いた。
「レグルスさん、私…執事っぽい人に自己紹介してませんでした」と話せば、レグルスさんは目を丸くした後にフフフッと笑いだした。
「ふふ、ふふっ、リティシアちゃんは急に何を言い出すのかと思ったら、ふふっ、大丈夫、私が事前に説明してあるから。だからスティーブも敢えて自己紹介してなかったんじゃないかな?」
笑いが治まらない様子のレグルスさん。
そんなに笑われるような事言ったつもりはないのだけど……
レグルスさんは恐らく笑い上戸ってヤツなんだろう。
「それならいいんですけど…何だか気持ち悪いので、先程の執事さんに会ったら改めて自己紹介しておこうと思います」
「……ふふっ、リティシアちゃんは可愛いね。きっとスティーブも喜ぶと思うよ」
レグルスさんに頭をヨシヨシと撫でられた。
…解せぬ。
その直後にスノウが「リティシア、僕の頭を撫でて?」と言って、頭を差し出してきたので、黙って撫でてあげた。
「僕は撫でるより撫でられる派だなー」と呟いている。
ユキはそんなスノウを呆れたような顔をしながら見つめ、私の方に視線を戻す。
ジッと見つめられる。
「ユキも撫でられとく?」
「勿論、俺も撫でられる派」
呆れてたんじゃなかったんかい。と思ったが、飼い主の愛は平等に注がれるべきと思い直し、だまって差し出された頭をヨシヨシと撫でておいた。
「リティシアちゃんは大人気だね」
微笑ましげに見守っていたレグルスさん。
「そうですね、家族ですから仲良しです」
と答えた私に、またレグルスさんが頭を撫でられる。
今日は良く頭を撫でられる日だな。
とても大きな金額の掛かる買い物を前に、私の喉はカラカラだったので、出されたお茶もあっという間に飲んでしまった。
(まだかなー…?)
とぼんやりと考えていると、扉をノックする音。
レグルスさんが「どうぞ」と応えた。
高貴なお貴族様が住んで居ると言われても納得してしまうような、瀟洒な佇まいの御屋敷だった。
それも商売するならば賑やかな街の中心の方が有利である筈なのに、そこから随分と外れてるし、木々や花々を計画的に植えて景観を整えてあるような金持ち向けのエリア―――そう、金持ちの別荘がひっそりとあるような雰囲気の場所である。
「本当にココがレグルスさんのお友達の?」
「そうですよ。ただココは商館の本館というより、別館だと言ってましたが…お気に召しませんか?」
シュンと落ち込んだようなレグルスさんに、リティシアは壊れた玩具のように高速で首を振って否定する。
「いやいやいや! とんでもない! とっても素敵なお屋敷だったので、奴隷商館っぽくないなって、いやどんなイメージ持ってるんだって話なんですけど!」
言い訳のようなそうじゃないような、何を捲し立ててるのか分からないまま、とりあえずマシンガントークで話すリティシア。
穏やかで優しいレグルスさんには、こちらもとても優しく接したくなる。
落ち込ませるなどとんでもない! とリティシアは思っているのだ。
「もう少しお待ちくださいね。ここの呼び鈴が魔道具になっているらしくて――――」
大きな扉前の右横に小さな箱型の魔道具が…前世でいうインターフォンみたいな位置に設置されていた。
箱にレグルスさんが触れると、上蓋のような物がバカリと開き、中にはボタンサイズの丸い宝石が。
(魔道具っていう事は、魔石かもな…やけに綺麗な色してるけど)
私とユキとスノウも目がそのボタン型の輝く石に目が釘付けである。
世の中には不思議な魔道具がいっぱいあるんだなー。
そのキラキラした丸い石にレグルスさんが触れると、ぶわりと輝きが増した。
「よし、これで向こうに私達が来た事が通達されたでしょうから、このまま待ちましょうね」
待つこと数分、内側からガチャリと扉が開かれた。
現れたのは、執事のような服装をした男性。
名前はセバスチャンと呼ばれてそうな―――
「お待ち致しておりました。こちらへどうぞ」
扉を大きく開かれ中へと誘導される。
「久しぶりだね、スティーブ」
レグルスさんが親しげに執事さんに声をかけた。
「お久しぶりでございます。レグルス様のお元気なお姿を拝見して、私もホッとしました。噂は噂に過ぎないと」
「はは、噂ではなかったんだけどね? 今はお陰さまで完治したんだよ。心配かけたようですまない、手紙も書けない状態だったものだから、知らせるのが遅くなってしまったね」
会話の内容を訊く限り、レグルスさんは知人と言ってたけど、この家の執事から心配される程には、その知人と交流を深めてるって事だ。
ますます奴隷商館を経営しているレグルスさんの知人に興味がわきつつ、案内されるままに執事の人に着いて行った。
案内された部屋は貴賓室だそう。
「凄い豪華なお部屋……」
と思わず呟いてしまった。
室内の装飾全て一目で高価だと分かるような物ばかりだ。
主が華美過ぎるのを好まないのか、目にキラキラ突き刺さる黄金系の物は置いていない。
色調を似たような色味で統一しているからか、目に色んな情報が入ってごちゃごちゃ騒がしくなく居心地がいい。
思わず呟いた私の言葉を拾ってくれた執事っぽい人に、お得意様の中でもかなりの優良顧客が案内される部屋だと説明された。
まだ初回だけれど、きっとレグルスさんが居るからだなと思った。
「それでは、旦那様をお呼びしてきますので、もうしばらくお待ちくださいね」
美味しそうなお菓子とお茶を用意してくれた後、執事っぽい人(っぽいっていうのも何だけども)は、優雅に一礼して退室していった。
焦げ茶色の髪と瞳の執事っぽい人は四十代くらいかな…
落ち着いたイケオジの雰囲気であった。
そういえば…ちゃんと自己紹介出来てなかった事に気付いた。
「レグルスさん、私…執事っぽい人に自己紹介してませんでした」と話せば、レグルスさんは目を丸くした後にフフフッと笑いだした。
「ふふ、ふふっ、リティシアちゃんは急に何を言い出すのかと思ったら、ふふっ、大丈夫、私が事前に説明してあるから。だからスティーブも敢えて自己紹介してなかったんじゃないかな?」
笑いが治まらない様子のレグルスさん。
そんなに笑われるような事言ったつもりはないのだけど……
レグルスさんは恐らく笑い上戸ってヤツなんだろう。
「それならいいんですけど…何だか気持ち悪いので、先程の執事さんに会ったら改めて自己紹介しておこうと思います」
「……ふふっ、リティシアちゃんは可愛いね。きっとスティーブも喜ぶと思うよ」
レグルスさんに頭をヨシヨシと撫でられた。
…解せぬ。
その直後にスノウが「リティシア、僕の頭を撫でて?」と言って、頭を差し出してきたので、黙って撫でてあげた。
「僕は撫でるより撫でられる派だなー」と呟いている。
ユキはそんなスノウを呆れたような顔をしながら見つめ、私の方に視線を戻す。
ジッと見つめられる。
「ユキも撫でられとく?」
「勿論、俺も撫でられる派」
呆れてたんじゃなかったんかい。と思ったが、飼い主の愛は平等に注がれるべきと思い直し、だまって差し出された頭をヨシヨシと撫でておいた。
「リティシアちゃんは大人気だね」
微笑ましげに見守っていたレグルスさん。
「そうですね、家族ですから仲良しです」
と答えた私に、またレグルスさんが頭を撫でられる。
今日は良く頭を撫でられる日だな。
とても大きな金額の掛かる買い物を前に、私の喉はカラカラだったので、出されたお茶もあっという間に飲んでしまった。
(まだかなー…?)
とぼんやりと考えていると、扉をノックする音。
レグルスさんが「どうぞ」と応えた。
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