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第六十四話 閑話 女神様は学園モノがお好き。
しおりを挟むギルド登録して狩りをして素材を売ってお金を貯めたり、そのお金で奴隷を買ったり拠点を購入したり、商会を立ち上げていくつもの商品を開発して売り出したり、レストランを経営して食の文化を賑やかにさせたり――――
「リティ、私は学園モノの恋愛ストーリーを所望するわ。
リティのしてることは“転生したらチートを神様から貰いました! その能力で楽しいスローライフを始めます。モフモフも一緒だよ!”何ていう長いタイトルでネット小説で悪役令嬢以外で良く見るヤツなの。分かるわね?」
「……はい? たぶん……分かるような分からないような。」
リティシアは自分がしたい事をしただけで、スローライフひゃっほうとは少しは考えたけど、それ系は読んだ事はないので良く分からない。
「好きにいきていいの。ただこのジャンルは好きに生きてると恋愛から遠ざかるのよ! リティを転生させてから恋愛のレの字も出てきてないのがいい証拠でしょ?」
「ティナ様がお好きなジャンルではないと?」
「たまーに読みたくなるんだけどね、でも、本当にたまによ。基本的に私が好きなのは恋愛モノなの。それも、悪役令嬢が主役でヒロインが悪い系のやつよ。ザマァは無自覚ザマァっていうのもいいんだけど、しっかりザマァさせるのも好きかしらぁ…?」
女神だというのにちょっぴり邪悪な笑みを浮かべている。
「なるほど。私では難しい配役のような……」
女神の高すぎる要求にリティシアも目を白黒させる。
確かに転生する時に、悪いヒロインが色々画策しても全て無効化させるのを見たい的な事を仰っていたけど、恋愛モノとは初耳な気がする。
「難しいじゃないの! リティなら出来るわ。余裕よ、もう既に三人程堕ちかかってるんだから。」
「落ちかかってるですか? どこに?」
「リティは無自覚鈍感系なのね。王道ではあるし悪くないわね」
私が無自覚鈍感系って?
リティシアはさっきからずっと???状態である。
しかし、この世界に転生出来て色々やらせて貰っているのは大変感謝しているので、余計な口を挟まない。
リティシアは空気の読めるいい子に進化したのである。
転生してからそんなに頻繁に教会に足を運ぶ事はなく「教会に来てくれないから、夢の中にお邪魔しちゃうわよ!」と夢の中で何度か顔を合わせていた。
ただ、教会で会う時は私の能力にも少し干渉出来たり色々覗けたりするらしいので(少し嫌だけど)、頻繁ではなくていいから来て! とお願いされて、今日は久しぶりに教会にユキとスノウを連れてやってきた。
「学園にユキとスノウも通えるようにしておいたわ。二人とももう人化出来る事だし、学年はリティシアと同じ一年生からなのだから、年齢はそれくらいで設定しておきなさい。」
「承知しました。」
「了解しました。」
だいぶ大きく成長した二匹。
もうその大きさは普通ではなく、全長三メートルはありそう。
某アニメ映画の白い狼を彷彿とさせる。
「リティシアには私の授けたずば抜けた能力があるとはいえ、何があるか分からないわ。しっかり守るのよ。一応悪役ヒロインにするつもりだから、全く力が無いという訳にはいかなくてね。」
女神様が転生させるのは濁りのない魂ばかり。
それを今回は世界に刺激を与えて揺らす為、世界の理を捻じ曲げて汚れた魂を誕生させた。
(面白いと思ったからやるっていってた気がするけど……)
全く何の能力も持たないで転生させたら、何も為せないような無能になっても困る。
私との接点を持たせる為に学園に入学出来る身分や能力を与えたとの事。
ヒロインさんは「やった! チート持ちよ!」と喜んでいたそうで。
どんな能力なのかは会ってからの秘密よって女神様が言うけれど、気が重い……。
「好きに生きていいんですよね?」
リティシアは女神に訊く。
「ええ、好きに生きていいわよ。ただ、ちょーっと学園で好きにして貰ったら、リティを見守ってる私が楽しめるし喜ぶってだけよ?」
「……ズルいです。わかりました。好きにガンバリマス。」
思わず拗ねたような顔になってしまう。
女神様にそこまで言われるなら、頑張るか……って気になってきた。
ザマァは悪役ヒロインさん次第。
私からは何もしない。
それなのに私に絡んで来るなら、勝手に自滅していくんじゃないかなぁ? なんて。
「入学してしばらくしたらまた教会に会いに来て頂戴ね!楽しみにしてるわ!」
「ティナ様に会いにきます。」
こくりとリティシアは素直に頷く。
「んんーっ、なぁんて可愛いのぉ!」
急に高いテンションになった女神様は、リティシアに突然ガバッと抱き着き頬を頭にスリスリし始めた。
「もう、もうっ、何かそのすぐ頷くとこが可愛いのよねぇ、ちょろい感じが私のツボに刺さりまくりよ。リティ、貴女罪な女ね!」
何故――――
頭頂部の髪の毛が薄くなるかもと心配なるほど女神様におとなしくスリスリされ続けたのだった。
教会から帰宅後、鏡台にちょこんと座って手鏡を持ちながら頭頂部を確認するリティシアに、スノウとユキが「少しおバカなとこが可愛い過ぎるんだよな」と言われてるのはリティシアの知らぬこと。
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