悪役令嬢の中身が私になった。

iBuKi

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第七十七話 避暑地へ出発。

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 大きな夜会やお茶会などの催しがひと段落する夏は、大抵の貴族達は王都を離れ領地に戻ったり、避暑地へ向かったりする。

 王都を離れ避暑地へ――――
 何て贅沢な響きなんだろう。
 私が学園に通うまでは、避暑地なんてとても幼い頃に行ったような程度だ。
 それもお父様が王位継承権を放棄して公爵家を興したばかりで、めちゃめちゃお仕事が忙しくて短期間だったという。
 最近やっと色々な事が落ち着いて、私も学園に通ってしまって家族の時間が少なくなったという事もあり、頑張って休暇を取れる程の時間を作ったらしい。
 勿論、当主として完全に仕事をしないというのは無理なので、休暇中もお父様にしか出来ない決裁系の書類はするようだけど。

 それでも、家族でバカンス! 避暑地! 楽しみで仕方ない。

 公爵家の西側の領地に湖が近くにあって涼しい場所に建てた別邸があるという
 事で、一度スノウに公爵家まで転移して貰って、皆で出発することに。
 衣装や小道具や装飾品などは全て事前準備をしていてくれたみたいで、私はスノウに転移してもらって、私室でお出かけ用のドレスに着替えて馬車に乗るだけだった。

 馬車で一日掛かる距離らしいので、途中で一泊するらしい。
 貴族御用達の高級宿という事で、泊まるのがちょっと楽しみ。

 実は――――
 今回使用する馬車にはこっそり魔法をかける予定だったりする。
 一日中乗ってる訳ではないけれど、何時間コースではあるのでお尻も痛くなりそうだし……。
 ティナ様に貰ったチートを最近では全く活かせてないなって思う所もあって、
 どうせなら馬車に使ってみようと思ったのだ。

 せっかくスキルに「創造魔法」何て都合のいいものがついてるのだから、活用しないと。


 という事で馬車の車輪の上にある箱型部分に質量軽減魔法と、車輪が石や窪みを通っても全く軋む事のないよう物質強化魔法を施してみた。
 馬車内には結界を張って、揺れが伝わらないようにしてみた。


 クリエイトというスキルでは、低反発素材をスライムや軍隊蜘蛛の糸で編まれた布やロックバードを始めとした材料で作れるらしかったので、スノウとユキとお散歩がてら週末に森へ行って素材狩りをして貰った。
 蜘蛛の糸は手に入れられても編まれた布は手に入らないので、布だけは買った。
 錬金術コースというものが学園にあるくらいだから、学園の下にある街に錬金術の素材のお店があると踏んで探したらあったという。そこで購入しましたとも。

 それをクリエイトスキル(ただ素材を全て目の前に用意して、クリエイト!と口にするだけの簡単仕様です。)を使って、低反発素材の長いクッションが出来たという。

 馬車の座席と入れ替えたかったけど、直前まで両親には内緒にしてビックリさせたかったので、大きさだけ測って座席に直置きに。

 乗り込む時の両親の顔が楽しみです!



 私の方がお母様より早めに準備が出来たので、皆で乗り込む前に設置しようと、待機している公爵家専用の馬車に向かった。

「お嬢様、どうされましたか?」
 と御者の人が不安気にしていた。
「大丈夫。ちょっとクッションを置くだけだから。」と、言いながら無詠唱で車輪には物質強化魔法、車輪の上にある箱型部分に質量軽減魔法をかけておく。

 馬車の扉を開けて、低反発クッションを敷く。
 ちゃんと測ってたおかげでピッタリだった。少し座席の厚みは増したけど、座りづらいかな……? 多分大丈夫だよね、低反発でオシリ沈むし。

 結界まで無詠唱で張った所で、また玄関に戻って両親を待つ。

 お母様がお父様にエスコートされながら玄関に現れた。
 両親はとっても仲良しである。

「まぁリティ、待たせちゃったかしら?」
 既に玄関に居た私にお母様が申し訳なさそうに訊く。

「大丈夫ですお母様。今、来た所です。」
 ニッコリ笑ってそつなく答えるが、今から起きるサプライズの期待でドキドキしていた。

「では、美しいレディたち。我が公爵家自慢の避暑地へ向かおうか。」
 お父様が微笑んで促す。

「ああ、トーマス、チャールズ、留守の間は頼んだよ。」
 家令のトーマス、筆頭執事のチャールズに留守を頼むと、サプライズ待機中の馬車へと向かったのだった。
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