夢見るオメガは運命を探して~出会った瞬間、溺愛確定⁈

金剛@キット

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2話 アルファ

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「落ち着け、僕… 落ち着け、僕…」
<…だいたい、僕から先に相手に会いたいと選択したわけだし… ここで帰るのは人として失礼すぎるよね?!>

 大学入学時に母が買ってくれた、スーツの上着をキュッ… と引っ張っり、かたちを整えて気合いを入れた。

 待ち合わせ場所がどこか知り、自分なりの正装を着てみたが、やはり高級ホテルでは、何となく自分だけが浮いてしまっているような気がする。

「もう… 来ているのかなぁ? 20分前だから、まだかなぁ…?」
<実は50分前に着いて、今までホテルの前をうろうろして、時間をつぶしていたんだけどね… 待ち合わせ場所は、"ガーランドホテルの玄関ロビー"で… "アルファとオメガならすぐにお互い誰かわかる"とだけで、相手の特徴はほとんどわからない。
 僕が知っているのは、相手の年齢が僕より8コ年上で… 男性、名前は不明だけど、アカウント名は"Meer" それから遺伝子の相性が92%!>
 
 何人かフユメとヒットしたアルファはいたが… その中でもダントツで今日の待ち合わせ相手が、一番遺伝子の相性が良かったのだ。 

 実のところ、フユメはほとんどアルファに会ったことが無い。
 今までなるべく合わないように、アルファを避けて暮らして来たからだ。
 だからフユメの知識は、ほとんどネットで収集した情報ばかりだった。


「まだ、来ていないみたいだ…」
 ざっ… と玄関ロビーを見回してみたが、3人組のベータの女性たちがいるだけで… それらしき人物は、まだ見当たらない。
 
 どちらにしてもロビーの真ん中でボンヤリ立っていると、目立ってしまうから… 緊張を散らすために、フゥ―――ッ… と深呼吸をすると、とりあえずフユメは壁際にある長いすに向かって歩き出した。

 1歩、2歩と踏み出したところで、背中から何かしらの圧力のような気配を感じて、フユメはふと立ち止まりふりむく。
 玄関ロビーに敷かれた赤い絨毯じゅうたんのせいで、まったく足音が聞こえなかったが… スーツ姿でビジネスマン風の、かなり背の高い男性が、フユメに向かってまっすぐ歩いて来る。

「…うわぁ! カッコいい人… あの人が?」
<間違いない、あの人はアルファだ! あの人が僕の待ち合わせ相手?!>

 思わずフユメもつぶやいてしまうほど、目鼻立ちがはっきりしていて、短く切りそろえた黒髪をすっきりと後ろに流し… 一目で誰もが、美男子だと認めるであろう容姿をしていた。

 目が合うと相手に微笑まれ、フユメの顔はかあぁっ… と一気に熱くなる。

「やばっ!」
<本当にアルファだ! あの人が僕の"運命のつがい"になるかも知れない人?!>

 フユメがアルファを見たとたん、圧倒的な何かに襲われた。

「あっ…?!」
<ああ… 何これ…?! すごく良い匂い… あれれ…? これ… アルファのフェロモン?> 

 脳がしびれ… うなじがひどくうずいたと思ったら、背骨からじわじわと腰へと伝わり、下腹をヂクヂクと刺激する。

「…うああぁっ!」

「オイ! 大丈夫か、君?!」

 その人が目の前に立った時、アルファの圧倒的な存在感に、足がぐらぐらとして… フユメはその場で、ひざまずてしまいそうになる。

 ふらついたフユメの腰を、ギュッ… と相手が抱きよせて、あわてて支えた。


「嘘…! どうしよう… どうしよう… こんな時に! 嘘っ…」
<あれが来る! あれが!! やだよ…どうしよう、発情しちゃうよぉ!!> 


 フユメは初めて会ったアルファの腕の中で、発情してしまった。




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