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7話 良き隣人
アルボル伯爵邸からオルテンシアが追い出されてから、2ヵ月近くの月日が過ぎていた。
「オルてんちぁー! オルてんちぁー! しゅごく大きな赤いの見っけたよぉ~?!」
幼い男の子が舌足らずな口で、少し前から仲良しになった、年上の友人の名前を呼んだ。
「わぁ~ すごいよラーマ! なんて立派で大きなりんごだろぉ~?! ラーマは大きなりんご探しの名人だねぇ~!!」
両手にリンゴを持って、秋の果樹園を元気に走り回る、幼児を抱き上げ、オルテンシアはぷくぷくのほっぺにチュッ… とキスをする。
「わぁ~! ラーマのリンゴで、いっぱいリンゴジャムが作れるねぇ~!」
「ジャムぅ~! ジャムぅ~! ジャムぅ~! オルてんちぁーと、 ジャムぅ~ ちゅくりゅぅ~!」
「ふふふっ… もう、本当にラーマはかわいいねぇ! お邸に帰る前に、お母様のお墓にこんにちはを、言いに行こうねぇ~!」
「オルてんちぁと、お墓に行くぅ~!」
少しだけ切ない顔をして、オルテンシアは小さな友人… アレールセ子爵の長男、ラーマのひたいにキスを落とす。
ラーマの母親アレールセ子爵夫人も、オルテンシアの両親と同じ、流行病で亡くなっていた。
「・・・・・・」
本当にこの子が、元気になって良かった! 幼い子が母親を亡くすことほど、辛いことはないからね…… 僕だってこの年になってから、両親を病気で亡くしてしまったけれど、本当に自分だけが生き残ったことに、罪悪感を感じていたもの…
流行病にかかった妻のために、アレールセ子爵は王都から貴重な薬を取り寄せたが… 薬が届いた時には、愛する妻が亡くなった後だった。
領地が隣接するアルボル伯爵夫妻も亡くなり、その息子オルテンシアも、病気で苦しんでいると、妻の葬儀を行った神官から話を聞き、子爵自身がみずからオルテンシアのために、伯爵邸へ薬を届けてくれたのだ。
その時以来、両親を亡くしたオルテンシアと、最愛の妻を亡くしたアレールセ子爵タリオとの間に、一回り(10歳)以上の年齢差があったが、強い絆のようなものが芽生え、友情で結ばれていた。
そんな縁があり、アルボル伯爵邸を追いだされて、オルテンシアが助けを求めたのが… 両親が亡くなり、この世で一番オルテンシアが信頼出来ると思う人物、伯爵家の良き隣人のアレールセ子爵タリオだった。
果樹園で収穫したリンゴを運ぶ荷馬車にのり、オルテンシアとラーマは子爵邸近くの神殿へ寄る。
神殿裏の墓地の入り口で、綺麗に咲いていたコスモスの花を数本つみ、ラーマの小さな手をひいて、オルテンシアはアレールセ子爵夫人の墓へと向かう。
「時間が過ぎるのは… 早いねぇ… 悲しんだり、怒ったりしている間に… ラーマのお母様と、僕の両親が亡くなってから、半年以上も過ぎてしまったよ? びっくりだよねぇ~?」
「お墓ぁ~! お墓ぁ~! お墓ぁ~!」
ラーマは歌を作り、楽しそうに自分の歌にあわせて、1歩ずつ墓地を進む。
「今日はね… こんにちはの、挨拶だけじゃなくてね… ラーマのお母様に、僕はすごく大切なお願いをしに来たんだ… 許してくれると良いけど… 怒られるかも知れないなぁ…」
小さなラーマを見下ろし、不安そうにオルテンシアは笑った。
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