オメガの恨みは恐ろしい!~自分だって地味顔のくせに‼

金剛@キット

文字の大きさ
9 / 19

8話 アレールセ子爵タリオ  


 領地が隣同士ということもあり… 代々アルボル伯爵家とアレールセ子爵家は、おたがい家族ぐるみの、親しい付き合いをしていた。
 そのえんでアレールセ子爵タリオは、亡くなった子爵夫人(オルテンシアの従姉いとこ)と結婚したのだ。
 
 ラーマと手をつないで、墓地の奥まで進むと… 子爵夫人の真新まあたらしい墓石の前に、すらりと背が高いアレールセ子爵タリオの、さびしげな背中が見えた。

「あっ…!」
 タリオ様だ… お邪魔じゃましたら悪いなぁ…? でも、ラーマも一緒にいるし… どうしよう…?!

 …と、オルテンシアが迷っていると…

「おとうしゃまだぁ! おとうしゃまぁ―――っ!!」

 かん高い声でラーマがさけび声をあげて、オルテンシアの手を放し父親に向かってけ出した。 

「ふふふっ… ラーマったら…! あの元気には負ける…」

 ラーマはタリオの長い足にギュウ~ッ… としがみつく。
 さびしげだったタリオの顔は、甘える息子の顔を見ると満面の笑みに変わり、ラーマを抱きあげた。

「なんだ! ラーマもお母様に会いに来たのか?」

「おとうしゃまぁ… しゅごく大きな赤いの、見っけたよ? オルてんちぁと、 ジャムぅ~ ちゅくりゅぅ~!」

「はははっ…! 何を見つけたって?!」

「大きな赤いの~!! ジャムぅ~ ジャムぅ~!」 

 親子のお話しタイムを邪魔をしないよう、オルテンシアは静かに墓の前でひざまずき、墓石の前にそなえられた一輪の赤いバラの隣に、コスモスの花をそっと置く。

 オルテンシアは瞳を閉じ… 亡くなった従姉、アレールセ子爵夫人に許しを願い求める。

「・・・・・・」
 僕のわがままを許して下さい… クラベールお姉様! 裏切り者で恥知らずの尻軽シプレスに、ばつをあたえてやりたいのです!! そして僕が両親から受け継ぐべきモノを、取り返したいのです!!
 少しの間だけ目をつぶって、見ないふりをして下さい! どうか、お願いします! 僕の復讐ふくしゅうを手伝って下さい!


 長い間、オルテンシアは従姉のクラベールに祈り続けていると… トンッ… トンッ… とふいに、大きな手で肩をたたかれ、顔を上げた。

「大丈夫だよオルテンシア… きっとクラベールも、助けてくれるはずだ!」

 片手にラーマを抱いたまま、タリオは切れ長の瞳をなごませ、端正たんせいな顔でオルテンシアに微笑みかけた。

「/////////」
 オルテンシアは思わず… あまりにもタリオの微笑みが美しすぎて、ほほをうっすらと染めて見惚れてしまう。

「オルテンシア?」

「あっ… はい!」
 ごめんなさいクラベールお姉様! あなたの愛する旦那様に見惚れてしまいました! 本当にごめんなさい! タリオ様ってば… 大人のつやが… もう、色気がダダもれすぎて……

 あわててひざに着いた汚れを払いながら、タリオの隣に立ち… オルテンシアは、今は亡き5歳年上の従姉、クラベールの言葉を思い出す。

『私みたいな地味で平凡な顔だとね、美しいタリオの隣に立つのが、恥ずかしく感じる時があるのよ…』

 当時のオルテンシアはまだ子供だったため、10歳以上も年上のタリオのことを、美しいと思う従姉クラベールの感覚が、理解できなかった。
 だが、結婚できる年齢になって初めて、オルテンシアもクラベールの気持ちがわかった気がした。

 タリオに見惚れた自分自身にとても動揺して、やましい気分になり… オルテンシアはもう一度、子爵夫人クラベールの墓に、許して欲しいと熱心に願う。 

「・・・・・・」
 クラベールお姉様! 僕はけしてあなたの夫を奪おうと、思っているわけではありませんから! 間違えないで下さいね?! ちょっとドキッ…! と、したのは本当だけど……。
 他人に何を言われても、僕は気にしないけど… あなたにそう思われるのだけは、耐えられません!!
 本当に一時期だけ、お姉様の美しい旦那様をお借りします!!
 ほんの少しの間だけですから!!


 それから半年後……。
 オルテンシアの両親と子爵夫人が亡くなってから1年が過ぎ、が明けると… 
 アレールセ子爵邸近くの神殿で、オルテンシアとタリオは婚姻こんいんの儀式をとり行った。


 オルテンシアの復讐ふくしゅうの始まりである。





感想 1

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

どうか溺れる恋をして

ユナタカ
BL
失って、後悔して。 何度1人きりの部屋で泣いていても、もう君は帰らない。

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!