侯爵に買われた妻Ωの愛と葛藤

金剛@キット

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25話 騎士団長と副騎士団長 アーヴィside

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 第二騎士団、副団長の執務室で黙々と書類仕事を片付けるアーヴィの執務机に形の良い小さな尻を乗せて、鼻歌を歌う騎士団長のマール王子。


「マール王子… 尻を上げてください、下の報告書が見たいので」

「おや、コレは失礼!」
 自分の尻の下の報告書をマール王子は座ったまま引き抜き、シワシワの紙をアーヴィに手渡す。

「ほら、僕の尻と同じぐらい報告書が暖かくなってるよ?」

「・・・・・・」 
 パチンッとウインクするマール王子に、アーヴィは呆れてため息をつく。

 王立第一、第二騎士団の騎士団長は能力で選ばれるのではなく、いわゆる名誉職で、慣例から王族が務めるコトになっていた。

 第二騎士団の前騎士団長だった第二王子のラーゴ王子は臣籍に下り、血筋が絶えたプラッタ公爵領を陛下から拝領し、エズメラウダ公爵となる。

 後任に第三王子のマール王子が、オメガではあるが就任した。


「うふふふふっ… 早く僕のモノになりなよアーヴィ」

「何もやるコトが無くなったら、考えても良いですがアナタのせいで仕事は山積みですから…他の王族の方が騎士団長に就任するまでは無理でしょうね」
<クソッ! 皮肉など通じない相手だが、ついつい言い返したくなる!>

 マール王子の性格からして言い返せば、逆に喜んで絡んで来るのだ。 

 王族の傲慢さからマール王子は典型的な快楽主義の上、利己的だから、 無邪気な態度に騙されて気を許すと、酷い目に合う。

 先月、部下のベテラン騎士が王子の色香に惑い、王子が誘えば仕事中でも人前でイチャつくようになり、仕方なく北方騎士団に左遷したばかりだ。


「王子… 何もしなくて結構ですから、私の邪魔はしないで下さい!」
 イライラとマール王子を睨みつけていると、王子のネックガードに目が行き… アーヴィはふと考え込む。

<フェーブリ医師に会って良い抑制剤を教えてもらおう! ヴィトーリアの奴、あんなにフェロモンを振り撒いていたら公爵邸中のアルファが襲い掛かって来るぞ?!>


「邪魔なんかして無いだろう? 少しだけココで休憩しているだけだよ」
 ニマニマと笑い、マール王子は艶気を振り撒く。

「・・・・・・」
 既に王子への関心を無くし、ヴィトーリアのコトで頭がいっぱいのアーヴィは…
 フッと笑い、王子が目の前にいるコトなど忘れ機嫌良く書類仕事に戻る。

<それにしても、今朝のアイツは可愛かったなぁ… フフフッ…>

『本当にだめぇ…こんな…ふしだらなコト』

<ああマズイ… 思い出したダケで昂ぶりが抑えられない!!>

 ニヤニヤが止まらないアーヴィ。


「ねぇアーヴィはどんな体位が好きなの?」
 若いデビュタントたちのようにマール王子は唇を尖らせキスを誘う。

「ああ王子、まだいたのですか?」

「だから… ねぇ、どんな体位が好きなの?」
 ぷうっと膨れるながら、まだ食い下がる。

「今朝は正常位で可愛がりましたよ、アレは可愛かった!」
 カシカシと書類の上で、ペンを滑らせる音を微かに立てながら、サラリと答える。

「え・・・!?」
 答えが返って来るとは思わなかったマール王子は、パカリと口を開く。

「まだ何か用ですか? 忙しいので退出して下さい、誰かに構って欲しいなら第一騎士団、団長の執務室へ行って下さい、アナタについては言動も行動も全て報告書に記入して、王太子殿下に提出する予定です」

「はぁ?! 嘘でしょう?! 何ソレ!!」
 サラリと言われてマール王子は驚愕する。

「全て本当です、アナタが部下に手を出すからイケナイのですよ?」
 実は全部ウソ、"嘘も方便"である。

 素行不良のマール王子にコレ以上付き合うのが面倒になり、アーヴィは前任の騎士団長ラーゴ王子直伝の腹黒術を使用するコトにした。


「嘘でしょう?!」

「そう思うなら王太子殿下に確かめてはどうですか? "部下とふしだらな関係ですがご存知ですか?" と」
<そうだ、報告書ダケ作っておこう、いつでも出せるように… マール王子に嘘がバレても言い逃れが出来る… まぁソコまで頭が回る人ではないけど>

 そもそも頭が回る人なら、こんな愚かなコトはしない。

 力強く頷くアーヴィにマール王子の顔色がドンドン青くなってゆく。

「・・っ!!」


「さぁ、どうしますか?」
<不真面目なダケならまだ許せるが、愚か者は許せない!! 特に部下まで巻き込んだコトが!!>

「悪かったよ… もう邪魔しないから、頼むよ」

「私の執務室から退室してください、ソレとやる気がないなら、騎士団にいらっしゃらなくて結構です」

「わ…わかった!」



 慌てて出て行くマール王子に、アーヴィはため息をつく。


<昔のオレも、ヴィトーリアからすれば、マール王子のように甘やかされた愚か者にしか見えなかったのだろうな>



 1人で首を横に振り、アーヴィは苦笑いを浮かべた。





 
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