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29話 虚ろな目
しおりを挟むヘメージオが去った後、しばらくしてアーヴィが訪れると… ボンヤリと俯きヴィトーリアはベッドに座っていた。
「ヴィトーリア… 着替えもしないで、疲れているのか?」
「・・・・・・」
名前を呼んでも顔を上げようとせず、返事もしないヴィトーリアはアーヴィを拒絶していた。
アーヴィが頬を撫でようとすると、ヴィトーリアは手を振り払う。
「もしかして… 朝、抱いたコトを怒っているのか? …それとも眠っている間に出掛けたからか?」
「話したくない…」
眉間にシワを寄せ、苦しそうな顔をするヴィトーリアに、かなり面倒なコトになっているとアーヴィは焦る。
「遅くなってすまない…! 王立医療院で良さそうな抑制剤を貰って来たから、試してみてくれ」
上着の内ポケットから小さな革袋を出しヴィトーリアの手に乗せる。
「ありがとう…」
礼だけ言うが、ヴィトーリアはそれっきり口を閉じてしまう。
今夜は仕事の合間に王立医療院に行ったり、その帰り道で寄り道をしたりしたせいで、結局こんな時間になってしまったのだ。
「ヴィトーリア…?」
ベッドに座るヴィトーリアの膝の間に跪いて、俯く顔を見上げると、深い紺青色の瞳から光が消え、虚ろな目をしていた。
「何があった?!」
面倒どころか、心配になりアーヴィはギュッと手を握り見つめるが、ヴィトーリアは視線を逸らし、目を閉じてしまう。
「・・・・・・」
大きなため息をつき、アーヴィは立ち上がる。
「まぁ良い!」
話をしようとしないヴィトーリアを抱き上げると、扉に耳を付け廊下に人の気配が無いかを確かめ部屋を出る。
人に会ってもスグに身を隠せるよう用心深く、足音を消し足早に階下へと行くとそのまま邸を出る。
抱き上げても目を閉じたままだったヴィトーリアの唇にアーヴィはキスをして、そっと降ろして立たせる。
「こっちに、カステーロを連れてくると言っただろう?」
2人は厩舎の前に立っていた。
「ハッ」
息を呑みヴィトーリアの瞳に光が戻る。
アーヴィは微笑みヴィトーリアの手を握り厩舎内へ連れて行き、一番端の馬房の前で立ち止まる。
耳をピンッと立てて、青毛の馬は知らない人間が来たと警戒している様子だったが…
「カステーロ?」
ヴィトーリアが名前を呼んだ途端、顔を摺り寄せて来た。
おずおずと手を伸ばしカステーロの顔に触れ…
「ああ… カステーロ…!!」
涙を流し、馬の名前を呼びながらヴィトーリアがカステーロの顔や首を撫でる姿を見てアーヴィはホッとする。
「ありがとう… アーヴィ、連れて来てくれて… ありがとう!」
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