侯爵に買われた妻Ωの愛と葛藤

金剛@キット

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34話 ヘメージオ

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 ヴィトーリアは公爵邸の温室内にある長椅子に、人1人分間をあけてヘメージオと共に座っていた。

 この季節だと温室は植物と、植物好きの人間にとっては天国だが、一般的な人間にとっては、少々蒸し暑く不快な場所になっていた。

 招待客たちの姿は何処にも無く、2人っきりで会うには丁度良い場所だった。



「父上が借金を返して欲しいと言っているんだ」

 ヘメージオは前夜のやり取りのせいで、ヴィトーリアを見る目に蔑みの光を宿していた。

「そのお話は私と、叔父様との間で話し合いはついています… 療養中の父に代わり私が返すと…」

 父カルネイロはヴィトーリアの学費を、フェリア―ド家から借りているのだ。


「だからもっと返す金額を増やせと言っているんだ」
 冷淡に言い捨てるヘメージオ。

「そんな…」
 ヘメージオの顔を見てヴィトーリアは寒気がした。 


「どうして急にそんなコト… 叔父様は手紙で、全額返すなら待ってくれると言っていたのに…」


 青い顔で動揺するヴィトーリアに、ヘメージオは薄ら笑いを浮かべる。

「トパーズィオの持参金をなるべく多くしたいからに決まっているだろう?」

「・・・・・・っ!!」

「まぁ、ココに来てからのアイツの言動は酷いから、父上が思うように王都の名門貴族を顔で射止められるとは思わないけど」

「・・・・・・」
 ヴィトーリアは眉間にシワを寄せ、黙り込んでしまう。


「学園を卒業してから僕も領地経営に携わるようになって、使えるお金が出来たから君の借金を肩代わりしてヤッても良いと思っていたんだけどね…」


 義弟の声に嘲笑を読み取り、ヴィトーリアはカッとして睨みつける。


「君が僕の妻になればそういう心配はなくなるわけだし… 昨夜はその話をしようとしたけど、君が聞きたがらないから」
 ヘメージオらしくない、嫌味ったらしい言い方をした。


「妻にはなれないと言ったよね? 叔父様が私を許さないのは分かっているし」

<持参金も無く借金がある私を、お金に厳しい叔父様が受入れるはずがない>


 「だから僕はこの王都で結婚して、2人でフェリア―ド家に帰れば良いと思っていたんだ!! なのに君は… 他の男と遊び回っていたなんて!!」

 落ち着いて話しているように見えた、ヘメージオの目が嫉妬でギラギラと光り、激怒していた。


「遊び回ってなんかない! 私は好きな人に再会したから…っ!」 

 ヴィトーリアの言葉がヘメージオの嫉妬と怒りの炎に油を注ぐ。

 声を荒げて、ヘメージオはヴィトーリアの首にある、真新しいネックガードを掴み乱暴に引き寄せる。


「僕だってずっと好きだった!! 君の側に居たのは僕なのに、なぜ僕を好きにならないんだ!?」

「…痛っ!!」
 ヴィトーリアは強引に引き寄せるヘメージオの肩に手を置き突っ張る。

「何故だ、トーリア?!」

「アナタが義弟だからだよ、ヘメージオ! アナタは今、アルファの本能に翻弄されているダケで、運命の番に出会えば、私のコトなんてどうでもよくなるよ!」

「僕は君が運命の番だと思っている!」

「ヘメージオ… 一番近くにいたオメガがたまたま私だったから、勘違いしているだけだよ」

「君がそう思いたいダケさ… トーリア」

 ヘメージオはネックガードを放す。

 ヴィトーリアは慌てて長椅子の端に寄り、ヘメージオから距離を取った。


「だったら愛人になれよ! あんなに借金があっては、誰にも結婚してもらえないだろう?」

「そんな恥知らずなコトをよく言えるね?!」
 顔を真っ赤にして怒るヴィトーリアをヘメージオはバカにして笑う。


「幼馴染とやらにも遊ばれて、 その高価なネックガードが君の身体の報酬だと気付いてないのか? 社交シーズンが終われば君は必ず捨てられる、目をを覚ませトーリア!」

 ヘメージオは、嫌そうにネックガードを指差して辛辣に諭す。


「違う! …彼は違う!! 借金のコトは知らないし…」

<本当に違う?>
 ヴィトーリアの心の声がつぶやく。


「もう一度、良く考えろ! 今更、僕の妻にする気は失せたが、愛人にならしてやるよ」

「だから…っ!!」

「領地の中に小さな家を用意してやる、君が上手に僕を喜ばせられたら妻に格上げしてやっても良い」

「聞きたくない、ヘメージオ!」


「どうせ、フェリア―ド家ではずっと使用人扱いされていたのだから、愛人の方がマシだろう? 僕はベッドでは優しい男だからね!!」


「アナタからそんな話… 聞きたくない、親友だと思っていたのに…」

 涙を浮かべて拒絶するヴィトーリアの顔を見て、ヘメージオは苦しそうな顔をする。



「トーリア、君が悪いんだ!!」

 ヘメージオは振り切るようにヴィトーリアを置いてその場を去る。






 バタンッと荒々しく、温室の扉を閉める音ダケを残して。







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