侯爵に買われた妻Ωの愛と葛藤

金剛@キット

文字の大きさ
37 / 80

36話 どう生きて行くか

しおりを挟む


 廊下の途中にある大きな鏡の前で、ヴィトーリアは身なりを綺麗に整えてから、音楽室へ静かに入る。


 前日の朗読会が好評だった為、今日も昼から音楽室に椅子を並べて公爵夫人が、おっとりとした暖かな声で昨日の続きを読んでいた。


 一番端に座る大奥様の隣席が丁度空いていたので、静かに席に着く。

 大奥様は、なぜかヴィトーリアの手を、サッと撫でて微笑みながら小さく頷く。


<もう、トパーズィオが私の醜聞を触れ回ったの?!>
 密かに怯えるヴィトーリア。


 ヴィトーリアがほとんど聞いていなかった朗読会が終わると、公爵夫人が大奥様の隣に来て楽し気に、朗読していた本について語り合う。


「話し合いは上手く行きましたか?」
 公爵夫人に尋ねられ、顔が強張るヴィトーリア。

「…はい」


 ヴィトーリアは途方に暮れていた。
<アーヴィの顔が見たい… 今夜くるかなぁ?>
 


「トーリアさん、顔色が悪いけど… 新しい抑制剤が身体に合わないのではなくて?」

 公爵夫人が心配そうに、ヴィトーリアの顔を覗き込む。


 朝までヴィトーリアの部屋にいたアーヴィは、昨日の朝と同様に大奥様を抱き上げて朝食室まで連れて行ってくれたので、公爵夫妻と朝食を摂った時に、ヴィトーリアの抑制剤の話題が出たのだ。

「あ… いいえ、少し強めの抑制剤は、良く効いて調子が良いぐらいです」

<公爵夫人は本当にお優しい人だ… ソレに大奥様も…>

 ヴィトーリアの青ざめてた顔に微笑みが戻る。


 ジッと公爵夫人を見つめ、ヴィトーリアは次に大奥様を見つめる。


<トパーズィオがまた騒ぎを起こすかも知れないと、スグに言わなければ… ご迷惑をお掛けするのは分かっているのだから、特に大奥様には… そして私は付き添い役を辞めるコトになる…>



 ヴィトーリアは、2つ覚悟を決めた。

 1つ目は、自分がふしだらな行為をしたと告白するコト。


「お2人にお話しなければならないコトがあります」





 2つ目は、アーヴィと再会してからあまりにも幸福で、スグに聞けなかったコトを…聞く覚悟だ。


<私をどう思っているのか… アーヴィは私をどうする気なのか… 愛人にするというならソレでも良い、今の私は彼の側に居られるダケで幸運だから…>


 考えたダケで、涙が溢れそうになるのをグッと堪えた。

<愛人もダメなら…?>



 故郷を出る時に父カルネイロが、何度もヴィトーリアに言い聞かせた言葉が、今も心に根付いている。

『耐えるんだ… 私たちはコレからどう生きて行くかを考えなくてはならないのだから、どうしようもないコトに関わっている暇は無い』


<私はコレからどうすれば良い? …まずは父に会いに行こうか? 1年近く顔を見ていない… でも旅費にお金を使うより借金返済に充てた方が良いのかも知れない… やはり弟に会いに行こうか? 去年学園を卒業したから、仕事を紹介してくれるかも知れない>


 


 どう生きて行くかを決める。









しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

仮面の王子と優雅な従者

emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。 平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。 おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。 しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。 これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...