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73話 エスケルダ家の再会
しおりを挟むヴィトーリアは慌てて馬から飛び降りると、駆けだした。
青毛の馬の手綱を2頭分持って、アーヴィは少し離れたところから、満足そうに様子を見る。
「あっ! あああっ!! どうして… ココにいるの?!」
「ヴィトーリア、結婚おめでとう!! 苦労した分、たくさん幸せになるんだぞ」
「お父様!!」
身体を壊してから、痩せてしまった父親の身体を、ヴィトーリアは抱きしめた。
アーヴィに 「お前の土地を見に行こう」 と、誘われてエスケルダ邸に寄ったら、父親の姿を厩舎で見つけ、馬を飛び降りたヴィトーリア。
邸からもう1人、アルファらしいスラリと背の高い、青年が現れヴィトーリアに声を掛ける。
「兄さん!」
「えええ―――っ!! ブリンジ!?」
去年まで学園に在籍していたブリンジとは、タイミングが合わず、手紙のやり取りだけで、何年も会っていなかった。
「あれ? 結婚したからかな? 兄さん綺麗になったね」
「おやおや… ブリンジもやっと私の美しさが分かるようになったの? 大人になったね~!!」
「アハハハハッ! 相変わらずだよなぁ~ 兄さんは!」
子供の頃は母に似ていたが、成長するウチに、父親のカルネイロにソックリの容姿になったブリンジ。
深い紺青色の瞳に、ダークブラウンの髪をした親子3人の、話を邪魔しないように、2頭の馬を引きながら近づくアーヴィ。
「アナタがお父様とブリンジを呼んでくれたの?!」
馬を引くアーヴィに、ギュッと抱き着きヴィトーリアは、涙ぐみながら満面の笑みを浮かべる。
「いい考えだと思ってな、どうせこっちに帰って来るなら、みんなでココで会う方が合理的だろう? …どうだヴィー、またオレのコトが好きになっただろう?」
ぬけぬけと恥ずかしいコトを言って退けるアーヴィにケラケラ笑いながら…
「好き、好き! 大好き!! 愛してるぅ~っ!!」
ヴィトーリアも負けずに大はしゃぎで、父と弟がいる前で…
何の恥じらいも無く、アーヴィの首に掴まりチュウウウ~ッ! と、キスをする。
「コレはコレは… あのヴィトーリアがねぇ…」
可笑しそうに笑う、父カルネイロと、少し恥ずかしそうな弟ブリンジ。
「うわっ…! べた惚れだぁ~ まあ、あんだけ義兄さんが格好イイと、仕方ないか」
ブリンジは、義兄アーヴィの元へ行き馬の手綱を預かる。
ヴィトーリアの父カルネイロとアーヴィは固く握手をする。
「お久しぶりです、お身体の方はよろしいのですか?」
北部で療養中だったカルネイロを心配するアーヴィ。
「ヴィトーリアが結婚したと聞いたら、急に調子が良くなったよ、本当に人間なんて現金なモノだね… ソレと借金のコトだが必ず返すから、どうか待っていて欲しい」
「アレはヴィトーリアの支度金のつもりなので、あまりお気になさらず」
「義理の息子相手にそうは行かないよ、ソレに当てはあるんだ」
カルネイロは厩舎脇の馬場へヴィトーリアとアーヴィを連れて行き…
"当て" を見せた。
「わぁ…綺麗な栗毛の馬だねぇ~」
ヴィトーリアはアーヴィと仲良く手を繋いだまま、馬場で草を食む2頭の仔馬を見る。
「騎士好みではないけど、貴族の奥方好みではなかな? 穏やかな性質で良く言うコトを聞くしね」
「確かに!! 子供が乗馬を覚えるのにポニーの次に選んでも良さそう」
「うん、うん!」
一旦、馬の話を始めると、簡単には終わらない親子である。
「ついでに… オエスチの厩舎の馬と、厩舎を任せている者たちをこちらで預かってもらいたいのですよ 彼らはカステーロに惚れ込んでいるから、きっと気が合いますよ」
カルネイロへの給金や、必要経費は全て、オエスチ侯爵家持ちだ。
「え?」
カルネイロは流石に驚くが…
「ああ、そうか! …私たちはお義母様と一緒に、使用人も連れて王都に移るから」
「ソレは構わないけど…」
父カルネイロは、難無く承諾する。
「もう一つ、お願いしたいことが…」
アーヴィはニヤリと笑い、ヴィトーリアを見る。
「ああ!! 悪戯の見届け人はお父様のコトだったの?!」
「お前… 気付いてなかったのか?」
「うん」
「何だい? 悪戯とは?」
キョトンとする、人の好い父カルネイロに、若夫婦2人はニヤリと笑う。
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