18 / 106
第1章 誓約編
17話 緊急事態 後編
「蘇芳と同じ寮の島田千果です… もっと大事にしてあげて! お願いします」
アーサーが頷くと、島田さんはウルウルと涙ぐむ。
「直輝も帰ってこないし、蘇芳まで誘拐されそうになるし… 本当にどうしよう!」
「島田さん…」
蘇芳もたまらず、涙ぐむ。
「警察から連絡があった… 君たちとも情報を共有した方が良さそうだな」
「本当に!?」
「直輝が黒いバンに乗る姿が監視カメラに残っていたそうだ」
アーサーは蘇芳にスマホを見せると、島田と戸川も蘇芳を囲むように立ち小さな画面を見た。
「本当に直輝だ! この派手な帽子は間違いない、旅行に出た時の服装だし」
「ああもう! 直輝… どこに行ったの? お願いだから無事に帰って来てよ!」
「蘇芳を拉致ろうとした奴らと同じじゃないですか? 画像を警察に見せたけど、ナンバーが泥で汚れていて特定は難しいと…」
「画像があるのか⁈」
戸川の話に流石にアーサーも驚いた。
「ちょうど触ってた時に遭遇して、慌てて撮ったけど…」
スマホををポケットから出し戸川がアーサーに画像見せた。
「泥の付き方が同じだ!」
アーサーの持つ監視カメラの画像と見比べると、同じようにナンバー・プレートが泥で汚れていた。
「あ! 本当だ!! …プレートの右上の角だけ付いてない」
ギルボーン・ハウスの玄関で、蘇芳はアーサーに抱き上げられたまま屋敷内を移動する。
「重たいでしょう? 自分で歩きますから!」
病院からずっとアーサーはこの調子で…
車の中(運転手付き)でも蘇芳は膝の上に抱きかかえられていた。
「コレはコレで凄く恥ずかしいのですが! アナタが僕を守ろうとしてくれるのは嬉しいけど…」
「我慢強いのは分かるが、腹が痛むだろう?」
甘い顔でアーサーに微笑まれて、蘇芳はくらくらする。
「…っ」
<…キスの距離で見るアーサーは本当にゴージャス美男で! 長い睫毛とか… キラキラ輝くブルー・グレーの瞳は覗き込むと、魂取られそうなほど澄んでいて… 何より僕の隙を狙ってキスされるし!>
「蘇芳! 大丈夫かい? 怖かったろう…」
トーマスが迎えてくれ、アーサーに抱えられた僕の腕を撫でて慰めてくれた。
「トーマスさんお世話になります」
<…うう…恥ずかしいよ!>
「可哀そうに… 偉いぞ! さあ部屋へ、アーサーの望み通り隣室を用意したから」
「怖い思いをした後だ… 私が隣にいれば寂しくないだろう?」
トーマスの前でも気にせず、アーサーは蘇芳の額にキスを落とした。
「うう… はい…」
恥かしいと気にしているのは蘇芳だけで、トーマスも気にせず2人の様子を見ていた。
「お父さん、この家の警備装置を明日、最新モデルに変更します」
腕に蘇芳を抱いたまま移動し、隣を歩くトーマスに連絡事項をアーサーは淡々と報告する。
「廊下や共用スペースに防犯カメラを設置するヤツだな、非常時に作動するとかなんとか」
「はい… 蘇芳、日本の警備会社の物だ」
「へえ~っ」
何と答えて良いのか分からず、蘇芳は適当に相槌を打つ。
「それと蘇芳にボディーガードも手配しました」
「ボッ…ボディーガード⁈」
コレには流石に蘇芳も驚いた。
「当然だな、これだけ危険な目に遭ったのだから」
トーマスも大きく頷き、アーサーの考えに同意した。
「で、でも…!」
蘇芳だけが動揺し、慌てている
「蘇芳、私に任せなさい」
アーサーは再び蘇芳の額にキスを落とした。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。