英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第1章 誓約編

41話 愛人契約

  ギルボーン・ハウスの居間でアフタヌーンティーを楽しむ一同。
 
 生クリームやジャムを添えたスコーンに、色とりどりの宝石のようなケーキ、卵やハム、キュウリを挟んだ美味しそうなサンドイッチがテーブルの上に山盛りにして並べてある。
 
 揃ったメンバーが全員男性だから、当然通常より多めに用意してあるのだ。

 お茶が冷めないうちにと、当主のトーマスにすすめられ、雑談をしながらモリモリと皆で平らげられてゆく。

 そんな中で、ロジャーが本日3何度目の、謝罪の言葉を口に出した。

「本当に悪かった蘇芳… 僕の父がしたことは、とても卑怯卑怯で… 簡単に許されることではないよ!」

「いいぞ、いいぞ、ちゃんと蘇芳に謝れウジ虫野郎~!!」

 辛辣しんらつな直輝の口調に、一同は仕方ないねと苦笑いする。


「直輝も悪かった! オレの態度は最悪だった… 本気で思っていたわけじゃないんだ! 大学にゲイの友達もいるし」

 ただ、ひたすらロジャーは蘇芳と直輝に平謝りした。


「もういいよ、悪いのは犯人だし… ロジャーも被害者でしょう?」

 数日前の蘇芳と同じく、ロジャーの顔はあざとすり傷だらけだで、大学も休んだらしい。


「ああ、そうだ… 直輝の復讐は、蘇芳がヤリげたぞ」

 タイラーがのんびりと口を挟む。


「蘇芳が?!」

 その場にいた、5対の目が一斉に蘇芳を見つめた。

 たじろぐ蘇芳の代わりに、アーサーが話を進める。


「デビット・ウォーカーこと、ボリス・ブルシーロフはギャンブルにのめり込み、金に困っていた… だが、ロジャー親子がギルボーン家の縁者と知り、恩を売り、金をむしり取るつもりだった」

「父の同僚です… その人が主犯ですよね? オレがトーマスさんに上手く取り入れるように、蘇芳を排除しようとしたのが犯行の動機らしい」

 ロジャーが再び話に加わった。

「そうだ! その計画が成功したら、今度はそれをネタに脅迫しロジャーの父親から金をむしり取るつもりだったようだ」

「でもオレは、蘇芳たちの誘拐騒ぎを知っていたから、警察に保護されてすぐ、犯人たちの伝言をアーサーにも伝えたんです」

「いい判断をしたなロジャー、何も知らない間抜けな奴らは、りずに蘇芳を再び襲って、そしてボリスは蘇芳に見事、去勢されたというワケさ!」

「去勢というと…その…」

 ロジャーは痛そうな顔をする。

「蘇芳の後ろ蹴りが決まって、睾丸こうがんが二つとも潰れたのさ」

「さすが空手歴10年、見事だった!」

 貴重で珍しい、満面の笑みを見せるタイラーに赤くなる蘇芳。


「ヨッシャー! いいぞ蘇芳、ボリス何とかめ! いい気味だ!」

 ガッツポーズの直輝。


「これで心配の種だった、誘拐騒ぎは終結したか… 寂しくなるなぁ…」

 しみじみとトーマスががこぼす。


「何ならバニーを呼び戻しますか?」

 アーサーにケロリと言われトーマスがが赤くなる。


「ダルトンに悪いから、ソレは止めておこう」

 アーサーとタイラーはニヤリと笑う。


「直輝も蘇芳と一緒に泊まりで遊びにおいで、もちろんロジャーもだ!」

「それならディナー・パーティの招待状を送る手間が無くなりますねお父さん」

 ロジャーが涙ぐむ。


「そうだ… トーマスさん! この屋敷中、いろんな逸話いつわがあると蘇芳に聞きました! 今度はオレにも教えてください!」

「フフフッ… 大歓迎だよ直輝!」



 話が大方終わったところでタイラーが立ち上がる。

「私はそろそろ、失礼します」

 アーサーも一緒に立ち上がり、タイラーと握手する。

「タイラー、世話になったな! また、何かあったらまた頼む」

 アーサーに続き他の4人も順番にタイラーと握手をした。

「ありがとうございます、タイラー」

「本当に寂しくなるよ」

「とても心強かったです」

「タイラーまたね! 多分… すぐに会うことになりそうだけど?」

 直輝は握手しながら、蘇芳とアーサーをチラリ見る。


「君たちの為に、そうならない事を願うが… それだと私は稼げないしな」

 ニコヤカにタイラーは笑った。


「さてと… 学生諸君、送ってゆこう! ロジャーは駅へ、直輝は寮に、蘇芳は私と夜会だ!」

 先にステファノのサロンで、蘇芳は夜会の準備をするコトになっている。

 直輝が戻り、誘拐騒ぎが解決したコトをゼフィロスの会員たちに報告するためだ。


「夜会とは何ですか?」

 うらやましそうにロジャーがたずねた。

 ロジャーが蘇芳とアーサーの関係に過敏な反応をしたのは、アーサーを尊敬し憧れているからだった。(恋愛感情は無い)

 蘇芳に抜け駆けされたと思い、ロジャーは嫉妬したのだ。


「素晴らしい友人たちと、語り合うパーティさ」

「ゴシップキングが最近静かすぎて、ついに結婚かと社交界ではウワサされているぞ?」

 トーマスが楽しそうに息子を揶揄からかう。


「"合理的広報活動"は、最近過熱気味なので、社交面はしばらく地味に行こうと思いまして」

「まあいい、夜会なんぞ嫌なら断って良いんだよ蘇芳… アーサーの我儘わがままに付き合う必要は無いんだから」

「僕も楽しんでますから… トーマスさん、大丈夫ですよ」

「うむ… ソレなら大いに楽しんでおいで」

 ニコリと微笑み合うトーマスと蘇芳。



 荷物を取りに、直輝とロジャーが部屋に戻る。

 蘇芳は日本に帰ると大騒ぎした時に、全部寮に持ち帰りそのままだ。

 今夜もアーサーの部屋に泊まる予定である。




 玄関ロビーで直輝とロジャーを待ちながら…

「あの時は… "愛人になれ" だなんて、アナタはどうかしてると思ったけど… 今は幸運だったと思っています」

「そうなのか? だったら契約書でも作るか」

 面白そうにアーサーは蘇芳を見下ろした。


「良いですね、ソレ! アナタの気分次第で、僕は捨てられなくて済むし」

 蘇芳の言葉にアーサーは瞠目どうもくする。


「なら納得いくまで、しっかりと内容を詰めなくてはな」

「絶対ですよ? アーサー!」

「ああ… 契約書はビジネスマンの基本だ、誓うよ」

「僕はアナタのようになりたい、だから愛人の立場を足掛かりにアナタの弟子になりたいです!」

 頬を赤らめ、我ながら大胆だと思いつつ、蘇芳はアーサーに思い切って告白した。


「大した野望だ! さすが私の愛人だ」

 密かにアーサーは感動し、ニヤリと笑い蘇芳を抱きしめる。


「良いだろう、その項目も契約書に入れよう」

「あと… 浮気はしないと入れてください」

「お互い、当然だ!」

「ただし"合理的広報活動" は別だ」

「ゴシップ・キングのお仕事ですか?」

「アレで会社の株が上がるんだ… 誓ってエスコートした彼女たちから、ベッドでご褒美を受け取ったことは無い」

「ええええ~? ウソだぁ~っ!」

 即否定する蘇芳に、アーサーは顔をしかめた。


「下手に受け取ると、後が面倒なんだ… ストーカーにでもなられたら嫌だろう?」

「そ… それは怖いですね…」

「だから契約に、君からのご褒美を受け取る権利についての項目を入れよう」

「僕はストーカーにはならないと思うけど?」

「いや‥ ご褒美をもらえないと、私がストーカーになりそうだからだ!」

「////////」
 耳まで真っ赤に染まった蘇芳の唇をアーサーが奪う。

 玄関ロビーの真ん中で、軽くついばむようなキスから始まり、ベッドで交わす愛撫混じりのキスへ変化する。


「うわわわっ―――っ!!!」

 直輝の慌てた声が、玄関ロビーに響き、蘇芳はビクリッと固まると…
 アーサーの唇が、名残惜しそうにがゆっくり離れた。


「邪魔をするな直輝! イイところだっだのに」

 口も利けないほど、蘇芳は羞恥しゅうちで真っ赤になり、アーサーにギュウギュウ抱きしめられる。

「うわっ! うわっ! またオレを牽制けんせいしてる! どんだけ独占欲強いんだよ! 大人げない! 誰か助けて~っ! ココにイケナイ大人がいる~! 早く捕まえて~っ! 純粋な美青年を丸め込んでエロいことしてる~っ! エロ貴族がいます~!」

 機関銃のようにとんでもないコトを次々叫ぶ直輝。

 本当のコトだけに、さすがのアーサーは反論ん出来ずに頬をうっすら染める。

 直輝の叫び声を聞き、書斎から出て来たトーマスと、荷物を持って階段を降りて来たロジャーは、キスでれた蘇芳の唇を見て苦笑を浮かべた。


「仲が良いのは結構だが、場所を選びなさいアーサー」

 まるでティーンエイジャーを相手にするように父からさとされ、アーサーは増々頬が赤く染まる。
 
 ドラゴン直輝恐るべし。

 蘇芳が尊敬するだけのコトはある。



「…人前では、しないと、契約に追加して下さい」

 アーサーにしか聞こえない、小さな声で囁く蘇芳。



 この時、アーサーは頭に浮かんだ言葉を口に出すことを止めた。


 "契り" の儀式が今週末に決まった。

<…蘇芳、忘れてないか? ”契り"はゼフィロスの会員たちに自分たちをお披露目する為に、裸をさらしセックスを見せるんだぞ?>



 アーサーは苦笑いを浮かべた。



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