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22話 再会3 エスパーダside
しおりを挟む竜血に導かれて出会い、紅玉色の瞳に心をひかれ、話してみたいと思ったのは本当だが…。
学園長から連絡を受け、急いでアルセに会いに来たのは、エスパーダに別の目的があったからである。
エスパーダはグラーシア公爵家が抱える秘密の闇に、逃げ場のないアルセを、取り込もうとしているのだ。
「・・・・・・」
傷つき裏切られたばかりのアルセに、私は付け込もうとしている… それが、卑劣で恥かしい行為だとわかっている。
だが… この機会をのがせば、自分の望みをかなえることは出来ないと、覚悟を決めた。
「今の状況を変えられる?! それは、どうすれば良いのですか?!」
「・・・っ」
大きな期待がこもった瞳でアルセに見あげられ、思わずエスパーダは視線をそらしたくなったが… 瞳を閉じて深呼吸を一度して耐えた。
「やはり… 難しいことなのですか?」
「ここでは話せない… 場所を変えよう」
エスパーダは足を上げて、石床に転がしたジャベを解放した。
「ううっ… クソッ… クソッ… クソッ…」
罵りながら… ずりずりとトカゲのようにはいずり、ジャベはエスパーダの側から離れると、よろよろと振り返りもせずに立ち去る。
「・・・っ」
悔しそうにグッ… と拳をにぎりしめて、アルセは黙ってジャベがその場を去るのを見送る。
オメガにしてはすらりと背が高い、アルセの優雅な後ろ姿は、エスパーダの瞳にはさびしげにうつった。
「行こう…!」
「はい、あの… あなたは何方ですか? 先日も助けていただいたのに、お名前を聞きのがしてしまって…」
おずおずとたずねるアルセに、エスパーダは苦笑した。
「そうか! まだ、名のっていなかったか…? 私はエスパーダ、グラーシア公爵だ」
怖がられるだろうか? 王都でこの名前を告げると、ほとんどのオメガは、怯えて逃げ出してしまうから…
「え?! あの、グラーシア公爵閣下ですか?! 建国神話に出て来る?」
「私の先祖は出ているが、私自身ではないけどな」
ああ、その強過ぎる竜血で、狂戦士のアルファを産み出す家系の、グラーシア公爵家だよ…!
「ああ、なるほど…! ハハハッ… そんな人だからかなぁ?」
気が抜けたらしく、力なく笑うと… なぜかアルセはエスパーダの背後をジッ… と見つめていた。
「ハハハッ……」
疲れた顔をしているが、先日のように怯えてはいないようだ…?
さすがにここで、怖がって気絶されるのは辛いからな……
エスパーダも力なく笑った。
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