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39話 襲撃3 ※流血注意
しおりを挟むエスパーダが馬車から飛び出して行ってからすぐに… 馬車の外で大きなさけび声が聞こえた。
アルセはビクビクッ…! と怯え震えながらもエスパーダが心配で、手の中の剣をにぎりしめ、窓の外をそっとのぞき見ると……
襲撃犯の馬が邪魔で、よく見えなかったが… 地面に転がる男がとどめを刺されたのがわかり、アルセの心臓が恐怖で破裂しそうになる。
「あああっ! やだよっ…! そんなっ…?!」
…エスパーダ様?! あれは、エスパーダ様なの?!
アルセは思わず、小さなさけび声をあげた。
主人を殺され動揺した馬が、怯えてその場から駆け出して、視界をさえぎるものが無くなると… エスパーダが剣を振りながら立っているのが見え、アルセはホッ… と胸をなでおろす。
…だが、その時、異変が起きた。
アルセの前で白銀のモヤモヤが何倍にも大きくなり、エスパーダを取り込むように包むのが視えたのだ。
アルセがホッ… とできたのは、ほんの少しの間だけで、すぐに次の襲撃犯があらわれ、背後からエスパーダに襲いかかる。
同じ人間とは思えない、獣のような速さで反応したエスパーダは、襲撃犯の剣ごと肉と骨を切り裂き… たったの一振りで相手に致命傷をあたえた。
「・・・っ?!」
すごい! 剣ごと人を切るなんて…?! 相手の剣がオモチャみたいだった?! 剣を折っただけでも、すごいのに… その一振りで、人まで……?! “剣の達人” …なんてレベルじゃない! もっとそれ以上だ!!
目の前で起きた戦いに、アルセは息をのむ。
血を噴きながら地面に転がる襲撃犯に、エスパーダの手が伸び… エスパーダを包んだ、白銀のモヤモヤの輝きが増す。
「・・・っ?!」
あれは…… 何が起きているの?! エスパーダ様は… 何をしているの?!
不意にエスパーダが顔をあげ、あたりを見回した。
いつも白銀のモヤモヤがアルセを睨む時のように… エスパーダの金色の瞳が、獣の眼のようにギラギラと光って視える。 アルセの背筋がゾクリッ… と寒気がした。
「うっ……!」
白銀のモヤモヤが、ニヤニヤと笑っているのが視える! エスパーダ様?!
その後も、肉食獣が獲物を狩るように、エスパーダは常人離れした速さで走り、護衛騎士たちと戦う襲撃犯を、すさまじい力で次々と切り裂き… エスパーダはあっという間に、襲撃犯たちを倒してしまった。
地面にごろごろと転がり、人間から肉の塊になりつつある者たちに、エスパーダは順番に触れてゆく。
転がった襲撃犯たちにエスパーダが触れるたび… 白銀のモヤモヤの輝きは増し、半透明の霧のようにただよっていたモノに、はっきりとした形ができて、存在感が出る。
「ああ……!」
“狂戦士” ……とは、エスパーダ様のことではなくて、本当は… 僕にだけ視える、あの白銀のモヤモヤのことなのかなぁ? そういうことなの?
形がはっきりとした白銀のモヤモヤは… まるで地をはうトカゲのような形をしていた。
気になるのは、白銀のトカゲらしきモノの半身が、アルセの目にはエスパーダと完全に同化しているように視えることだ。
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