81 / 114
79話 コルティナ侯爵邸2 ※流血注意
しおりを挟む自分の手で、指を2,3本引きちぎると、エスパーダはジャベたちに言ったが… 結局は時間を短縮するために、メサとノチェの腕を手首から剣で切り落とした。
もちろん利き腕の右手をエスパーダは選んだ。
「ひぃ…っ うううっ… ううっ 痛いっよぉ… 助けてくれ…ジャベ…!」
「ジャベ… ジャベ… ぐうっ… オレの腕がぁ… 腕がぁ……」
「ああ… あんた、狂っているよ?! いくら、公… 公爵でも… コルティナ侯爵家で… こんなことするなんて?!」
ジャベの部屋の絨毯を、血だらけにしてのたうち回り… 痛みにうめき、涙で顔をグチャグチャにして泣く、2人の悪友たちを見下ろし… ジャベはガタガタと震えていた。
「腕は2本、足も2本ある… この2人からはあと、3本ずつ取れるという訳だが? どうするジャベ?! そろそろアルセの居場所を、言う気になったか?!」
エスパーダはジャベの前で、自分の腰にさした剣の柄を、トンッ… トンッ… とたたき、カチャッ! カチャッ! と冷たい金属音を室内に響かせる。
「ああっ… そ… それは……!」
「お前は薄情なやつだな? この2人はお前の友人ではなかったのか?!」
「で… でも、話したら… 父上に殺される! 本当に怖い人なんだ! 父… 父上は…!」
「そうか? なら今度はお前の腕を切り落とすか… 薄情なお前は、どうやら友人の腕や足が全部無くなっても、ぜんぜん気にしないようだからな?」
意外と強情だな… このゲス野郎は? それほど父親のコルティナ侯爵を、恐れているということだが?!
エスパーダは鞘から剣を抜いた。
「さっきも言った…! 知らないんだ! 本当にオレは…」
ジャベは少しでもエスパーダから離れようと、じわじわと後ずさるが… エスパーダは1歩… 2歩… と前に進み、ジャベを追いつめる。
「仕方ない…」
こいつにアルセの居場所まで、案内させるつもりだったが… 腕を落とすと、手当てをしなければならないから、面倒なんだが……
「ひいっ…?!!」
その場から逃げ出そうと、ジャベが身体の向きを変えた一瞬で… エスパーダはちょうど良い位置にあった、ジャベの耳を切り落とした。
「ギャア―――ッ…!! ううっ…?! ぐうっ痛いっ…! 痛いっ…! 痛いっ…!!」
失くした耳があった場所をおさえて、ジャベが泣きさけぶ。
「もう片方の耳が重たそうだな? そっちも落とすか?」
「止めて… 止めて…下さいっ…!」
「アルセはどこにいる! 私の“番”をどこへやった?!」
「わかりません!! だ… だけど、父上が… いつも気に入ったオメガを誘拐して連れて行く… 別邸が王都のはずれにあります… オレはそこしか知らない!」
「そこまで、私たちを案内しろ!」
「ううっ… は… はい…!」
エスパーダの護衛騎士たちが、ジャベの寝室へ行きベットのシーツをはいで、手ぎわ良く切り裂き包帯を作ると、腕を切り落とされたメサとノチェの腕を、かたくしばり止血する。
「おやおや… これはまた、派手にやったね?!」
のんびりとエスパーダの背中に声をかけて、王弟殿下がやって来た。
「これは王弟殿下… お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありません! 少し急いでいたので」
それまでの威圧的な態度を引っ込めて、エスパーダは胸に手をあて、礼儀正しく王弟殿下に頭を下げた。
「それで?」
「はい殿下、この者らがアルセを学園から誘拐したのは、間違いありません! 本人たちも自白しました」
「そうか… なら、腕や耳だけでは足りないなぁ… よく我慢出来たね、エスパーダ?」
「はい、アルセを見つけるまでは… ですが」
エスパーダはニヤリと笑った。
エスパーダが由緒正しきグラーシア公爵でも… 単独でコルティナ侯爵家にケンカを売り、後でコルティナ侯爵に真実を曲げられでもすれば、エスパーダが私的な理由で、嫌がらせをして秩序をみだしたと取られかねない。
そこで第3者の、王国でもっとも強力な権力を持つ王族を巻き込み… コルティナ侯爵がおかした、犯罪行為の証人となってもらうことで、エスパーダがしていることに、正当性があることを王国法で証明できる。
ついでに、王妃の生家となり最近急激に力をつけ始め、コルティナ侯爵家の傲慢な態度に困っていた王家に、エスパーダは恩を売るつもりだった。
この件を上手くかたずければ、コルティナ侯爵を失脚させられる理由になるからだ。
48
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる