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102話 再会して、感動して、混乱して…
しおりを挟むガチャッ…! 扉が開いた瞬間…
「・・・っ?!」
アルセは椅子から立ちあがり、涙で潤んだ紅玉色の瞳を見開いた。
扉を開いた従姉マンサナのわきをすり抜け、大柄な体格とは思えないすばやさで、エスパーダはぼうぜんと立ちすくむアルセの前まで来る。
「アルセ…!」
抱きしめようとエスパーダは長い腕をのばすが… 大きくなったアルセのお腹に気がついて、ほんの少し躊躇いながら、そっと優しく抱きしめた。
広い胸に抱き込まれ… 我慢していた涙が、アルセの瞳からふたたび流れ落ちる。
「うっ……」
「アルセ! むかえに来るのが遅くなって、すまなかった!」
「エ… エスパーダ様ぁ…?!」
ああ、エスパーダ様だ! エスパーダ様がいる?! 僕のエスパーダ様が……! 来てくれた… 本当にエスパーダ様が来てくれた… 寂しかったぁ… すごく辛かったよぉ…! 会いたかった…! ずっと会いたかった……!!
「隣国からの襲撃が、急激に増えたせいで… グラーシア城にもどることになって、すぐに来れなかったんだ!」
「エスパーダ様ぁ…! ううっ… んっ……」
密かに震えるエスパーダの大きな身体に、アルセは腕を回してしがみつく。
「不安だっただろう?! 1人で行かせて… 悪かった! 私のせいで… 悩ませてしまって、悪かった! ずっとそばにいるから… アルセ、もうどこにも行かないでくれ! …アルセ!」
顔を真っ赤にして涙をこぼす、アルセの耳元でエスパーダは囁き声で、謝り続ける。
「エスパーダ様…!」
「帰ろう、アルセ… 一緒にグラーシア城へ…!」
「ううっ… エスパー……」
アルセとエスパーダが感動の再会をはたし、震えながらお互いを抱擁しているその背後で…
「キャアアアアアァァァァァ――――ッ?!!!」
従姉のマンサナが大声で、悲鳴をあげた。
ギョッ… とアルセとエスパーダが、振り向くと… マンサナが青い顔で、アルセに助けを求めて来た。
「何… 何とかして! この白銀ト… トカゲ……!!」
エスパーダの背中からのびたティエーラの竜が、マンサナの身体に巻きついていた。
「ええええっ?!!」
何でティエーラの竜が、マンサナに抱きついているの?!
「何? え?! “飢えてるから魔リョクよこせ”?! 魔リョク? 何よそれ?! はぁ?! 私の“魔リョクが極上”?! 何なのよ、このトカゲは?!」
マンサナはティエーラの竜に向かって、怒鳴っている。
「あれ? もしかして… マンサナは、ティエーラの竜と話せるの?!」
「話せる…って… こいつ、私の話を聞こうとしないけど?! とにかく、何か言っているわよ?!」
「わぁ…?!! 僕は夢のなかでしか、ティエーラの竜と話せないけど… マンサナは、目がさめてても話せるの?!」
「だからアルセ! こいつ、私の言うこと聞かないんだってば! これで話せると言える?!」
マンサナはキッ… とアルセをにらんだ。
「ああ… そのティエーラの竜っ… ていつも、そんな感じなんだよね…」
アルセはため息をつく。
「アルセ… ティエーラの竜と話すとは……?」
エスパーダが眉間にしわを寄せて、アルセにたずねた。
「ああ… ええとぉ… ですね?」
そうだった! エスパーダ様には、僕がティエーラの竜を視ることができて、夢の中で話を何度かしたことも、話していなかった!
エスパーダにどう説明しようか、アルセが迷っていると… 横から痺れを切らした祖父が、イライラと口を挟んだ。
「おい! そこのアルセの“番”!! 子供が産まれる前に、さっさと婚姻の儀をおこなえ!! 結婚するまで、アルセをこの邸から、連れ出すことは許さないからな?!」
「やっ… その前にアルセ! この白銀トカゲ何とかしてぇ!」
「アルセ… 白銀トカゲ…とは?」
「あああああ―――…」
室内にいる人たち全員が、バラバラに話を始め… アルセは何を最初に話し合えば良いのか、わからなくなった。
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