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110話 花嫁の飾り2
しおりを挟むアルセの両方の手首につけた腕輪、両足につけた足輪、首飾り、額飾り… “花嫁の飾り”それぞれにはめ込まれた紅玉がいっせいに輝きを放ち始める。
手首の金で作られたバングルに、びっしりと刻まれた魔法文字が紅玉色に輝き、フワリと宙に浮かび… 次の瞬間アルセのまわりをグルグルと渦を巻いて回る。
「・・・・・・」
いったい… 何がおきているの?! これは… もしかして魔法?! まるで建国神話に出て来た、英雄たちが使っていたという… 魔法のようだけど…?!!
息をのみ、自分のまわりを飛びまわる輝く魔法文字に、アルセが夢中になっていると… エスパーダは、そっとアルセを解放して離れた。
ぼうぜんと見ていると…
アルセのまわりに浮いて回っていた、輝く魔法文字がスルスルとアルセのお腹に吸い込まれてゆく。
「ひゃああ―――っ…?!!!!」
わわわわわわ?! 何っ?! 何っ?! 何っ?!!
魔法文字がすべて、アルセのお腹に吸い込まれると… “花嫁の飾り”にはめ込まれた紅玉は、何も無かったかのように、輝きは消え元の姿にもどる。
「・・・っ」
今… 何が起きたの?!
「・・・・・・」
アルセとマンサナは、ぼうぜんと顔を見合せたあと… そばに立っていたエスパーダを見つめると…
ティエーラの竜の金の眼が、満足そうに笑っていた。
「お前… 何をしたんだよ?!」
アルセはティエーラの竜にたずねたが…
「わからない… 今のは何だ?!」
アルセの疑問に、ティエーラの竜の支配から解放された、エスパーダ自身が答えると… ティエーラの竜と話ができるマンサナが、困惑の声をあげる。
「はぁ?! “魔リョクが強い子供が産まれるようにする魔法”?! 何よそれ?」
「…魔法?! 今の輝きは魔法なのか?!」
魔リョクが弱いエスパーダには、紅玉が強い光を放ったのは視えたが… アルセやマンサナのように、浮遊する魔法文字は視えなかった。
「やっぱり……」
アルセとエスパーダが驚愕していると… ムスッ… としたマンサナが、ティエーラの竜の言葉を2人にも伝える。
「“魔石に魔リョクが足りなくて、魔法が消えかけていた” ですって…! それで、私から吸い取った魔リョクを使って… “魔石に魔リョクをためた” …と白銀トカゲが言っているわ! ……何よそれ?! そういう話は先にしてよね?!!」
魔法が廃れた今では、魔法文字を解読出来る者もいなくなった。
そんな新しい時代まで残った、古い時代の遺物である“花嫁の飾り”は… 本当の使い方まで忘れさられてしまい、子孫繁栄を祈願するための、おまじないの道具として使われていた。
魔リョクが強い紅玉色の瞳を持つオメガが、ディグニダド伯爵家にだけ生まれる理由が、ここにあった。
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