2 / 86
1話 プロローグ
しおりを挟む北の大陸で一番大きな国、ウタラ王国には興味深い建国神話がある。
かつて西の大陸を支配する、昼の王の体内に囚われていた、夜の神マラムを救うために… 紅の女神メラハは、10日間だけ昼の王と契りを結び、囚われていた、夜の神マラムを救い出した。
「夜の神マラムと、紅の女神メラハは北の大地で結婚し、生まれた子が、このウタラ王国の建国神話に出てくる、700年前の初代女王ビンタンと言われてるのよ」
幼い息子カチャンの赤みがかった茶色の髪をなで、アイルは建国神話を語って聞かせた。
ウタラ王国で生まれた女性なら、自分の子供に必ず聞かせるおとぎ話だ。
「ふう~ん…」
カチャンはアイルの膝の上で、足をぶらぶらさせ、思慮深そうにうなずくが…
「ね? 面白いお話でしょう?」
かがみこんでカチャンの柔らかな頬を、アイルは指先でツンツン… とつついてみる。
「お母しゃま、わかんない!」
ぷぷううう~とカチャンは、頬を膨らませる。
「ふふふふっ… カチャンには少し早かったかしら?」
小さな体をアイルがギュッと抱きしめると… 甲高いさけび声を上げ、カチャンは嬉しそうにケラケラ笑う。
ウタラ王国北東部
隣国ティムルとの国境付近で、大量発生した魔獣を撃退するために、国中から集められた騎士たちが、血みどろになりながら戦っていた。
「ひいいいっ!! 来るなあああ―――っ!! 来るなあああ―――っ!! ひいいいっ!!!」
人を好んで食う、大きなコウモリの翼を背中にはやし、獅子の身体に人の顔をしたマンティコアに襲われ、若い騎士は恐慌状態に陥り、剣を振り回し意味の無い攻撃で、無駄に魔法をまき散らしていた。
未熟な若い騎士を救おうと、パナス・ダラムは魔獣マンティコアとの間に割って入り、大剣を振り下ろし魔獣の首に切りつける。
「今のうちに、後方へ下がれマニス! 足手まといだ!!」
「ああっ!! ひいいいっ!!」
若い騎士は無様に怯えて転び、魔獣と人の血で汚れた大地をズルズルとはいずる。
「さっさと行かぬか!! バカ者――――――!! グウッ…!!」
首を半分切られた魔獣マンティコアが、死にぎわの足掻きで、尻尾の先端の太く鋭い剣のような毒針を飛ばし、パナスダラムの漆黒の鎧をつらぬき、胸を刺したのだ。
マンティコアに止めを刺し、パナス・ダラムは大地に片膝を付く。
「クソッ…!!」
「パナス・ダラム様!!」
近くにいた騎士があわてて走り寄る。
「まだ戦える!! 私にかまわず、魔獣の撃退に集中しろ―――っ!!」
辛うじて剣をぶつけ尻尾の軌道を変え、致命傷にはならなかったが、毒針の先から放たれた、呪いの毒がパナス・ダラムの身体を蝕み始めていた。
強い魔力と王族の象徴である、パナス・ダラムの紅い髪と深紅の瞳が、急激に黒く黒く濁り…淀みだす…
「クウウ―――ッ…!!」
それでも苦痛に耐え、大剣をかまえると…
偉大なる騎士、パナス・ダラムは立ち上がり勇敢に戦い続けた。
11
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】
日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。
敵将を捕虜にしたら夫になって、気づけば家族までできていました
蜂蜜あやね
恋愛
戦場で幾度も刃を交えてきた二人――
“赤い鷲”の女将軍イサナと、
“青狼”と恐れられたザンザの将軍ソウガ。
最後の戦いで、ソウガはイサナの軍に捕らえられる。
死を覚悟したその瞬間――
イサナは思わず、矢面に立っていた。
「その者は殺させない。命は……私が引き受けます」
理由などなかった。
ただ、目の前の男を失いたくなかった。
その報告を受けた皇帝エンジュは、
静かに、しかし飄々とした口調で告げる。
「庇いたいというのなら――夫として下げ渡そう」
「ただし、子を成すこと。それが条件だ」
敵国の将を“夫”として迎えるという前代未聞の処置。
拒否権はない。
こうしてソウガは、捕虜でありながら
《イサナの夫》としてアマツキ邸に下げ渡される。
武でも策でも互角に戦ってきた男が、
今は同じ屋根の下にいる。
捕虜として――そして夫として。
反発から始まった奇妙な同居生活。
だが、戦場では知り得なかった互いの素顔と静かな温度が、
じわじわと二人の距離を変えていく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる