呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

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15話 生きる喜び

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 アイルはむしゃむしゃと、夢中で食事を口に入れるパダムを見ていて…


「パダム様… もっと、たくさん食べますか?」

「食べる!!」

 スグにパダムの返事が返って来た。


「もう1人分、持って来ますね… お待ちください!」

 アイルは慌てて、地下の台所へ、食事のお代わりを取りに戻ったが…

 
 ふと、アイルは食事の後で、パダムと話し合う必要があると思い出し、先に邸の裏にある洗濯場へ行く。



 今日の旦那様はとても調子が良く、たくさん食事が要りそうだとエナックに伝え、もう少しカチャンを預かってもらえるよう、アイルが頼むと…


 エナックはニコニコと笑いながら、カチャンの頭を撫でた。

「ええ! こんなにお行儀の良いお坊ちゃまは初めてですよ! カチャン坊ちゃまは、私にお任せ下さい」


 カチャンは元々、人懐っこい子だから、初対面では人見知りをするが、すぐに誰にでも可愛がられる様になるのだ。
 
 アイルと違い、そういう気質は亡くなった妹にソックリだ。


「ありがとうエナック、助かります」

 カチャンも嬉しそうに甲高い叫び声を上げ、エナックに懐いている様子だ。
 
 大叔母様が亡くなってから、カチャンはションボリしているコトが多かったから、アイルは少しだけホッとした。


「そうそう、奥様! ワインもありますから、よろしければ旦那様にお食事と一緒に、お持ちになってはどうですか?」

 洗濯場をケラケラと笑いながら、走り回るカチャンを目で追いながら、エナックは気を利かせて教えてくれた。


「まぁ、ワインもあるのですか?!」

「はい、オバット伯爵様が王都から、1樽ダケ運び込んだのです」 

「…お兄様が?」


 美味しい、美味しいと涙ぐみながら、食べるパダムの顔を思い出し、アイルは自然と笑みが零れる。

 確かに殿方なら、食事の時は、牛乳よりもワインを好まれるものだと納得し、有難くエナックの助言を受入れた。

 なんせ、女性と違い殿方は、昼間でも、水代わりにワインを飲んでしまうからだ。


 ワインの貯蔵場所をエナックに教えてもらい、樽から多めに取り出すと、半分は台所へ置き、残りをパダムの元へ食事と共に運んだ。



 アイルがパダムの部屋の扉を叩くと…

 パダムは待ってましたと、言わんばかりに扉を開き、ニコニコと笑う。


「来た来た! …おお、ワインまであるぞ!? なんて気が利くんだ君は!!」

 掌をゴシゴシと擦り合わせて、子供のように燥ぐパダム。


「ふふふっ… エナックが勧めてくれたのです、コレはお兄様が、持ち込んだそうですよ… なので残念ながら、私の手柄ではありません」



 2度ほどパダムの部屋を訪れ、何度か扉を叩いたが、初めて部屋の主から応答があったのだと… 

 ほんの少し、アイルは感慨深い気持ちになる。

 昨夜の魔獣になりかけていたパダムを思うと、雲泥の差だ。



 自分は人の役に立っているのだと、アイルは何年か振りに実感が湧いた。


 愛する両親を失い、魔力を失い、将来の夢を失い、妹を失い、婚約者を失い、兄の信頼を失い、生きる希望も意味も失いかけ…


 カチャンを育てるコトで、アイルはどうにか自分を生かしてきた。


<パダム様を綺麗に浄化できるのは私だけ! もっともっと、パダム様が笑っていられるように、私が頑張らなければ!!>


 
 パダムはアイルから純潔を奪ったが…


 とても大切なモノを、パダムに貰った。
 
 けして一方的なアイルの献身では無い。



 パダムはアイルに、生きる喜びを思い出させたのだ。









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