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28話 クラン公爵家2 クラン公爵side
しおりを挟む公爵家の威厳ある応接間で、クラン公爵は、オバット伯爵家の私生児を見つめているうちに…
数年前、長男マニスと交わした会話を思い出していた。
公爵が魔獣の被害で年々減る、領地からの収益について頭を抱えている時に、2人きりで大切な話がしたいと、面談を求めて来た長男マニスを、仕事中の書斎へと通した。
「なんだと? 婚約者をアイルから、妹のミニャックに変えたいだと?!」
長男マニスは、クラン公爵家の後継者にしては、母親に似て少々浅はかな質だった。
「はい、父上もご存知の通り、アイルは魔法を使えない無能な人間です」
名案を思い付いたとでも言いたげに、自分の話を喜々とするマニスに、公爵はウンザリしていた。
「ソレがどうした? 魔法がダメでも魔力はある、使えないのは暴漢に襲われた時、心に受けた傷のせいで、彼女が産むであろう子供には、影響は無いと医者も言ったではないか」
「ですが、魔法が使えないのは確かです!! ミニャックの方が優秀です!」
「だが、姉には及ばない、神殿の調べを私はこの目で見たのだから… ソレに妹には既に婚約者がいるではないか?」
「ですから、ミニャックの婚約者は、たかが地方の騎士です、クラン公爵家の力を使えば、婚約など簡単に覆すコトが出来るはずです!」
書斎の机に手を突き、前のめりになり、夢中で言い募るマニス。
「バカを言うな! 短慮な考えで、家同志の契約を反故にして、他人の婚約者を奪うなど… クラン公爵家の面目が立たぬではないか」
公爵は書斎机の椅子に座ったまま、息子の愚かさに、呆れて首を振る。
「ですが、父上… アイルのような暗く、硬い女など!! ミニャックの方が美しく、明るい性格です、彼女の方が私の妻に… クラン公爵夫人に向いています!!」
「つまりお前の本音は、妹ミニャックの方が好みだから、婚約者の首を挿げ替えたいというのだな?」
どうやら自分の息子は、聡明さを母親の腹の中に、忘れて生まれたらしいと、公爵は大きなため息をつく。
「父上、あんまりです! その言い方は!!」
流石に羞恥で、真っ赤になるマニス。
「話にならん! 今すぐ出て行け! 今まで通り、お前の婚約者はアイルだ、何があっても覆るコトは無い」
ソレから数か月後に、ミニャックの妊娠騒ぎが起き、公爵がマニスを問い質すと…
「彼女には、他に付き合っていた男が居たのです、私も騙されました! ですが、アイルもふしだらな行いをしていると従姉妹のアンジンに、聞きました間違いありません、ミニャックは姉に影響されたのです!」
醜聞騒ぎが起きた以上、姉のアイルと長男マニスとの、婚約を継続するのは難しくなり、婚約破棄に至った。
そして長男マニスの友人で、アイルの従姉妹の、サキット子爵家の長女アンジンを新たな婚約者とし、学園を卒業後すぐに結婚させた。
当時、公爵がマニスの話を信じたのも愚かだったが…
だからと言ってミニャックを受入れるには、醜聞騒ぎが起きた後ではあまりにも遅かった。
どちらにしても、面目を保つために…
クラン公爵家は、アイルとミニャックを切り捨てるしかなかったのだ。
アイルの背中に怯えて隠れる、幼少時のマニスによく似た子供を、茫然と見つめるクラン公爵。
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