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27話 クラン公爵家
しおりを挟む数年ぶりに淑女らしい、宝石のビーズをあしらった、シンプルで慎ましいが、とても優雅なブルーの訪問用ドレスを身に着けたアイルは、豪華なソファに座りながら、居心地の悪い気分を味わっていた。
他家に訪問するのに相応しい服装をと、兄と共にドレスメーカーで買い求め、アイルはその場で着替えると真っ直ぐクラン公爵家に来て、今は応接間へと通され公爵本人と面談している。
パダムと過ごした邸から、2日掛けて王都のオバット伯爵家に、戻ったのがほんの一時(二時間)前。
馬車の中から連絡用の幻鳥で、フジャヌはそれぞれの家に使いを出していたのだ。
そして、なぜか… アイルの隣には、兄が子供の頃来ていた古い服を着て、大喜びのカチャンが、煌びやかな応接間の天井を熱心に眺めている。
『ええ?! カチャンも連れて行くのですか?』
『その子供を育てた価値が、ようやく出るというモノさ… お前だって、少しは気付いているのではないのか?』
「それで… 何の用だね? オバット伯爵、私も暇では無いのだが?」
口調は柔らかいが、クラン公爵から冷淡に蔑む態度が、ありありと現れていた。
「その子は下の妹ミニャックの子です」
「そうだと思ったよ」
「でしたらその子の容姿を、良くご覧になられては、いかがですか? 誰かの幼少時に、ソックリではありませんか?」
フジャヌもクラン公爵に負けないくらい、冷ややかだった。
年齢差を考えると、フジャヌの冷たさの方が上かも知れない。
「何だと?!」
クラン公爵はフジャヌに言われるまま、カチャンをしばらく見つめ、ハッと息を呑む。
「妹ミニャックが最後まで、我々に父親の名を明かさなかったのは、仲の良い姉を思えばのコトだったのでしょう」
「何が言いたいのだ、オバット伯爵… 今更私にどうしろと?」
「やはりアナタは、ご存知なかったのですね?」
「私は妹が亡くなった後、調べてゆくうちに、妹とご子息が隠れて戯れる姿を、学園生から密かに聞き出していました… 残念ながら何の証拠もなく、またその話をしてくれた人もクラン公爵家に連なる方だったために表立って話すコトを断られてしまいました」
カチャンはアイルの元婚約者、マニスにソックリだった。
オバット伯爵家の者は全体的に髪や瞳の色が薄い傾向にあるが、カチャンだけ赤みがかった茶色の髪をしている、瞳も茶色だ。
ミニャックは母に似て、桃色がかった淡い金の髪に、ハシバミ色の瞳をしていた。
「もう少し大きくなれば、魔法の有無を神殿で調べるコトになります… その時どんな特性が出るか楽しみではありませんか?」
「バカな!!」
ドンッとクラン公爵は机に拳を打ち付けて、立ち上がる。
「・・・・・・っ!!」
向かい側で立ち上がり、睨みつけてくるクラン公爵の激昂ぶりに…
アイルはビクリッと震え、青い顔で固まる。
隣にいたカチャンも小さな叫び声を上げて、アイルの背中に隠れるように、しがみ付いて来た。
兄フジャヌだけが、積年の恨みを晴らせそうだと、悠然と微笑んでいた。
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