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60話 晩餐会2
しおりを挟む今夜はいつもの社交活動とは違い、晩餐会の前に国王陛下からの褒賞授与式もあるコトから…
いつもよりも気合いを入れたフジャヌが、アイルを飾りたてようと、オバット伯爵家に代々伝わる家宝の宝石をジャラジャラと出して来た。
フジャヌがアレでも無い、コレでも無いと、選びに選んだダイヤモンドのネックレスに、揃いのイヤリング、綺麗に結い上げたアイルの髪にはティアラまで載っている。
アイルの部屋の姿見の前で…
『お兄様… コレは着飾り過ぎではありませんか?』
『愚か者!! 折角美しく生まれたと言うのに、その容姿を利用する絶好の機会に何をぬるいコト言っているのだ! 今夜のような公式行事にこそ、絶対に必要な演出なのだ!』
フジャヌに怒鳴られて、渋々着飾るコトにしたアイルは、身に着けた宝石が重過ぎて、授与式が始まる前から肩が凝っていた。
ドレスは女性用の正礼装のイブニングドレスで…
夜会服の特徴である、裾は長く、襟ぐりを大きく開き上半身の露出が多い。
パールグレーの光沢のある生地に、袖は無く、代わりに肘まで隠れるロンググローブ(長い手袋)をして、腰の切り替え部分からフワリと裾まで広がっている。
ふしだらの烙印を押されたアイルが、品のある女性に見えるようにと…
フジャヌとブラヌ(兄マニスが亡くなり、現在は喪中で晩餐会には不参加)が知恵を絞って選んだ、逸品のドレスだった。
アイルは不意に鋭い視線を感じ…
扇子を開き口元を隠しながら、アイルはコソコソと隣に立つ、フジャヌに話し掛けた。
「あの… お兄様、なぜか隣にいるチュルミヌ伯爵様にジロジロ睨まれているように、見えるのですが… 私の気のせいでしょうか?」
「いや、気のせいでは無いさ! 恐らくお前が国王陛下から頂く褒賞が、気に入らないのだ」
フジャヌはご機嫌で、アイルにキラキラと輝く満面の笑みを見せた。
「お… お兄様、一体何を企んでいるのですか?!」
思わず問い質す失礼な妹。
「王太子殿下に、お前の褒賞は何をやろうかと、相談されたから私が代わりにねだっておいた」
兄は… 良いモノ貰えて良かったな、とでも言うように、妹の腕をトントンと叩く。
「褒賞? 私が頂くのですか?!」
機嫌の良い兄を、妹は眉をひそめて用心深く観察する。
「当然だろう? 致命傷を負った騎士を、お前が一番多く救命したのだからな」
後からブラットに聞き、フジャヌも自分の耳を疑うような驚異的な人数だった。
ひとえに、救護テントに運ぶ前に命を落としような、動かすダケでも危険な瀕死の怪我人を、聖女クニンの杖を使い、効率良く治療出来たお陰である。
「何をねだったのですか?」
恐る恐る尋ねるアイルに…
「お前の大好きなモノだ!」
フジャヌはニヤニヤと笑う。
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