62 / 86
61話 晩餐会3
しおりを挟む
優秀な治療士を輩出して来た、オバット伯爵家と並ぶ治癒魔法の名家チュルミヌ伯爵家の一派にアイルはジロジロ睨まれ…
「オバットのふしだら娘が、王子を誑かした」
「王子も王子だ、簡単にふしだら女に引っ掛かるなど、やはり異国育ちだから道理を知らぬようだ…」
陰口が聞こえ、アイルはビクリッと震え身体を強張らせた。
アイルを挟んでフジャヌの反対側に立つ、クルスイとブラットにも陰口が聞こえ息を呑む。
オバット伯爵家の一派に聞こえるよう、故意にチュルミヌ伯爵は陰湿な暴言を吐いたのだ。
扇子を開き青ざめた顔を隠し、アイルは背中を丸め、下を向いて前に立つ騎士の足を見た。
<申し訳ありません… パダム様、私のせいでパダム様まで…!!>
水色の瞳から涙が溢れないように、ギュッと閉じて耐えた。
隣に立つフジャヌが、パンッ… と大きな音を立ててアイルの華奢な背中を思いっきり叩いた。
「きゃっ…!!」
小さな悲鳴を上げて、アイルは顔を上げフジャヌを驚愕の眼差しで見た。
前に立つ騎士や、クルスイとブラット、フジャヌの向こう側に立つ、チュルミヌ伯爵家一派も何事かと振り向いた。
「しっかりしろアイル、治療師の誇りを思い出せ! お前はパナス・ダラム様の呪毒を浄化し、見事マンティコアの瘴気を綺麗に祓ったのを忘れたのか?!」
「お兄様… でもっ!」
「良く聞けアイル! 王子殿下の魔獣化を防ぎ、その尊きお命をお救いしたのはお前だろう?」
チュルミヌ伯爵家の一派はギョッとした顔をして、フジャヌとアイルを凝視している。
フジャヌもチュルミヌ伯爵家の一派を牽制する為、故意に聞こえるよう、話しているのだ。
周りに立つ騎士たちも皆、耳を傾けている様子。
「でも、アレはお兄様の知恵で… 本当に奇跡としか、パダム様の元々の強さがあればこそで…」
ぽそぽそとアイルは自信無さげに、扇子で口を隠しながら答える。
「王都の治療師全員が見放した、凶悪な呪毒を打ち込まれた怪我を、諦めずに治療を続けたお前を… 王子殿下が側に置きたいと望まれても不思議なコトでは無い!」
「お兄様… 私は本当にソレで良いのでしょうか?」
堪えていた涙が、アイルの瞳から溢れ出してしまった。
「良いに決まっている!!」
涙を零す水色の瞳を、同じ輝きを持つフジャヌの瞳が、真っ直ぐに見つめた。
「アイル様はご存知ないかも知れませんが…」
コレだけは言わせてくれと、言わんばかりにクルスイが口を挟んだ。
「・・・・・・?」
溢れた涙をアイルは慌ててハンカチで拭いながら、クルスイの顔を見た。
「パナス・ダラム様が、先の魔獣退治で大怪我を負われた時、大臣方に側近として付けられた王立騎士団の騎士たちは、チュルミヌ伯爵家の救護テントへ、王子殿下を運んだのです」
怒りを抑える為に、クルスイは拳を握りながらアイルを見つめた。
「オバットのふしだら娘が、王子を誑かした」
「王子も王子だ、簡単にふしだら女に引っ掛かるなど、やはり異国育ちだから道理を知らぬようだ…」
陰口が聞こえ、アイルはビクリッと震え身体を強張らせた。
アイルを挟んでフジャヌの反対側に立つ、クルスイとブラットにも陰口が聞こえ息を呑む。
オバット伯爵家の一派に聞こえるよう、故意にチュルミヌ伯爵は陰湿な暴言を吐いたのだ。
扇子を開き青ざめた顔を隠し、アイルは背中を丸め、下を向いて前に立つ騎士の足を見た。
<申し訳ありません… パダム様、私のせいでパダム様まで…!!>
水色の瞳から涙が溢れないように、ギュッと閉じて耐えた。
隣に立つフジャヌが、パンッ… と大きな音を立ててアイルの華奢な背中を思いっきり叩いた。
「きゃっ…!!」
小さな悲鳴を上げて、アイルは顔を上げフジャヌを驚愕の眼差しで見た。
前に立つ騎士や、クルスイとブラット、フジャヌの向こう側に立つ、チュルミヌ伯爵家一派も何事かと振り向いた。
「しっかりしろアイル、治療師の誇りを思い出せ! お前はパナス・ダラム様の呪毒を浄化し、見事マンティコアの瘴気を綺麗に祓ったのを忘れたのか?!」
「お兄様… でもっ!」
「良く聞けアイル! 王子殿下の魔獣化を防ぎ、その尊きお命をお救いしたのはお前だろう?」
チュルミヌ伯爵家の一派はギョッとした顔をして、フジャヌとアイルを凝視している。
フジャヌもチュルミヌ伯爵家の一派を牽制する為、故意に聞こえるよう、話しているのだ。
周りに立つ騎士たちも皆、耳を傾けている様子。
「でも、アレはお兄様の知恵で… 本当に奇跡としか、パダム様の元々の強さがあればこそで…」
ぽそぽそとアイルは自信無さげに、扇子で口を隠しながら答える。
「王都の治療師全員が見放した、凶悪な呪毒を打ち込まれた怪我を、諦めずに治療を続けたお前を… 王子殿下が側に置きたいと望まれても不思議なコトでは無い!」
「お兄様… 私は本当にソレで良いのでしょうか?」
堪えていた涙が、アイルの瞳から溢れ出してしまった。
「良いに決まっている!!」
涙を零す水色の瞳を、同じ輝きを持つフジャヌの瞳が、真っ直ぐに見つめた。
「アイル様はご存知ないかも知れませんが…」
コレだけは言わせてくれと、言わんばかりにクルスイが口を挟んだ。
「・・・・・・?」
溢れた涙をアイルは慌ててハンカチで拭いながら、クルスイの顔を見た。
「パナス・ダラム様が、先の魔獣退治で大怪我を負われた時、大臣方に側近として付けられた王立騎士団の騎士たちは、チュルミヌ伯爵家の救護テントへ、王子殿下を運んだのです」
怒りを抑える為に、クルスイは拳を握りながらアイルを見つめた。
1
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる