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62話 晩餐会4
しおりを挟む「パナス・ダラム様が先の魔獣退治で大怪我を負われた時、大臣方に側近として付けられた王立騎士団の騎士たちは、チュルミヌ伯爵家の救護テントへ王子殿下を運んだのです」
怒りを抑える為に、クルスイは拳を握りながら、アイルを見つめた。
「ええ? お兄様がパダム様の怪我を治療したのでは無いのですか?」
王太子から直接命令を受け、フジャヌはパダムの側近として付いていたと、アイルは聞いていた。
側近のフジャヌが一番に、治療したとアイルは思い込んでいたのだ。
「そうだ! パダム様の姿が見えないと捜しに行って、初めて大怪我を負われたと知った、初期の呪毒の浄化が不完全だった為に、あのように手の付けられぬ状態に… 瘴気が広がるまで、故意に誰も私に、知らせなかったのだ!」
フジャヌは憎々し気に、チュルミヌ伯爵家一派を睨む。
「…そんな、そんなコトでパダム様は、あんなにもお辛い目に、苦しまれたのですか?」
開いたままの扇子を、ポトリと落として、アイルは震えながら、自分の掌で唇を隠す。
「何年も前から、チュルミヌ伯爵家の治療師の質が落ちたと、言われ続けていたのですが、彼らと懇意にしている王立騎士団の騎士たちが、王子殿下と王太子の信任厚いフジャヌ様を、出し抜こうとしたのでしょう!」
下らない野心を持った騎士と、間違った判断が犯した治療師の罪を、クダは自分の意見と共に、アイルに語って聞かせた。
「確かに… お兄様の腕なら、致命傷を受けていても、あんなに酷くなるコトは無かったはずです…」
<今までそのコトに、思い至らなかった自分が恥ずかしい!!>
清らかな水色の瞳に、軽蔑の光を宿し、アイルがチュルミヌ伯爵家の一派を睨みつけると、サッと視線を逸らされた。
<お兄様は、そういう下らない野心を持つ人たちからも、パダム様を守りたくて、王太子殿下に進言し、側近を信頼のおける騎士たちに、挿げ替えたのね>
兄の冷ややかな水色の瞳を見つめて、アイルは大きく頷いた。
落とした扇子を拾い、パンッと音を立てて閉じると、アイルは背中を伸ばして前だけを見る。
パダムと目が合いアイルは微笑む。
ずっとアイルたちの様子を見ていたのだろう。
<スグに揺れてしまう、弱い心を何とかしなければ…>
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