呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

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65話 国王陛下

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 青白い顔で微笑む国王と王太子を見つめ、アイルは少し離れた場所に立つ、フジャヌを見た。

 最後にパダムを見つめ、少し前にクルスイから聞いたコトを、思い出していた。

『何年も前から、チュルミヌ伯爵家の治療師の質が落ちたと、言われ続けていたのですが』


 国王の主治医はチュルミヌ伯爵で…

 先程、国王の手を取った時に、アイルは詳しくは無理だったが、少しだけ身体を診た。

<いつ亡くなってもオカシクナない程、陛下は弱っておられる… 持っても残り数か月のお命… 出しゃばるのは嫌だけど、このような機会は滅多に無い>

 もう一度パダムをアイルはジッと見つめ、覚悟を決めた。

 今までに無い厳しい表情で見つめられて、何事かとパダムもアイルを見つめ返した。

<初めて会った時のパダム様のように、無駄に苦しむのを放ってはおけないわ! 治療は早い方が良い>



「陛下、恐れながらもう一つだけ… 宜しいでしょうか?」

 聖女クニンの杖を片手に持ち、跪いたまま真っ直ぐ国王を見上げた。

 少し前までの穏やかさがが消え、凛とした態度のアイルに何かを感じ取った国王が頷いた。


「陛下御自身が、この聖女クニン様の杖を、お試しになる気はございませんか?」

 自分の脇に寝かせて持っていた杖を、アイルは前に出し両手で持ち上げ、国王に見せた。
 

「其方が言うのだから、私の身体の治療をしたいのか?」
 
「はい」

 長い間、不十分な治療を続けたせいで、手の施しようが無いほど悪化しているが…

 クニンの杖が有れば魔力の心配なく、やりたいコトが出来る。


「面白い! やって見せよ」

 国王は笑った。



「陛下!! 危険です、陛下のお身体は治癒魔法に耐えられません!! どうか、お止めください!!」

 チュルミヌ伯爵が声を荒げて、叫ぶ。


<確かに、普通に治癒魔法を使えば耐えられない…>

 身体中の血の道が脆く劣化し、少しでも刺激を与えると破れて大量に出血する恐れがあるからだ。

 特に悪いのは、頭の中の血の道にコブが出来ていて、そのコブが何時破れるか分からない状態なのだ。

 他にも極端に血の道が狭くなり、血が通わない場所まである。

 国王が1人で、上手く歩けないのはそのせいだ。


<コレは本当に苦しい思いをしておられるハズだわ… お気の毒に…>

 悪い部分だけを治療すれば、ソコだけ血の流れが良くなり、他の部分の血の道に負荷がかかり、治療してない血の道が破れかねない。


<同時に治療するしかない、それには 治療師3人分の魔力を一気に使うほどの労力が必要… でも、今はこの聖女クニン様の杖が有る、コレならきっと…!!>

 フジャヌと目が合うと、やはり厳しい顔をしていたが、シッカリ頷いて見せた。


<お兄様は私を信じて下さるのね!!>

 アイルはフジャヌに微笑んだ。




「陛下、お止めください!! 聖女殿はまだ、お若く経験が足りませぬ!! 長年診て来た私をどうか信じて下さい!!」

 バタバタとチュルミヌ伯爵は許しも無く、陛下の御前へと飛び出して来て、アイルを睨みつけ侮辱した。


「どうせ先は短いのだ、私が選んだ聖女の力を試して何が悪い? 何より若くて美しい聖女の治療を一度は受けてみたいしな」

 国王は機嫌良く笑うが、流石に王太子は判断が出来ずに青い顔で黙っていた。

 王太子のこういう部分が、フジャヌが言う "気弱な質" なのだろう。



「どうせ、先が短いのなら試すぐらい良いでは無いか? 父上もこう言っているのだし」

パダムが口を挟み、ケロリと言い放つ…


「兄上!!」

 王太子は目を剥いて、腹違いの兄を見た。
 

「まぁダメでも、アイルのせいでは無いから、その辺は父上も先に認めておいてくれよ?」

 パダムの国王に対しての不敬な発言に、周りに居た騎士や大臣たちは顔を青くしていたが…

「お前のその口の悪いところは、若い頃の母親に良く似ているな」

 国王自身は、顔をクシャリと皺だらけにして、楽し気に笑った。


「どうせ死ぬなら、暗い寝室ではなく美女の腕の中で死にたいのだ、最後の望みだと思って、皆黙って聞き入れてくれ! 私が死んでも聖女アイルに何の罪もない、コレは私の我儘である!」
 
 王がそう宣言すると、パダムが後の言葉を引き取った。

「ほらな! 聞いただろう? さぁ、アイルさっさと父上を診てやってくれ、膝枕はしなくて良いからな」

 アイルはパダムの言葉に笑ってしまったが…

 笑っているのは当のパダムとアイル、国王ダケだった。

 
 
 他の人々は顔を強張らせて、黙っていた。
 







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