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64話 褒賞
しおりを挟む最後にアイルが呼ばれ、おずおずと国王陛下の前に跪くと…
「顔を上げよ」
跪いたままゆっくりと顔を上げ、アイルは国王と視線を合せた。
国王は青白い顔で、やせ細った手を伸ばし…
アイルは国王の手を取り、そっと手の甲にキスをする。
そのまま国王は、アイルの細い手を握り、穏やかに微笑んだ。
「女の身でありながら、魔獣退治の前線へと向かい、オーク共を追い払いながら、騎士たちの治療をしたそうだな?」
弱々しく掠れた声だが、王の好奇心が感じられる話し方だった。
「はい、全ては王太子殿下がお貸し下さった、聖女クニン様の杖が有ればこそ、出来たコトにございます、陛下にもお見せしたかったです… 面白いほどオークたちが逃げ惑う姿を」
アイルもその時のコトを思い出し、ニコやかに微笑むと、王も喉の奥で小さな笑い声を立てる。
「そうか、ならば今回の褒賞はそなたに、ぴったりと言えよう」
王が王太子を見ると、魔獣退治で使った聖女クニンの杖を手に、アイルの隣へ跪く。
「オバット侯爵家のアイルには、聖女クニンの杖と共に聖女の称号を与える、これからも聖女として存分に働くが良い!」
王は掠れた弱々しい声ではあるが、広間中が静かに聞き耳を立てていたので、小さくとも人々の耳まで届き、アイルが言い渡された後、ざわめきが起こる。
「・・・・・・っ!!」
狼狽えるアイルに、王太子は悪戯っ子のように笑う。
「救われた騎士たちは、既に其方を聖女と呼んでいるのを知っているか? こうでもしなければ反乱が起きかねないのだ、その中心人物がパナス・ダラム兄上なのだが…」
王太子はパダムを可笑しそうに見た後、アイルの手に聖女クニンの杖を渡した。
「初めて会った時から、アイルは私の聖女だった!」
何を今さら… とでも言いたげに、ケロリと言って退けるパダム。
「あ、あの! …恐れながら… 1つ、宜しいでしょうか?」
アイルは王太子と国王を交互に見ながら、発言の許可を求めた。
「何だ? 言ってみなさい」
国王が穏やかに発言を促した。
「聖女クニン様の杖を、私だけでは無くオバット家の皆で使えれば、より多くの人が救えるかと… ですから…」
「ふむ、つまり… 其方個人への褒賞では無く、オバット侯爵家への褒賞という形にしたいと言うコトか?」
アイルが手に持つ杖を眺め…
王太子は短い間ではあるが、思案を巡らせながら、自分の顎を撫でた。
「はい! 恐れながら、戦場での治療は杖を使っても私一人では出来ませんでした、共に手伝ってくれる方と2人一組で行ったのです… ですから」
自分だけに与えらえたのでは、効率が悪いと、発光魔法を使いながら治療した時の状況を説明した。
「なるほど、陛下… どうなさいますか?」
王太子が国王に尋ねると…
「聖女の望みを叶えねばなるまい、杖はオバット侯爵家へ与える、子々孫々まで聖女の杖を使い国と民に仕えよ!」
目尻にシワを寄せて、国王はクシャリと笑い頷いた。
アイル自身は治療の為にそう進言したが、国王の許しにはもっと大きな意味があった。
聖女クニンの杖は元々は国宝であるが故に、アイル個人に与えると言うコトであれば、アイル自身が天寿を全うした後、国へ返還されるのだが…
オバット侯爵家に与えられたと言うコトは、オバット侯爵家が存続する限り、返還しないで良いと言うコトになるのだ。
王太子は苦笑し、フジャヌは水色の瞳を光らせて、アイルめ、愚か者にしては、ヤルでは無いかと…
ニヤリと笑う。
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