呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

文字の大きさ
65 / 86

64話 褒賞

しおりを挟む

 最後にアイルが呼ばれ、おずおずと国王陛下の前に跪くと…

「顔を上げよ」
 
 跪いたままゆっくりと顔を上げ、アイルは国王と視線を合せた。

 国王は青白い顔で、やせ細った手を伸ばし…

 アイルは国王の手を取り、そっと手の甲にキスをする。

 そのまま国王は、アイルの細い手を握り、穏やかに微笑んだ。


「女の身でありながら、魔獣退治の前線へと向かい、オーク共を追い払いながら、騎士たちの治療をしたそうだな?」

 弱々しく掠れた声だが、王の好奇心が感じられる話し方だった。


「はい、全ては王太子殿下がお貸し下さった、聖女クニン様の杖が有ればこそ、出来たコトにございます、陛下にもお見せしたかったです… 面白いほどオークたちが逃げ惑う姿を」

 アイルもその時のコトを思い出し、ニコやかに微笑むと、王も喉の奥で小さな笑い声を立てる。


「そうか、ならば今回の褒賞はそなたに、ぴったりと言えよう」

 王が王太子を見ると、魔獣退治で使った聖女クニンの杖を手に、アイルの隣へ跪く。


「オバット侯爵家のアイルには、聖女クニンの杖と共に聖女の称号を与える、これからも聖女として存分に働くが良い!」

 王は掠れた弱々しい声ではあるが、広間中が静かに聞き耳を立てていたので、小さくとも人々の耳まで届き、アイルが言い渡された後、ざわめきが起こる。



「・・・・・・っ!!」
 
 狼狽えるアイルに、王太子は悪戯っ子のように笑う。
 
「救われた騎士たちは、既に其方を聖女と呼んでいるのを知っているか? こうでもしなければ反乱が起きかねないのだ、その中心人物がパナス・ダラム兄上なのだが…」

 王太子はパダムを可笑しそうに見た後、アイルの手に聖女クニンの杖を渡した。


「初めて会った時から、アイルは私の聖女だった!」

 何を今さら… とでも言いたげに、ケロリと言って退けるパダム。


「あ、あの! …恐れながら… 1つ、宜しいでしょうか?」
 
 アイルは王太子と国王を交互に見ながら、発言の許可を求めた。


「何だ? 言ってみなさい」

 国王が穏やかに発言を促した。


「聖女クニン様の杖を、私だけでは無くオバット家の皆で使えれば、より多くの人が救えるかと… ですから…」

「ふむ、つまり… 其方個人への褒賞では無く、オバット侯爵家への褒賞という形にしたいと言うコトか?」

 アイルが手に持つ杖を眺め…

 王太子は短い間ではあるが、思案を巡らせながら、自分の顎を撫でた。
 

「はい! 恐れながら、戦場での治療は杖を使っても私一人では出来ませんでした、共に手伝ってくれる方と2人一組で行ったのです… ですから」

 自分だけに与えらえたのでは、効率が悪いと、発光魔法を使いながら治療した時の状況を説明した。

「なるほど、陛下… どうなさいますか?」

 王太子が国王に尋ねると…


「聖女の望みを叶えねばなるまい、杖はオバット侯爵家へ与える、子々孫々まで聖女の杖を使い国と民に仕えよ!」
 
 目尻にシワを寄せて、国王はクシャリと笑い頷いた。


 アイル自身は治療の為にそう進言したが、国王の許しにはもっと大きな意味があった。

 聖女クニンの杖は元々は国宝であるが故に、アイル個人に与えると言うコトであれば、アイル自身が天寿を全うした後、国へ返還されるのだが…

 オバット侯爵家に与えられたと言うコトは、オバット侯爵家が存続する限り、返還しないで良いと言うコトになるのだ。

 
 王太子は苦笑し、フジャヌは水色の瞳を光らせて、アイルめ、愚か者にしては、ヤルでは無いかと… 

 ニヤリと笑う。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

敵将を捕虜にしたら夫になって、気づけば家族までできていました

蜂蜜あやね
恋愛
戦場で幾度も刃を交えてきた二人―― “赤い鷲”の女将軍イサナと、 “青狼”と恐れられたザンザの将軍ソウガ。 最後の戦いで、ソウガはイサナの軍に捕らえられる。 死を覚悟したその瞬間―― イサナは思わず、矢面に立っていた。 「その者は殺させない。命は……私が引き受けます」 理由などなかった。 ただ、目の前の男を失いたくなかった。 その報告を受けた皇帝エンジュは、 静かに、しかし飄々とした口調で告げる。 「庇いたいというのなら――夫として下げ渡そう」 「ただし、子を成すこと。それが条件だ」 敵国の将を“夫”として迎えるという前代未聞の処置。 拒否権はない。 こうしてソウガは、捕虜でありながら 《イサナの夫》としてアマツキ邸に下げ渡される。 武でも策でも互角に戦ってきた男が、 今は同じ屋根の下にいる。 捕虜として――そして夫として。 反発から始まった奇妙な同居生活。 だが、戦場では知り得なかった互いの素顔と静かな温度が、 じわじわと二人の距離を変えていく

処理中です...