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79話 双子の従姉弟たちと
しおりを挟むお茶を飲みながら、淡々と話すフジャヌに、アイルは尋ねた、
「サキット家が無くなるとなると… パギとベソックは、どうなるのですか?」
先の魔獣退治でも、命がけでオークと戦った従姉弟たちに…
罪があるとは思えない。
チラリとフジャヌが、視線を上げた。
「跡取りを魔獣退治で失った、騎士の家はたくさんある、ベソックはそういう家に、入り婿として入る予定だ」
罪人であるサキット家出身のベソックを、快く受け入れてくれそうな家を、フジャヌ自ら、探している最中だった。
「成る程! 入り婿ならサキットの名を、名乗らずに済みますものね」
ホッとアイルは、胸を撫で下ろした。
「ベソックは若いが、聡明で腕が立つからな… 実はパダム様に、側近候補として、推薦してある」
珍しくフジャヌが、邪気の無い顔で、微笑んだ。
「まぁ良かった!! ソレでパギは? パギもパダム様に推薦したのでしょう?」
大好きな従姉弟たちの話なのだから、自分のコトのように、アイルは嬉しかった。
「いや、パギは私の嫁にするコトにした」
「…何ですって?!」
自分の耳を疑い、アイルはもう一度聞き直した。
「だから、パギはもうスグ、お前の義理の姉になる、本人も了承した」
パギの才能と年齢を考えると、フジャヌとはちょうど良い、組み合わせでもあった。
何より、面倒なしがらみも無く、フジャヌの妻と言う立場なら…
被害者が自らパギを護るのだから、誰も文句は言えなくなる。
満足そうに、フジャヌは笑った。
アイルはパカリと口を開いて、呆然とフジャヌを見つめた。
「何だ、不服なのか? パギにお前が義理の妹になるのを、嫌がっていると、伝えてやろう」
意地悪そうに、ニヤリと笑うフジャヌ。
「ダメ! ダメ! ダメ! です!! 止めて下さいお兄様!! 私はそんなコト、言ってません!!」
ガバリッ… と、立ち上がり、アイルは大慌てで、フジャヌに言い訳をする。
「お前… 王子妃になるのだから、そうやって簡単に騙されるのは、考えモノだぞ?」
ティーカップを口につけ、少し冷めたお茶を、フジャヌは満足そうに飲む。
「えええっ―――――っ?! 今の冗談なのですか?! パギと結婚する話は冗談?! 酷過ぎます、お兄様!!!」
眉間にシワを寄せ、アイルがフジャヌを責めると…
「お前は本当に、愚かな娘だなぁ… 我が妹だと思うと、私は情けないぞ」
疲れた顔で、大きなため息をつく、フジャヌ。
パギと結婚するのは本当で…
パギにチクると言ったのは、フジャヌがアイルを揶揄ったダケだった。
「パダム様… 本当にこんなに愚かな娘ですが、良いのですか?」
独り言をつぶやき、フジャヌは呆れて、首を横に振った。
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