呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

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80話 フジャヌの婚約者

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 辛いお妃教育を受ける為に、アイルが王宮の住人になり半年が過ぎようとしていた頃…

 再び、西方の国境近くで、魔獣襲撃の報告を受けた。

 お妃教育と同時進行で、アイルも聖女として、大切な役目を果たすために、魔獣退治の場へ向かうべく、慌ただしく準備に追われ、実家のオバット侯爵邸に戻っていた。


「パギも参加するのでしょう?」

 薬を作る作業用部屋で、傷用の軟膏を作る為に、乾燥した薬草を次々と鍋に入れながら…

 兄の婚約者であり、優秀な魔法騎士である、従妹のパギに、アイルは何気なく尋ねるた。


「ええ~とっ…ね、アイルお姉様、あのね… その…」

 パギは、アイルを手伝い、鍋の中の薬草を、細かくブチブチと千切りながら… 

 なぜかモジモジと顔を赤くして、答えを濁した。

 
 表向きは、花嫁修業と言う名目で、パギはオバット侯爵邸で、暮すようになっていた。

 貴族の地位を剥奪された、パギの実家だったサキット家は…

 家財産まで、全て国に没収され、そのお金で、命を落とした騎士たちの、貧困に喘ぐ遺族たちへ、少額づつではあるが、援助金として支払われた。


 つまり、サキット家は名実共に、消滅したのだ。


「どうしたのパギ? 何か悩みでもあるの?」

 何時も男勝りで、元気いっぱいのパギが、珍しく歯切れの悪い話し方をするので、アイルは急に心配になった。

 辛い思いをしたのだから、姉妹としてパギの力になりたいと…

 アイルは常に気を配っていた。


「あの… アイルお姉様… 私は… その…」

 女性にしては、節の太い指を、組み合わせ、パギは忙しなく動かしている。


「もしかして、お兄様に意地悪されているのではない?」

 眉間に険しくシワを寄せ、アイルは自分よりも、スラリと背の高いパギの肩に手を置き、問い詰めた。


「あ… 違うよお姉様! フジャヌ兄さまは、スゴク良くしてくれるよ」

 慌ててパギは否定するが、散々アイルは、フジャヌに意地悪をされているから、簡単には信じなった。


「私たちはもう、姉妹なのだから、遠慮しなくて良いのよ? 私がお兄様に言ってあげるから… ダメだわ、お兄様相手に、ソレではぬるいわね!! パダム様から婚約者には優しくしなさいと説教してもらいましょう!! いっそ、国王陛下に頼んでみようかしら…」

 ドンドン話が飛躍し、アイルが怒りを、爆発させそうになってゆく。


 以前は治療以外のコトには、自信が無く、気弱な態度が多かったアイルだが…

 お妃教育を始めてから、教師たちに従順に従っていたら、お妃教育は何時まで経っても、終わらないと気づいた。

 宮廷内の流行や話題作りの基本、殿方を誘惑するポーズなど、アイルにはどうでも良い事柄まで重要だと言う、平和ボケした教師たちにウンザリしている。

 
 平和な時世ならソレでも良いが…

 ここ数年で魔獣の出現が増え、たくさんの騎士たちが魔獣退治で命を落としていると言うのにだ。


 このままでは、聖女の役目を果たす時間が取れず、国の為にも、民の為にもならないと…

 教師たちと反目し合うコトになったが、アイルは自分の意思表示をしっかりするようにした。

 最近では、怖いと思っていたフジャヌと、口喧嘩が出来るまで、成長(?)している。



「違うのお姉様!! フジャヌ兄さまは… 私… …たの…」

 真っ赤な顔を、パギは両掌で隠し、小さな声で訴えるが…

 興奮気味のアイルの耳に入らなかった。


「大丈夫よパギ、私に任せて!!」

 フンッ… と、鼻息荒く拳を握るアイルに…
 

「だからアイルお姉様… …っ … …  …たの」

 パギは意を決して、アイルの耳元に唇を寄せ…

 ヒソヒソと囁いた。




 パギが語った驚愕の事実に…

 アイルはオバット侯爵邸の、端から端まで、響き渡る程の大声で叫んだ。







「ええええ―――――っ!! 妊娠した―――――――――――っ?!!!」





 兄フジャヌは、意外に手の早い男だった。






 バァ―――――ンッ!!!!


 作業場の扉が、凄い勢いで開くと…

 滅多にみられない、顔を真っ赤にしたフジャヌが、悪魔の形相で、飛び込んで来た。


 
 フジャヌは拳を握り、アイルの側頭部に、押し付けた。


 グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…!!
「このバカ娘が―――――っ!!! 厩舎まで、お前の叫び声が聞こえたぞ!!愚か者め!!!」


 グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…!!
「痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!」


 グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…!!
「パギに恥をかかせるな!! パギに迷惑を掛けるな!! この愚か者め!!!!」


 グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…グリッ…!!
「痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!痛いっ!」




 アイルの顔が見たくて、フジャヌと共にオバット侯爵邸を訪れた…

 パダムとその側近たちが、止めに入るまで、お仕置きは続いた。




 フジャヌが意地悪をするのは、アイル限定であると…


 アイル自身が知ったのは、パギがフジャヌに似た、可愛い男の子を出産した後だった。









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