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82話 王太子と王太子妃
しおりを挟むスカラン王太子が、国王へと即位した。
スカラン王は、腹違いの兄である、パナス・ダラム王子を王太子に選んだが…
あくまでも、スカラン王の長男が成人するまで、国の安定を目的とし、繋ぎとしての役割だと、パナス・ダラム王子は宣言していた。
「まぁ、王太子の立場は、いろいろ自由に使えるから、便利なのは確かだな!」
ニヤリと笑い、王太子妃である聖女アイルを、ギュウギュウ抱きしめた。
「殿下、ココは魔獣退治の戦場ですよ? 皆が呆れているではありませんか、王太子の立場を利用したいのなら、それなりの威厳を、示してもらわないと」
チクリと刺す王太子妃。
パダムとアイルを囲む側近や、護衛騎士たちは、いつものコトだと苦笑いを浮かべる。
「アイル… 最近フジャヌに似て来たぞ? 私の可愛いアイルはドコへ行ったのだ?」
愛妻の頬にキスをしながら、パダムの眉尻が情けなく下がる。
隣国ティルムとの国境付近(ティムル側)に、魔獣が出現する魔界の門があると、ティムルの魔導士たちが発見し…
魔界の門を封印する為に、隣国ティルムからパダム宛に名指しで、援助の要請が来たのだ。
ティムル側が用意した、青の竜輝石2個で、魔界の門を囲む結界を作り、封印する計画だ。
この封印計画が成功すれば、ウタラ王国も、魔獣被害が確実に少なくなるはずだと、パダムとスカラン王は大臣を交えて協議し、援護の要請を、引き受けるコトに、全員が合意した。
そこでパダムは、門に近づくほど、より苛烈になるであろう、魔獣の襲撃に備え…
王太子の権限で、宝物庫から、赤の竜輝石が嵌めこまれた、国宝 "英雄王マタハリの魔剣" を持ち出した。
子供の頭部程の大きさの、竜輝石が嵌めこまれた大剣なので、パダム程の大男で無ければ、振り回すコトも出来ない代物だ。
英雄王マタハリとは、500年前の王で…
"一騎当千の英雄王マタハリは、魔剣を一振りするだけで、目に映る全ての魔獣を焼き払う"
男の子に大人気の、おとぎ話にもなっている。
パダムの側近ハンガットたちが、子供のように、瞳をキラキラと輝かせて、魔剣を撫で回したのは、言うまでもない。
魔剣に嵌る、赤の竜輝石とパダムの相性が良いらしく、クニンの杖よりも魔法の発現が大きくなり…
英雄王マタハリ同様、パダムの軽い一振りで、辺り一面に溢れた魔獣の群れが、灰と化し荒れた大地に雪のように降り積もった。
「もう… ダメですよ! パダムったら!」
ギュウギュウと抱き締められたまま…
ヒソヒソと、パダムの耳元で、囁くアイルの顔は、耳まで赤くなっている。
「こうしておけば、ティムルのアホ王子が、アイルの気を引こうとするのを、止めるのではないかと思ったのだ」
ヒソヒソとパダムは、アイルの耳元で囁き返す。
アイルの視界の隅に入った…
隣国ティルムのクンチ王子が、頬を赤らめて、アイルたちをジッと見ていた。
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