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83話 王太子と王太子妃2
しおりを挟む大人げなくパダムがクンチ王子を、嫌うのも無理のないコトだった。
金髪に青い瞳を持つ、端正な顔立ちの、見目麗しいクンチ王子は、王太子夫妻と会った初日に、パダムの目を盗み、アイルを誘惑しようとしたのだ。
「お美しい聖女アイル!! アナタに心奪われた、愚かな男を、どうかお救い下さい!!」
2度、3度と、アイルの手の甲に、キスを落とし…
掌に返して、クンチ王子は再び、誘惑のキスを落とした。
自分の容姿に、絶対的な自信がある様子のクンチ王子は…
熱っぽく、青い瞳を潤ませて、アイルをウットリ見上げた。
「…クンチ王子、私の王太子殿下は、とても嫉妬深い方なので、このような非常時に宮廷のお遊びを持ち込むと、痛い目に遭いますよ?」
ニッコリ笑って、アイルは忠告した。
暗に、魔獣との戦いの最中、どさくさに紛れて…
嫉妬に狂ったパダムに、抹殺されても知りませんよ… と、言う意味だ。
アイルを誘惑するのに夢中なクンチ王子は…
片手で、頭頂部をギュッと握られるまで、背後にパダムが立っているコトに気付かなかった。
「クンチ王子よ! 他国の妃に助命を嘆願するとは、ここまで軟弱だと… ティルムの民が哀れに思えて来るな!!」
片手で握った王子の頭を、グルリと回し、向かい合うと…
殺気を放つ紅い瞳を、ギラギラと光らせ、パダムはニコリと笑う。
「ヒィッ…!!」
小さな悲鳴を上げる、クンチ王子。
魔界の門に近づくだけで、魔獣の群れをいくつも退治しなければならず、ティムルの騎士たちに、多くの犠牲者が出ていた。
聖女アイルは国籍や、身分に関係なく公平に治療を行うと…
その姿勢が、ティムルの平民出身の騎士たちの間で噂になり、聖女アイルは隣国でも評判になっているのだ。
ティルム国民にまで人気のある、隣国の聖女を取り込み、クンチ王子は、王位を狙う駒として、使うつもりだった。
「申し訳ありません、王太子殿下、妃殿下! このような時に、我が国の王子が、ご迷惑をお掛けして!!」
パダムにアホ王子と呼ばれても、仕方ないと、ティルム側の騎士団長は、パダムとアイルに詫びを入れ…
詫びを入れた騎士団長の顔を立て、パダムとアイルは、クンチ王子の無礼をその場では、不問にしたのだ。
「まったく、何処にでもアホはいるのだな!! 自分で勝ち取ったモノなど1つも無いクセに、親から継いだ身分を愚かなコトに使って!!」
「ティムルの王子殿下のコトよりも、魔界の門を封印しないと、何時まで経っても、魔獣退治を続けなくてはイケマセンよ?」
「そうだな、私たちは何時まで経っても、子を持つ暇が無いというワケだ」
いつでも万全の態勢で、魔獣退治に挑まなければ、大きな被害が出るコトは明らかで…
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王太子夫妻は、魔獣退治を優先させたのだ。
「クンチ王子! 準備はよろしいか? そろそろ門を潰しに行きましょうぞ!!」
顔をしかめ、パダムは嫌そうに、隣国の王子に声を掛けた。
仲良くなった、ティルム側の騎士団長などには、気軽にパダムと呼べと友好的なのだが…
王子にダケには、格式張って "パナス・ダラム王太子殿下" と呼ばないと許さないのだ。
「は… はい!! パナス・ダラム王太子殿下!!」
ビシッと背筋を伸ばし、直立不動で返事をする少々頼りない、クンチ王子。
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