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番外編 ~悪夢の世界で…

114話 狂犬

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「立て―――っ!! 何をグズグズしているのだ!!!」
 木剣ぼっけんを振り上げ、フィエブレは力まかせに、目の前の若い騎士をメチャクチャに打ち続けた。

「うわああぁぁぁ!! ひいぃぃぃぃ!」
 自分を守ろうと頭をおおった、新人騎士の腕が見る見る赤黒くれて行く。


「団長!! もう、止めてください!! これ以上やったら殺してしまいます! 団長―――?!」
 騎士団長の常軌じょうきいっした行動を見ていて危険を感じた騎士が、新人騎士との間に立ち、止めに入った。

「うるさい、邪魔をするな!! そこを退け―――!!」
 フィエブレは止めに入った騎士まで、容赦ようしゃなく木剣で殴りつける。

「何をやっているのですか?! 落ち着いて下さい、団長!!」
 そこへ騎士団長の補佐役のベテラン騎士がかけつけ、止めに入った。
 最初にフィエブレの体罰を受け、顔を腫らした若い騎士が暴力に耐えられなくなり、呼びに行ったのだ。

「これ以上はダメです!! 腕が折れて剣を持てなくなってしまう!! 止めてください団長!!」 

 騒ぎを聞きつけ集まって来た騎士たちが、背後から羽交はがい締めにし、全力でフィエブレを押さえににかかる。

「何て馬鹿力だ!! お前は団長のくせに恥ずかしくないのか――っ?!!!!」

「団長!! 止めて下さい!!」

 その間に暴力を振るわれていた新人騎士と、間に入り木剣で殴らた騎士を、フィエブレの前から連れ出した。


「クソ―――ッ!!! オレは騎士団長だぞ!! 放せ―――っ!!!」
 フィエブレは目を血走らせ、口の端から泡を飛ばしながら怒鳴り散らす。 

「アンタ狂ってるよ!! こんなことまでして… まるで獣だ!!」
 騎士の1人が、フィエブレから木剣を取り上げたが、それでも腕や足を振り回し暴れ続ける。

「騎士団長ならば、もっと冷静になれ!!」 
 暴れる大男のフィエブレを押さえていられず、騎士たちは順番に離れた。

「お前たちこそ、騎士団長にこんなことをして、タダでは済まさないからな!!」

「アナタが騎士団長でなければ、騎士団の地下牢に閉じ込めなければならないほどの、暴挙ですよ、これは!!」

「何だと?! このクソ野郎が!! 私に逆らう奴は全員騎士団から追いだしてやる―――っ!!!!!」

 狂犬のように吠えるフィエブレに、その場にいた騎士たちは全員、この男はダメだと心の中で、団長職どころか"騎士失格" の烙印らくいんを押す。



「これ以上は見るにたえない!! 我々もこのことを、エンペサル侯爵閣下に報告します!! アナタは自分の今後のために、新人の腕が折れていないことを、祈るべきでしょうね!!」

 新人騎士の腕が折れていて、今後騎士として生きられないような障害が残れば、フィエブレは騎士団を辞めるだけでは無く、暴行の罪で犯罪者となるからだ。



 騎士団長の補佐役である、一番年長の騎士が、厳しい口調でフィエブレに警告した。







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