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21話 コンプラ―ル男爵2
しおりを挟むコンプラ―ル男爵とアディが実際に会うのは、これで2度目だった。
初めて会った時は父と長兄が同席していたため、ほとんど話をすることは無く、アディはコンプラ―ル男爵の人柄が分からなかった。
ただ、コンプラ―ル男爵は太った身体で足が悪く、杖を使って歩くせいで、アディの父よりもずっと年上に見えるとは思ったが。
「アデレッソス殿、あなたは何色が好きですか?」
唐突にコンプラ―ル男爵にたずねられ、アディはしばらく考えてから…
「スミレ色が好きです」
デスチーノの瞳の色を思い浮かべて答えた。
「ふむふむ… スミレ色ですか、なかなか上品で良い色ですなぁ」
ニコリと笑い、コンプラ―ル男爵はアディにうなずいた。
「あの… 僕の好きな色が、どうかしたのですか?」
首を傾げてアディが、男爵にたずね返すと…
「あなたを迎え入れるための、新しい邸を手に入れたのですが、アデレッソス殿の部屋の色を何にしようか迷っていたのですよ」
「ええ?! 邸を手に入れた?!」
「美しい妻には美しい邸が必要ですからね」
楽し気に笑う男爵。
「・・・・・・」
自分の欲望を叶えるために、アディを利用しようとしている人物だから、父や2人の兄たちと同様に、コンプラ―ル男爵もアディをオメガだからとバカにし、蔑むような人物だと思い込んでいた。
「それはまた…」
<僕の為に? 何て贅沢な話なのだろう?>
アディは自分への待遇の豪華さに、言葉を失い呆然と男爵を見つめていると…
背後から覚えのある、強いアルファのフェロモンを感じ、ドキリッ… とアディは心臓を跳ねさせた。
<…デスチーノだ!!>
デスチーノ以外の人をパートナーと一緒にいる、自分の姿を見られているのだと分かり…
アディはデスチーノの気配を感じても、罪悪感に襲われて振り返ることが出来なかった。
<ああ…! いつもは穏やかなデスチーノから、恐ろしく攻撃的な圧力を感じる… ネックガードの下で項がチクチクする!!>
「おやおや、公爵様にすごい目つきで睨まれていますよ? アデレッソス殿」
「・・・・っ!?」
楽し気に笑う男爵の口を、アディは手で塞いでやりたかった。
ちょうど通路側に座っていたアディの背後を、デスチーノは大柄な体格に見合う重々しい足音を立てて、祭壇前の最前列へと歩いて行く。
義姉トルセールの兄として、デスチーノは伯爵に家族として扱われているのだ。
自分の背後を通り過ぎた後、アディはこっそりとデスチーノの広い背中を盗み見る。
「なるほど、あなたが惚れ込む理由が分かりましたよ… お若いながらも公爵殿が持つ威厳と気品は、誰もが持ち合わせているものではありまんからね」
ニコニコと微笑むコンプラ―ル男爵に、アディは唖然とした。
<あれだけの、敵意剥き出しで激怒したアルファの圧力を放たれて… なぜ、ベータのこの人は、笑っていられるの?!>
若い頃から他人の3倍働き、周辺国の貴族たちとも交流を深めているコンプラ―ル男爵は、それなりに場数を踏んでいて、アルファの圧力にも慣れており…
デスチーノの攻撃的な圧力にも負けずに静観できたのだ。
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