22 / 87
21話 コンプラ―ル男爵2
コンプラ―ル男爵とアディが実際に会うのは、これで2度目だった。
初めて会った時は父と長兄が同席していたため、ほとんど話をすることは無く、アディはコンプラ―ル男爵の人柄が分からなかった。
ただ、コンプラ―ル男爵は太った身体で足が悪く、杖を使って歩くせいで、アディの父よりもずっと年上に見えるとは思ったが。
「アデレッソス殿、あなたは何色が好きですか?」
唐突にコンプラ―ル男爵にたずねられ、アディはしばらく考えてから…
「スミレ色が好きです」
デスチーノの瞳の色を思い浮かべて答えた。
「ふむふむ… スミレ色ですか、なかなか上品で良い色ですなぁ」
ニコリと笑い、コンプラ―ル男爵はアディにうなずいた。
「あの… 僕の好きな色が、どうかしたのですか?」
首を傾げてアディが、男爵にたずね返すと…
「あなたを迎え入れるための、新しい邸を手に入れたのですが、アデレッソス殿の部屋の色を何にしようか迷っていたのですよ」
「ええ?! 邸を手に入れた?!」
「美しい妻には美しい邸が必要ですからね」
楽し気に笑う男爵。
「・・・・・・」
自分の欲望を叶えるために、アディを利用しようとしている人物だから、父や2人の兄たちと同様に、コンプラ―ル男爵もアディをオメガだからとバカにし、蔑むような人物だと思い込んでいた。
「それはまた…」
<僕の為に? 何て贅沢な話なのだろう?>
アディは自分への待遇の豪華さに、言葉を失い呆然と男爵を見つめていると…
背後から覚えのある、強いアルファのフェロモンを感じ、ドキリッ… とアディは心臓を跳ねさせた。
<…デスチーノだ!!>
デスチーノ以外の人をパートナーと一緒にいる、自分の姿を見られているのだと分かり…
アディはデスチーノの気配を感じても、罪悪感に襲われて振り返ることが出来なかった。
<ああ…! いつもは穏やかなデスチーノから、恐ろしく攻撃的な圧力を感じる… ネックガードの下で項がチクチクする!!>
「おやおや、公爵様にすごい目つきで睨まれていますよ? アデレッソス殿」
「・・・・っ!?」
楽し気に笑う男爵の口を、アディは手で塞いでやりたかった。
ちょうど通路側に座っていたアディの背後を、デスチーノは大柄な体格に見合う重々しい足音を立てて、祭壇前の最前列へと歩いて行く。
義姉トルセールの兄として、デスチーノは伯爵に家族として扱われているのだ。
自分の背後を通り過ぎた後、アディはこっそりとデスチーノの広い背中を盗み見る。
「なるほど、あなたが惚れ込む理由が分かりましたよ… お若いながらも公爵殿が持つ威厳と気品は、誰もが持ち合わせているものではありまんからね」
ニコニコと微笑むコンプラ―ル男爵に、アディは唖然とした。
<あれだけの、敵意剥き出しで激怒したアルファの圧力を放たれて… なぜ、ベータのこの人は、笑っていられるの?!>
若い頃から他人の3倍働き、周辺国の貴族たちとも交流を深めているコンプラ―ル男爵は、それなりに場数を踏んでいて、アルファの圧力にも慣れており…
デスチーノの攻撃的な圧力にも負けずに静観できたのだ。
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
最愛はすぐ側に
なめめ
BL
※【憧れはすぐ側に】の続編のため先に下記作品を読むことをおすすめ致します。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/573023887/670501303
〇あらすじ〇
律仁さんとの甘いひとときが瞬く間に過ぎていく中、渉太も遂に大学4年目を迎えた。就活も大手企業に内定をもらい、後は卒業を待つところで、以前律仁さんと大樹先輩と尚弥とでキャンプに行ったときの出来事を思い出していた。それは律仁さんと二人きりで湖畔を歩いているときに海外を拠点に仕事をしたいと夢を抱いていること、それに伴って一緒に暮らしてほしいことを彼から告げられていたことだった。
律仁さんと交際を始めて一年の記念日。返事を返さなければならない渉太だったが酷く気持ちを揺らがせていた……。
そんな中、那月星杏と名乗る元サークルの後輩をとあるきっかけで助けたことで懐かれ……彼女もまた兄が那月遼人という律の後輩で…。
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
【完結】ただのADだった僕が俳優になった話
Toys
BL
《元ADの新人俳優×事務所のトップ俳優》
ADのアルバイトをしている彼方は、突然映画に出演する事になった。
そこから俳優としての道を歩み始めるが、まさかの事件に巻き込まれ殺されかける。
心に傷を負った彼方を、事務所の先輩である響が助け、守ってくれる。
犯人が捕まるまでの不安な日々を、響の過保護なまでの愛が埋めていく。
しかし所属事務所のトップ俳優の隣に立つために自分を磨く彼方は、次々と予期せぬ事に巻き込まれる。
芝居に恋に事件にと180℃違った人生を歩むことになった彼方。
事件を乗り越えた先、二人が辿り着くハッピーエンドとはーー。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。