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62話 初夜の準備

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 エントラーダ伯爵家とのやり取りを、トルセールに報告した後…
 2人で早めの夕食をると、アディは真っ直ぐ公爵夫人の寝室へと向かった。

「ふふふっ…」 

<うわぁぁ~!! もうドキドキして来たよ! 本当に僕がデスチーノの妻になれるなんて、まだ信じられない! 今日から僕が公爵夫人だなんて… デスチーノに子種を貰おうと寝室に忍び込んだ時は、軽蔑されるのも覚悟してたのに… もう、夢みたいだ!>

 口に手を当てて、アディはニヤニヤ笑いが止まらない。


 今までアディが使っていたのは客用の部屋で… デスチーノと結婚し、晴れてジェレンチ公爵夫人の部屋を使うことが出来るようになったのだ。

 フーアとデスチーノが別居してから…
 当然、公爵夫人の部屋は空き部屋になっていたのだが、だからと言って、その部屋を未婚のアディが使うことは許されない。

 公爵夫人の部屋は、デスチーノの部屋の隣室で、居間と寝室の二部屋あり… 寝室の奥にある扉を開ければ、公爵の部屋、デスチーノの寝室と行き来できるようになっているからだ。

<本当に、あきらめなくて良かった…!>




 公爵夫人の部屋の扉を開けると、中でアディの従者フェイラが、湯あみの用意をしていた。


「・・・・っ!!」
 かあぁっ… と頬が熱くなり、それまでアディは気合いを入れて…
"立派な公爵夫人になるために頑張ろう!!" と元気いっぱいだったが、急に気恥ずかしくなり、もじもじとした。 

<そうだよ… 初夜のために身体を綺麗にしないと…>



 
 結婚前夜から、アディはドキドキ、わくわくがおさえられず、あまり眠れていなかった。
 
 そのうえ早朝から結婚式の準備が忙しく、自分で思うよりもアディは疲れていて…
 湯あみを終えると眠気に負けて、初夜用の寝衣をフェイラに着せられると、ベッドにばたんっ… と倒れ込むように転がった。

<もうダメ… 眠くて、眠くて… 起きていられ…な… い…>


 だが…

「あ… あの… 奥様?」

 従者のフェイラが、おずおずとベッドに転がったアディに声を掛けた。


「んんん…?」
 眠くて目蓋まぶたが上がらず、アディは目を閉じたまま、フェイラの話を聞く。

「今夜は… 初夜ですから… 旦那様のお部屋でお休みになられた方が、よろしいのではないでしょうか?」 

「ああ~… そうだった… 初夜だったね… 眠く…て…忘…れ………」

「奥様? …奥様?!」

「……ああ… はい、はい…… はい…」


 目を閉じたまま、ぐずぐずとするアディを連れて… フェイラはデスチーノの寝室へつながる扉から隣室へ行き、無事に公爵のベッドに公爵夫人を寝かした。

 やれやれ大丈夫かなぁ? と内心、心配しつつ… フェイラは公爵夫人の部屋に戻って後かたづけをした。
 




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