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84話 コレから
しおりを挟む「ああ… 良かったよぉ… デスチーノ… 生きて会えた!」
甘えるようにアディはデスチーノにしがみ付くが…
<ああ、いけない! 背中に大ケガをしていたんだ!>
広い背中に回したアディの掌が包帯に触れ、慌てて手を背中から腰へと下ろす。
そんな二人を見て静かにそっと立ち上がり、トルセールは微笑みながら、部屋を出て行く。
「長い間… 留守にして悪かった… アディが… 立派に家と…皆を守ってくれていると… トルセールやオエスチ侯爵に聞いた…」
発熱の影響で、デスチーノの声も酷く掠れていたが、言葉はしっかりしていた。
「デスチーノこそ… 被害者の人たちがみんな感謝していたよ? 本当にあなたはすごい人だね!」
<秘密裏に誘拐の被害者たちを救出しながらの、外国の生活はデスチーノにとっても、本当に過酷だったのだろうね? 手紙では少しも僕に弱音を吐かなかったけれど… こんなに痩せてしまって!>
背中の大きな傷以外にも、見覚えの無い傷跡がたくさん増えていて… 再びアディは涙ぐんだ。
「アディ… これで終わりだから、私は王太子の命令で救出の任務から外れることになる」
ぐすぐすと涙ぐむ、アディの額にキスを落としながら… デスチーノは今後のことについて語った。
「え?!」
自分の願望からの聞き間違いか? とアディは涙が引っ込み、デスチーノをまじまじと見つめた。
「王太子殿下が、これ以上私に好き勝手をやらせると、どこかで命を落としそうだと… 私をまだ使いたいから、簡単に手放したくないのさ」
「ああ…!」
<そう言えば… 前にオエスチ侯爵が、そんなことを言っていたっけ?>
『有能で公爵位を持つデスチーノこそ、国の中心で王太子の右腕として国益のために働くのが当然なんだ… 他国で暗躍するような任務など、逆にありえないことだよ』
アディは黙りこんで… デスチーノの立ち位置について、これからジェレンチ公爵夫人として、知っておいた方が良いだろうと、オエスチ侯爵が丁寧に教えてくれたことを思い出していた。
<うん… そうだ、思いだした確か… 侯爵は…>
『だが… デスチーノのような、社会的地位の高い人物が動いたからこそ、王弟を動かし、他国での行動の自由を勝ち取れたのだ… 要するにデスチーノが被害者たちをを救い出すための道を作ったのさ!』
「被害者たちを、救い出す役目を、他の人に任せてもよくなったのですね?」
アディがたずねると… 質問の言葉にアディの成長ぶりを感じ取り、デスチーノは少し驚いた顔をしたが、ニコリと笑いうなずいた。
「そうだ! それにこれ以上、裏でばかり働いていると表に立てなくなる… 何せ、私は他国の有力貴族から、人を盗み出していたのだから、いつか素性がばれて命を狙われるようになるかもしれないし…」
出来れば全てを、自分の手で終わらせたかったが… 大ケガを負った今が、デスチーノにとって良い引き際だった。
デスチーノは今後、後方からの支援に徹することになる。
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