傷心オメガ、憧れのアルファを誘惑

金剛@キット

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83話 腰回りの

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 不意にアディの意識は覚醒したが… まだまだ疲労感がいっぱいで、まぶたが重くて上がらず目を閉じたまま、身体に残る産後のだるさや疼痛とうつうに加え、腰に違和感を感じていた。

 何かゴツゴツとしたものが腰の周りに巻き付いていて、それがとても重く、アディは自分の眠りをさまたげた原因だと気づき、半分寝ぼけながら…
 えいっ!! と… ゴツゴツした重いものを押し退けた。

 ふうぅ―――っ… とため息をついて、眠りの中へ戻ろうとするが… ゴツゴツ重いものは再び、アディの腰に巻き付いて来る。

「ううんんん~…」
 目を閉じたままうなり声を上げて、アディはもう一度、えいっ!! と押し退けようとしたが、今度はビクとも動かない。


 あきらめて目を開き、ゴツゴツ重いものの正体を見極めようとして… アディは固まった。


 デスチーノが隣で眠っていたからだ。

 これは夢?! と観察していると…

<頬がこんなにこけて… 顔が赤いのは発熱しているからかなぁ? 肌がすごく熱い… 僕よりもずっと具合が悪そうだ!>
 
 自分の腰に巻き付いていたゴツゴツは、デスチーノの長い腕だった。

<夢を見た気がしたけれど… あれは夢ではなかったの?>




 カチリッ… と扉が開く音がして、トルセールが入って来た。


「ああ、アディ起きたのね!」
 声を潜めていたが、トルセールから喜びがあふれている。

「トルセール…」
 わけがわからないと、アディは横になったまま、隣に眠るデスチーノを見ると…

「昨夜"グランジ"が生まれて… 外で待っていたオエスチ侯爵様に伝えようと部屋を出たら、デスチーノが帰って来ていたの…」
 ベッドの脇に置かれた椅子に腰を下ろすと、トルセールはデスチーノの眠りをさまたげないよう、ひそひそと話す。


「この前受け取った手紙には、何も書いてなかったのに?」

「背中に大ケガをして、療養のために帰国したらしいわ…」

「ええ?!」
 慌ててアディが上掛けをめくると… デスチーノの裸の上半身は、ぐるぐると包帯が巻かれていて、息を吞んだ。

「私があなたの妊娠を手紙で伝えたから… デスチーノたちは船で港に着くと、無理してここまで夜通し馬車を走らせて… 勝手なことをして、ごめんなさいアディ…」

「そんなこと無いよ、トルセール… 本当はね、妊娠したのがすごく怖くて、僕は何度も手紙に書こうとしたもの…」

「アディ…」

「ジェレンチ公爵夫人なら… デスチーノの妻なら強くないといけないと思って、ずっと意地を張っていたんだ」
 本音を語り始めると、アディの瞳から涙があふれ、止まらなくなった。

「アディ… 私はあなたを誇りに思っているのよ? あなたほどジェレンチ公爵夫人に相応しい人はいないわ!」
 デスチーノとよく似た瞳から涙を流し… トルセールの愛情が込められた優しさで、アディの細い肩を撫でる。

「僕のお母さまのように、子供と一緒に死んでしまうのではないかと… デスチーノに、二度と会えないかも知れないと、すごく怖かったよ」

<ずっと… デスチーノの子が欲しいと願っていたけれど、お母様の死が頭から離れなくて… 妊娠して嬉しかったけれど、同じぐらい怖かった>

 腰に巻き付いていた長い腕が動き… 泣き出したアディの胸を、大きなてのひらが慰めるように撫でた。


「あ!お兄様…」 
 トルセールの視線が動き、アディの隣りのデスチーノへと移る。


 アディも隣で眠っていたデスチーノを見ると… スミレ色の綺麗な瞳が、ジッ… とアディを見つめていた。




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