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2話 友達。
しおりを挟む薄暗い公園のベンチに、有名な超お嬢様学校の制服を着た美少女が、だらしなく寝転がっていた。
「来月には僕も19歳かぁ… 早いなぁ~っ…」
ベンチに寝転がったまま、白い息を吐き、明穂はポツポツと星が輝き始めた夕焼け空を見上げた。
「最後に会った英さんと… もう同じ年かぁ~っ… 会いたいなぁ… だけど僕は絶望的に運悪いし無理かぁ? きっと結婚してるだろうな、子供が2人ぐらいいて…」
冷気を感じ、明穂は自分の腕を服の上からゴソゴソと擦った。
<純情ぶって未だに彼が好きだなんて、泊めてくれた人と、お礼にヤリまくってるクセに… 我ながら尻軽だよなぁ>
自嘲する明穂。
「…明穂クン?!」
「あれ、建樹クン?」
頭の上から名前を呼ばれて身体を起こすと…
鮮やかなオレンジ色のコートを着た、明穂の唯一の友人が立っていた。
「ああ、やっぱり明穂クンだ!! 」
パタパタと足音を立てて、建樹は眼を丸くして明穂が座るベンチに駆け寄って来た。
「今からホスト(男専門)のお仕事? 羨ましい!!」
20歳越えの建樹は、夜のお仕事ができる。
「そうだけど… 何で明穂くんは百鶴女学園の制服姿なの?」
自分が着ている、白一色で目立つ、名門お嬢様学校の制服を見下ろし、明穂は渋い顔になる。
「私物を全部、僕から取り上げてコレ着ろってアイツが!! もう、我慢も限界で、キレて逃げて来たの」
この公園に来るのに、明穂は徒歩で3時間もかかってしまった… 靴擦れして痛いし…
「前に明穂クンが言ってた、紳士で優しい医者の彼氏のコトだよね?」
心配そうに建樹は、明穂の隣に座った。
「そう、ソイツ! その独善的で潔癖野郎なロリ・ショタの元、彼氏だよ!!」
プンスカ切れ気味の明穂だが、肩まで伸ばしたサラサラの髪に、百鶴女学園の制服が妙に似合っていて、怒っていても可愛く見えた。
「ソレで今夜はどうするの? 寒いから風邪ひくよ、明穂くん?」
心配そうに建樹は明穂の手を握る。
「ココで今夜、泊めてくれそうな男を探すつもり」
ニコリと微笑む明穂。
初めて会った時も建樹は 『売春してるの?』 と、心配して明穂に声を掛けてくれたのだ。
「ねぇ明穂くん! お金貸すから、実家に帰ったらどう?」
「…うん」
寂しさに負けて、実家へ戻ろうかと、明穂は何度も思ったが…
義父と母がヒソヒソ話していた、内緒話が胸を刺し明穂に実家へ帰るのを思いとどまらせていた。
『母さん、明穂くんは本当に同性愛者なのかな? 義弟と仲が良いだけなら問題ないが… もしも…』
『ゴメンなさい、アナタ… 私も分からないの… 怖くて明穂に聞けないし…』
<あんな風にヒソヒソと、僕のコトで親に悩んで欲しくない! 僕を含めたみんなが傷ついてしまいそうで嫌なんだ>
「ありがとう建樹クン、でも止めておくよ…」
建樹がコレ以上心配しないように、明穂は満面の笑みを浮かべて断る。
はあ~っと建樹は困り顔で、大きなため息をついた。
「あっ!」
建樹が明穂の背後を見て、声を上げる。
「んん?! 何?」
建樹は顔を寄せてヒソヒソと、明穂の背後を見ながら話す。
「明穂クンを見ている人がいる! JKと間違えてるかも知れないケド? だけど… 僕は消えた方が良いね! バイバイ!」
手を振りながら、建樹はその場を去ってゆく。
「え? バイバイ」
自分の背後を見ると、建樹の言う通り明穂を凝視しながら、長身のビジネスマンが近づいて来た。
「…お前、薫?!」
「!!?」
姉の名を呼ばれ、明穂は絶句しする。
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