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3話 悪夢の始まり3
しおりを挟むようやく仕事を終え、使用人用の屋根裏部屋に戻り、膝まである寝衣に着替えたアスカルは… ベッドにドサリッ… と腰を下ろし、小さくなったろうそくの火を吹き消した。
窓から入る月明かりの中でぼんやりとうつむき… アスカルはオメガの客に殴られ、腫れてしまった頬を、水で濡らした布で冷やしながらため息をつく。
「やっちゃったぁ… あ~あ…」
<伯爵様はお酒に酔って、機嫌良く笑っていたけれど… 明日になったら、僕を辞めさせようとするかも知れない!! そうなったら、僕を雇うと決めたお父さんにまで、迷惑をかけてしまう!!>
悔しくて… 情けなくて… 父親に申し訳なくて… 自分の部屋に戻り、1人っきりになったとたん… アスカルの淡い藤色の瞳に涙がにじんだ。
「うっ……」
<恥ずかしいよ… お父さんに僕は大丈夫だ、仕事を頑張ると… あんなに大きなことを言っていたのに、伯爵様の姿を見たら急に怖くなって、ぶるぶる震えながら緊張してしまうなんて!! どうすれば良いの?!>
ぐすぐすと鼻をならしながら、頬を冷やす濡れ布で涙をふき、これ以上涙が出ないように、まぶたの上から布を当てた。
カチッ…! とアスカルの部屋のドアが開き、古くなった床板がギシッ…となる。
誰かがアスカルの部屋に入って来て、パタンッ… とドアを閉める。
<ああ… 心配してお父さんが、僕の顔を見に来てくれたんだ?>
目の上から布を取り、アスカルが父の顔を見ると…
「お前には厳しい罰を与えなければ、いけないな… お前のせいで、今夜の楽しみが逃げ出してしまったし」
「伯… 伯爵様?!」
アスカルの屋根裏部屋に来たのは、父ペスカドではなく… 雇い主のレガロ伯爵リコルが酒臭い息をはきながら、欲望で瞳をギラつかせ、アスカルの前に立っていた。
「晩餐の時からお前はオメガのフェロモンをまき散らして、私を誘惑していただろう? お前の淫らな視線にも気づいていたぞ」
酔っているとは思えないほど、伯爵は素早い動きでアスカルをベッドに押し倒し… アスカルの細い両方の手首を、伯爵は片手でまとめてつかみ、押さえつける。
確かにアスカルはオメガだが、フェロモンと発情を抑制するための、魔法が組み込まれたブレスレット型の魔道具を、神官夫妻に渡され… 常時、手首にはめているため、父のようなベータとほとんど変わらないはずだった。
「そ、そんな違います! 僕はそんなことしません! だって、僕は…」
僕はあなたの息子です! とアスカルは言おうとするが…
腕の自由を奪われ、伯爵に薄い寝衣を首からお腹までいっきに引き裂かれ、胸をなで回された。
アスカルは… 今から自分が、実の父親に何をされようとしているのかを知る。
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