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57話 伯爵家の財源
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婚姻の儀式から3日後。
グランデ不在のレガロ伯爵邸、深夜の執務室で…
伯爵家の歴史を感じる重厚な執務机に、分厚い帳簿を何冊も積み重ね、アスカルは一冊ずつ丁寧に伯爵家の主な収入源である魔石の鉱山の採掘量と収益を見比べていた。
「ここまでとは、予想外だったなぁ… 良質な魔石が採れる鉱山を、3ヶ所も所有してるなんて… ううう~んんん―――…」
<先代伯爵リコルが、湯水のようにお金を使って遊び回っていた理由が、わかった気がする…>
アスカルは腕組みをし、帳簿をにらみながら思わず唸り声をあげた。
<貴族の令息たちが危険を冒してまで、ゲス野郎だった先代リコルの相手をしたのも、うなずけるなぁ… この莫大な資産を狙って伯爵夫人の座につくことだったのか… >
「でもまぁ、先代の妻の座なんて… 僕は絶対に嫌だけどね!」
14歳の時、初めて先代リコルと対面するまでは、アスカルも実父に淡い理想を持っていた。
“立派に成長したな” “お前を頼りにしているぞ” …そんな優しい言葉を、かけてもらえるのではないかと、アスカルは期待していたのだ。
養父ペスカドや、アスカルに教育を施してくれた神官カスカダとタルデ夫妻に、感謝の気持ちはあっても、不満は1つもない。
だが… 実の父母に、生まれてすぐ捨てられたという喪失感で、アスカルの胸の奥にポッカリと暗い穴があいていた。
アスカルは実父にその穴を、優しい言葉で埋めて欲しかったのだ。
不意にアスカルは… 肖像の間で求婚を受け入れた後、国民よりも一足先に、大賢者が予言した魔王復活の話を聞き、グランデに伯爵家を任されることとなった時のことを思い出した。
『さすが、有能なオレの妻だ! 誰よりも頼りになるなぁ… オレは一生お前に頭が上がらないだろう』
『もう、グランデ様…! 恥ずかしいから、そういう言い方は止めて下さい!』
『ははははっ…! 何といっても、オレの妻はオレの祖父と親父の仇を取ってくれた恩人だしな… いや、先代リコルがオレの親父たちを罠にかけて殺したと、もっと早く知っていれば… お前の手を汚させる前にオレが奴を殺していた!』
『グランデ様…』
『お前には苦労を掛けるな… すまない…』
「ふふふっ… 何度も言いましたがグランデ様、僕はこれを苦労だとは思いませんよ!」
<もちろん… どんな人間が相手でも、殺人は簡単に許されて良いことではないけど… 実父に関しては話が違う! 僕の方こそ、グランデ様の手を汚させないで良かったと思えるよ>
しーん… と静まり返った、深夜のレガロ伯爵邸内のどこかで… ガツッ… ガツッ… ガツッ… ガツッ… と重々しい足音が響く。
ガチャッ… と執務室の扉が開き、頭のてっぺんからつま先まで、漆黒のグランデがあらわれた。
「あ!! お帰りなさい、グランデ様!!」
満面の笑みを浮かべたアスカルは、3日ぶりに顔を見せた夫にかけ寄った。
グランデ不在のレガロ伯爵邸、深夜の執務室で…
伯爵家の歴史を感じる重厚な執務机に、分厚い帳簿を何冊も積み重ね、アスカルは一冊ずつ丁寧に伯爵家の主な収入源である魔石の鉱山の採掘量と収益を見比べていた。
「ここまでとは、予想外だったなぁ… 良質な魔石が採れる鉱山を、3ヶ所も所有してるなんて… ううう~んんん―――…」
<先代伯爵リコルが、湯水のようにお金を使って遊び回っていた理由が、わかった気がする…>
アスカルは腕組みをし、帳簿をにらみながら思わず唸り声をあげた。
<貴族の令息たちが危険を冒してまで、ゲス野郎だった先代リコルの相手をしたのも、うなずけるなぁ… この莫大な資産を狙って伯爵夫人の座につくことだったのか… >
「でもまぁ、先代の妻の座なんて… 僕は絶対に嫌だけどね!」
14歳の時、初めて先代リコルと対面するまでは、アスカルも実父に淡い理想を持っていた。
“立派に成長したな” “お前を頼りにしているぞ” …そんな優しい言葉を、かけてもらえるのではないかと、アスカルは期待していたのだ。
養父ペスカドや、アスカルに教育を施してくれた神官カスカダとタルデ夫妻に、感謝の気持ちはあっても、不満は1つもない。
だが… 実の父母に、生まれてすぐ捨てられたという喪失感で、アスカルの胸の奥にポッカリと暗い穴があいていた。
アスカルは実父にその穴を、優しい言葉で埋めて欲しかったのだ。
不意にアスカルは… 肖像の間で求婚を受け入れた後、国民よりも一足先に、大賢者が予言した魔王復活の話を聞き、グランデに伯爵家を任されることとなった時のことを思い出した。
『さすが、有能なオレの妻だ! 誰よりも頼りになるなぁ… オレは一生お前に頭が上がらないだろう』
『もう、グランデ様…! 恥ずかしいから、そういう言い方は止めて下さい!』
『ははははっ…! 何といっても、オレの妻はオレの祖父と親父の仇を取ってくれた恩人だしな… いや、先代リコルがオレの親父たちを罠にかけて殺したと、もっと早く知っていれば… お前の手を汚させる前にオレが奴を殺していた!』
『グランデ様…』
『お前には苦労を掛けるな… すまない…』
「ふふふっ… 何度も言いましたがグランデ様、僕はこれを苦労だとは思いませんよ!」
<もちろん… どんな人間が相手でも、殺人は簡単に許されて良いことではないけど… 実父に関しては話が違う! 僕の方こそ、グランデ様の手を汚させないで良かったと思えるよ>
しーん… と静まり返った、深夜のレガロ伯爵邸内のどこかで… ガツッ… ガツッ… ガツッ… ガツッ… と重々しい足音が響く。
ガチャッ… と執務室の扉が開き、頭のてっぺんからつま先まで、漆黒のグランデがあらわれた。
「あ!! お帰りなさい、グランデ様!!」
満面の笑みを浮かべたアスカルは、3日ぶりに顔を見せた夫にかけ寄った。
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