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64話 娼館の治療室3

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「そんなことは無いさ、グランデ… そう思うだろう、アユダル?」
 プロプエスタは扉近くに立つ、見習い治療師に声をかけた。

「はい、プロプエスタ様! 僕もそう思います」
 若いオメガ男子の見習い治療師アユダルが、ニコリと笑った。

「この子はね、貴重な治癒魔法が使えて、魔力もたっぷり持っているというのに… この子の価値が分からない金貸しが、親が作った借金の代わりに娼館に売り飛ばしたんだ」

 治療を受けに来た患者の男娼が、偶然プロプエスタにアユダルの話をしたことがきっかけとなり…
 どちらかというと、地味で平凡な容姿のアユダルなら、男娼よりも治療師の方が稼げると、プロプエスタが娼館の主人を説得し、見習い治療師として、指導しながら働かせているのだ。


「僕の祖母が、エスペホ家出身のオメガなので… 僕はその血が強く出たようです」
 
「あの治癒魔法で有名なエスペホ家の血筋なのか?!」
 驚いたグランデが、アユダルに聞き返すと…

「はい、僕の家名は違いますが… 僕の身体の血と魔力は、エスペホ家のものを継いでいます」

「もしかして… プロプエスタ様は、アユダルさんをグランデ様の専属治療師にしろと、おっしゃっているのですか?」

「そうだよ、奥さん… アユダルの腕は私が保証するよ! それで、どうかな?」

「ええ、良いと思います!」

「ただ、アユダルには借金の問題がある! レガロ伯爵家でそれを何とか解決してもらいたい」

「お任せ下さい!」
 自分の胸に掌を当て即答するアスカルに、プロプエスタはニカッ… と笑い、握手の手を差し出した。 

 アスカルも満面の笑みを浮かべ、差し出されたプロプエスタの手をキュッ… とにぎる。


「良い奥さんをもらったね、グランデ!」
 
「・・・・・・」
 アスカルが褒められたとたん、グランデは渋い顔を引っ込め、ニヤニヤと嬉しそうに笑った。


「グランデ、これであんたも遠慮なく、ケガが出来るね!」

「いや! プロプエスタ、ケガはしないぞ?!」

「そうは言っても、あんたはお人好しだから… どうせ、このケガもひよっこ騎士をかばったせいだろ?」

「んん~… 今回の討伐は… とにかく魔獣の数が多くて、オレも避けきれなかった」
 
 負傷した新人騎士を、グランデが背中で庇いながらの戦いとなった。

 たてとなったグランデは、負傷者を守るため魔獣の攻撃を避けることが出来ず何度も受け続け、騎士服にかけられた防御の魔法が壊れ、グランデ自身も負傷したのだ。

 プロプエスタの治療が終わると… さっそくアスカルは見習い治療師アユダルを手に入れるため、行動に移すことにした。


 渋るグランデを急かし、アユダルの借金を清算しようと、アスカルは男娼専門の娼館に向かう。





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