黒騎士はオメガの執事を溺愛する

金剛@キット

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101話 退避

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 破損した第3結界の結界石の、交換作業を終えたコスタ隊が、結界を張り直し、王太子アニマシオンと魔獣と戦闘中の騎士隊長たちに、結界壁の外側へ移動するよう、伝文用の幻鳥げんちょうをそれぞれに飛ばした。

 第3結界が無事に張り直されても魔獣の猛攻は続き、アスカルとグランデは救護所の周囲に小結界を張るのに、しばらく時間を要した。


「終わりました、グランデ様!」
 最期の結界石を正しい位置に設置して、アスカルは結界を発動するために魔力を、身体から振り絞って結界石に流した。

「よし! 全員結界内に退避―――っ!!」

「助かった…!」
 救護所を守り戦っていた騎士たちは、王太子も含めて全員が倒れ込むように小結界内に避難した。



 だが、結界を張ったアスカルが結界の外側で力きて、倒れているのを見つけ、グランデはあわてて治療師アユダルの元へ運んだが… 

「おい、アスカル?! アスカル?! しっかりしろ!」

「これは、いけませんね! 奥方様は魔力切れを起こしています… 身体を維持するのに必要な、最低限の魔力さえ、奥方様には足りてません!」 

 アスカルは結界を張り終わると、魔力切れを起こして意識を失ったため、 アユダルの治癒魔法では回復の効果も得られず… 

「どうすれば良い? アユダル?!」

「申し訳ありません、レガロ伯爵様… このまま静かに、奥方様の魔力が回復するのを我々は待つしかありません」

「クソッ! オレがこんな場所にまで、連れて来たばかりに!!」
 来るなとグランデが止めても… 絶対に自分も行くと、押し切ったのはアスカルの方である。

「だが、奥方殿がここにいなければ、我々は魔獣の餌食えじきとなり、今頃ケガ人たちとともに、全滅していただろう…」
 普段は飄々ひょうひょうとしている王太子だが、慣れない魔獣との戦いを経験した後だけに、厳しい表情をしていた。

「奥方様は元々、オメガにしては魔力量が多い方なので… それはつまり、魔力を作り出すのに適したお身体ということですから、普通なら即死していてもおかしくない状況なのに、それでも生きておられます… ですからレガロ伯爵様、奥方様の生命力を信じて待ちましょう?」

 魔力が強い血筋のグランデとアスカルの、相性が良い理由もここにあった。

 グランデたちはすべも無く、そのままアスカルは数日間、生死の境を彷徨さまようこととなる。




 その後の調査で、大地の裂け目から発生した魔獣の約半数以上は、結界内で戦っていた騎士たちの魔力に引かれ、第3結界内に閉じ込めることが出来たが… 閉じ込められず結界外に逃げ出した魔獣は、一番近くの獲物である、本陣にいた者たちの魔力を狙い、救護所に集まっていた。

 そこで……

 治療師たちが治癒魔法でケガの治療を行ったが、療養が必要だと診断された騎士たちとアスカルは、転移魔法で黒騎士団の騎士団本部へ移動させ… その他の騎士たちは、王太子とグランデたちの判断で、魔獣の拡散かくさんを防ぐため、魔獣の群れを引き付けるエサとなり、小結界内に留まり続けた。





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