辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

文字の大きさ
40 / 178

38話 神官長シュピーゲル2

しおりを挟む


 「お2人とも、本当にそろそろ城主館へ入られた方がよろしいですよ? あちらで騎士の皆様が、気をもんで待っておられるますから」
 シュピーゲルに言われてリヒトは視線を動かして見ると、護衛騎士たちが冷気の中にずっと白い息を吐きながら、シルトを待っていた。


「こ… これは、申し訳ありません!! お待たせしてしまって!!」
 謝るリヒトの腰を引き寄せ、歩きはじめるシルトに、シュピーゲルも付いて歩く。

「いいや、リヒト… 良いものを見せてもらったぞ、なぁ神官長?」
 のんびりと歩きながら、生真面目なリヒトを気遣い、シルトは大らかにシュピーゲルへ話を振る。

「ええ、本当に! 祈りの力が光り輝く素晴らしい光景でした… リヒト様、できれば毎日、祈りを捧げに来ては頂けないでしょうか? もちろん神殿内の祭壇の前でですよ?」
 神官長シュピーゲルは瞳を輝かせ、喜んでシルトの話を、引き継いだ。
 
「で… でも、私には奴隷紋があります、私のような汚れた者が神殿に入っては…」
 奴隷紋を付けられた、項を抑え暗い顔でリヒトが、シュピーゲルにたずねると…

「それは人のことわりで、女神様のことわりではありませんよ?」

「人の理…?」

「女神様が拒絶するなら、アナタの祈りは受け入れられなかったはずですから」
 力強くリヒトの肩を掴む神官長。

「本当に良いのでしょうか?」

「奴隷紋を理由にして神殿で祈りを捧げる者を拒めば、私自身が女神様の慈悲を否定する存在になりますからね、あり得ません!!」
 不安そうなリヒトに、大きく頷く神官長シュピーゲル。

 実際に奴隷の地位にある者を、人が拒んだとしても、神官や神殿が拒んだことは無い。


「シュピーゲル様!!」
 ポロリと一粒、涙をこぼし… リヒトは慌てて顔を拭い、泣き笑いを浮かべた。

 シルトをうかがうように、チラリとリヒトが見あげると…

「ああ、それは良い考えだな! "花の令息"がこの神殿で、毎日祈りを捧げていると聞けば女神も喜ぶし、領民たちも安心するだろう、なぁリヒトそうしてくれるか?」
 どことなくシルトは、ブスッ… として、不機嫌そうにリヒトの望みを叶えた。

「ありがとうございます、シルト様!!」
 まぶしいほどの満面の笑みを浮かべるリヒトに、シルトはかがんで唇を奪った。

「ううむぅっ…?!」
 唇を奪われただけでは無く、リヒトは抵抗を封じられ…

 シルトにギュウギュウと抱き締められた。

<わああああぁ―――――っシルト様?! シュピーゲル様の前で何てことを!! それも神殿の前で!!>


「おやおや…」
 神官長シュピーゲルは困った方ですね… と言いたげに、呆れて首を横に振る。
 
 神官長としての能力を備えるシュピーゲルも、当然ながらアルファで…
 リヒトが可愛らしくシュピーゲルを慕う姿を見て、シルトは嫉妬を燃やし、独占欲を刺激されたのだ。

 力いっぱい抵抗しても、リヒトに吸い付いた唇も、細い身体に巻き付いたシルトのガッシリ太くて長い腕を、振り解けなかった。

<恥ずかしい!! 恥ずかしいよぉぉぉ、シルト様!!>
 リヒトは手を伸ばし、シルトの広い背中をバンッ… バンッ… 叩くが、温かい舌で口内を撫でられると…

 発情中に教え込まれた快楽に火が付き、リヒトは抵抗を忘れ、シルトの愛撫に舌を絡めて応えた。

 結局、散々チュクッ… チュッ… チュッ… と、シルトが満足するまで、唇を吸われ続け…
 へなへなとリヒトの腰が抜けそうになった頃、ようやく解放された。 


「シルト様、程々にしませんと、真面目なリヒト様に嫌われてしまいますよ?」
 やれやれと、嫉妬深い辺境伯に忠告する神官長。

「ふふふふっ…」
 シルトは上機嫌でリヒトを抱き上げると、神官長シュピーゲルを引き連れて、城主館へ向かった。








しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...